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妊娠性疱疹
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

妊娠性疱疹の概要

妊娠性疱疹は、妊娠中の女性に発症する皮膚の病気です。主に妊娠中期から妊娠後期に発症することが多く、おへそ周りなどに強いかゆみをともなう赤い発疹や水疱(すいほう:水ぶくれ)が現れます。

赤ちゃんの健康に直接影響を与えることは少ないとされているものの、妊娠している女性にとって不快な症状として現れます。

発症頻度は数万人の妊婦に対して1例程度とされており、非常にまれな疾患です。

妊娠性疱疹の症状は主に赤い発疹で、症状の程度には個人差があります。軽い発疹で済む場合もあれば、広範囲に水疱が広がる場合もあります。症状は一過性で、出産後は自然に症状が改善することもある点が特徴です。

治療は主にステロイドによる薬物療法になります。

妊娠性疱疹は早期発見と適切な治療により症状をコントロールすることが可能です。かゆみが激しい場合は睡眠不足など日常生活に支障をきたす可能性があるため、我慢せずに産婦人科や皮膚科を受診しましょう。

妊娠性疱疹の原因

妊娠性疱疹は、妊娠中の体の免疫系が影響して発症する自己免疫疾患です。

胎盤で作られる特定の物質に対して、母体の免疫系が過剰に反応することで皮膚に炎症が起きると考えられていますが、具体的な発生のメカニズムについては明確に解明されていません。

妊娠中の生活習慣が直接的な原因になるわけではなく、お腹の赤ちゃんへ影響を及ぼすような危険性もないとされています。そのため、仮に発症した場合も自身を責めたり過剰に心配したりしないようにしましょう。

妊娠性疱疹の前兆や初期症状について

妊娠性疱疹の初期症状は、強いかゆみをともなう発疹です。おへその周りを中心とした腹部に小さな赤い発疹が現れ、次第に手足や背中、おしりなどに広がります。

かゆみが強く現れやすい傾向があり、症状によっては睡眠を妨げるほど激しい場合があります。

発疹は蚊に刺されたような小さな赤い膨らみとして現れ始め、症状が進行すると水疱を形成することがあります。

通常は出産後、数週間から数カ月以内に自然に消失しますが、月経時や経口避妊薬を内服した際に再燃することがあります。

妊娠中期や妊娠後期に突然強いかゆみを感じ始めた場合は、妊娠性疱疹を発症している可能性があるため、できるだけ早く産婦人科を受診しましょう。

妊娠性疱疹の検査・診断

妊娠性疱疹の診断では、発疹の状態や分布、かゆみの程度などを視診で確認します。とくにおへその周りを中心とした発疹の広がり方や発疹の形状は、重要な診断材料となります。

他の皮膚疾患との区別をするために、皮膚の一部を採取して蛍光顕微鏡で調べる検査をおこなうこともあります。

妊娠している女性の身体的な負担を考慮し、必要最小限の検査で診断することが一般的です。

また、血液検査で赤血球や白血球、ヘモグロビンなどの一般的な項目を調べるとともに、ASTやALTなどの肝機能の状態も測定します。

これらの検査は、症状の重症度を判断する指標としても活用されます。

診断後は定期的な血液検査をおこない、症状の経過を観察します。これにより、治療の効果を確認するとともに、母体と赤ちゃんの状態を慎重に観察できます。

妊娠性疱疹の治療

妊娠性疱疹の治療は、かゆみを抑えるために薬物を使用したり、肌の清潔を保つためにスキンケアをおこなったりします。

薬物療法では、妊娠中でも安全に使用できるステロイドの外用薬を中心に使用することが多いです。症状が重症の場合は、ステロイドの内服薬を服用することもあります。

スキンケアでは皮膚を清潔に保ち、保湿を心がけることが重要です。入浴時は刺激の少ない低刺激性の石鹸を使用し、熱すぎるお湯は避けましょう。

妊娠性疱疹は水疱をともなう発疹が出るため、爪で皮膚をかきむしらないよう注意し、必要に応じて綿の手袋を着用することもおすすめします。

治療中は定期的に検査して症状の変化や薬の効果を確認します。多くの場合では出産後、数週間から数カ月で自然に症状が改善することが多いですが、完治するまでの期間は個人差があります。

妊娠性疱疹になりやすい人・予防の方法

妊娠性疱疹は妊娠中期から妊娠後期の女性が発症しやすいといわれています。

過去に妊娠性疱疹を経験したことがある場合、症状が自然消失した後も、月経や経口避妊薬の内服により再発する可能性があることが知られています。

妊娠性疱疹は非常にまれな自己免疫疾患で、現在のところ完全な予防法は確率されていないため、早期発見を意識することが重要です。

妊娠中の女性は妊娠中期から妊娠後期に入ったら、皮膚の状態にも注意を払い、強いかゆみや発疹などの症状が現れていないか確かめるように心がけましょう。

また、刺激の少ない石鹸の使用や適切な保湿を心がけることで、日頃から皮膚のバリア機能を良好に保つことができます。

とくに妊娠中は肌が敏感になりやすいため、優しくケアすることを心がけましょう。

おへその周りの強いかゆみや発疹、水疱など気になる症状があればできるだけ早く医師に相談し、早めに治療に移行できるようにすることも大切です。

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