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時計皿爪
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

時計皿爪の概要

時計皿爪(とけいさらつめ)は指の爪甲が全体的に大きくなり、時計ガラスのように丸く隆起した形状の爪をいいます。

別名「ばち状指」や「ヒポクラテス爪」とも呼ばれており、慢性的な肺疾患や心疾患、消化器系の病気などさまざまな疾患に関連して現れることがあります。

ただしすべての時計皿爪が重大な病気を示すわけではなく、肥厚性皮膚骨膜症の一症状として出現することもあります。

爪の変化は長い時間をかけてゆっくりと進行することが多いですが、病気の種類によっては急速に進行する場合もあります。また、複数の指に同時に現れることが多いです。

単なる爪の変形として見過ごすのではなく健康上の重要なサインとして捉え、適切に対応することが病気の早期発見や早期治療につながります。

時計皿爪の原因

時計皿爪は慢性的な血流のうっ滞による局所の酸素不足が原因とされていますが、明確なメカニズムは解明されていません。

肺気腫や肺がん、気管支拡張症などの呼吸器系疾患や、先天性心疾患などの循環器系疾患をはじめ、甲状腺機能亢進症や炎症性腸疾患などさまざまな病気が関連していると考えられています。

他にも、難病の1つである肥厚性皮膚骨膜症の症状として発生するケースもあります。

このように、時計皿爪はある特定の病気にのみ発症するわけではなく、さまざまな病気を表すサインとして出現している可能性があります。

時計皿爪が見られた場合はできるだけ早く医療機関を受診し、原因を特定して適切な治療につなげることが重要です。

時計皿爪の前兆や初期症状について

時計皿爪の症状は爪の形が全体的に大きくなって時計ガラス状に丸く隆起することです。爪のみでなく指趾の末節までもが太鼓ばちのように肥大することもあります。

正常な爪は指を伸ばした際に爪の付け根部分が少しくぼみますが、時計皿爪の場合、爪のつけ根から先端に向かう角度が大きい特徴があります。

通常このような爪の変化は、急激に起きるのではなく緩やかに時間をかけて進行し、両手の複数の指に対して同時に現れることが多いです。

時計皿爪は肺疾患や心疾患など、何らかの基礎疾患がある印として出現している場合があり、爪の変形としてのみ現れるよりかは、疾患そのものの症状も同時に出ていることがあります。

たとえば、息切れや慢性的な咳、疲れやすさや倦怠感などの症状が当てはまります。

単なる爪の変形として見過ごすことなく、他の身体的な症状の有無にも注意して、必要に応じて医療機関を受診しましょう。

時計皿爪の検査・診断

時計皿爪は視診や問診によって爪の状態を確認します。視診では爪のつけ根から指先にかけての角度を調べ、問診では症状が出現した時期や既往歴、家族歴などについて確認します。時計皿爪は難病の1つである肥厚性皮膚骨膜症の症状として出現している可能性があるため、これらの確認が重要です。

単に爪の形状が変化しているだけと思われることもしばしばありますが、慢性的な肺疾患や心疾患が潜んでいるケースも少なくありません。

原因疾患を特定するために、血液検査や胸部X線検査、心電図検査などを実施することもあります。血液検査では貧血や炎症の有無、肝機能や腎機能などの状態が分かる項目を検査します。

胸部X線検査では肺や心臓の状態を確認します。時計皿爪は肺気腫や肺がん、先天性心疾患のサインを示しているケースもあり、これらの病気の所見の有無を確認します。

必要に応じて、肺機能検査や心臓超音波検査などを行う場合もあります。時計皿爪はさまざまな病気が絡んでいることがあるため、複数の検査結果を総合的に判断し適切な治療につなげることが求められます。

時計皿爪の治療

時計皿爪の治療は原因疾患に対するアプローチが基本です。治療効果には個人差があり、時間がかかる場合や大きな改善がみられない場合もありますが、粘り強く治療に取り組むことが必要です。

肺疾患が原因の場合は呼吸器系に対する治療を、心疾患が原因の場合は循環器系に対する治療を実施します。

治療中は原因疾患の治療効果を評価するとともに、爪の状態を定期的に観察することが大切です。

なお、遺伝性疾患が関連している場合、現時点では特別な治療法は確立されていません。この場合は、爪の保護や適切なケアが中心となります。

爪を清潔に保ち、過度な圧力がかからないように注意することが大切です。爪の変形が気になる場合は、爪の専門的なケアができる人に相談することで、見た目を改善することもできます。

時計皿爪になりやすい人・予防の方法

時計皿爪になりやすい人は肺気腫や肺がん、気管支拡張症などの呼吸器疾患がある人や先天性心疾患がある人などです。肥厚性皮膚骨膜症を患っている場合も時計皿爪を呈しやすいです。

他にも甲状腺機能亢進症や炎症性腸疾患など、さまざまな疾患がある人も時計皿爪になりやすいといわれています。

予防のためには原因疾患の適切な治療が重要です。原因疾患の早期発見や早期治療につなげるため、定期的な健康診断は欠かさず受けるようにしましょう。

日常生活面では爪の清潔を保つためのケアが大切です。時計皿爪は爪の形状が大きく変化し、通常の爪と比べて切りにくいこともあるため、清潔面に気を配るよう心がけましょう。

時計皿爪は単に爪が変形しているだけでなく、重大な疾患のサインの場合があります。

爪の変形をはじめ、呼吸器系や循環器系に関連する症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

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