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紅色陰癬
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

紅色陰癬の概要

紅色陰癬(こうしょくいんせん)は「コリネバクテリウム・ミヌティシマム」と呼ばれる細菌が感染して起こる皮膚疾患です。「エリトラスマ」とも呼ばれます。

コリネバクテリウム・ミヌティシマムは温帯・熱帯地域に広く生息する細菌です。国内で感染するケースは比較的まれですが、肥満や多汗症、糖尿病などによって感染し、紅色陰癬を発症することがあります。

紅色陰癬では、足の指の間や足の付け根(鼠径部)、脇の下など皮膚が擦れ合う部分に赤みを帯びた斑ができます。患部は角質がポロポロと剥がれ、まれに痒みや灼熱感などを伴うこともあります。

紅色陰癬の症状は「白癬」など他の疾患と似ているケースもあります。そのため、適切な治療のために、ウッド灯検査によって他の疾患と鑑別することが重要になります。

治療では、抗菌薬の外用薬や内服薬を用いた薬物療法がおこなわれます。予防のためには、高温多湿の環境を避け、皮膚を清潔に保つことが重要です。

紅色陰癬の原因

紅色陰癬は、コリネバクテリウム・ミヌティシマムという細菌によって引き起こされます。

コリネバクテリウム・ミヌティシマムは「グラム陽性桿菌」という種類で、温帯地域や熱帯地域に多く生息しています。国内では感染する事例は少ないものの、高温多湿の地域に居住する人や糖尿病を発症している人、肥満の人、多汗症の人などに発症するケースがあります。ほとんどが健康な成人に発症し、女性と比較して男性に多く見られる傾向にあります。

コリネバクテリウム・ミヌティシマムは温度や湿度の高い環境下で増殖しやすいため、、紅色陰癬は足の指の間や鼠径部、乳房の下、脇の下、会陰部などに好発します。

紅色陰癬の前兆や初期症状について

紅色陰癬では、患部にピンク色〜オレンジ色の皮疹ができ、角質がポロポロと剥がれる「落屑(らくせつ)」という症状を伴います。多くの場合自覚症状は伴わないものの、まれに痒みや灼熱感などを認めることがあります。

これらの症状は、足の中指〜小指間や、鼠径部、乳房の下、脇の下、会陰部などの湿度の高い部位にできやすい傾向にあります。

なお、紅色陰癬の病型は症状が現れる部位によって分けられます。会陰部や脇の下、鼠径部などに生じるものは「古典型」、足の指の間に生じるものは「趾間型」、全身に生じる場合は「汎発型」に分けられます。

また、紅色陰癬の症状以外に白癬やカンジダ症を合併するケースもあります。

白癬を合併すると患部が赤くジュクジュクになって、強い痒みを伴ったり水ぶくれができたりすることがあります。また、カンジダ症を合併する場合には、患部に腫れや発疹などを伴うこともあります。

白癬やカンジダ症を合併している場合には、紅色陰癬の症状と区別がつきにくく診断が遅れるケースもあるため、注意が必要です。

紅色陰癬の検査・診断

紅色陰癬の診断では、患部の状態を観察して、コリネバクテリウム・ミヌティシマムの有無を確かめるための検査がおこなわれます。

患部の状態の観察には「ウッド灯検査」がおこなわれます。ウッド灯は「ブラックライト」とも呼ばれ、室内を暗くして光を当てると患部の状態が鮮明に観察できます。

コリネバクテリウム・ミヌティシマムに感染した皮膚は、ウッド灯を当てると細菌が生成した物質が紅く光るため、容易に確認できます。

また、患部にセロテープを貼付して剥がし、採取した皮膚片(鱗屑)に色を付けて顕微鏡で観察する方法でも、コリネバクテリウム・ミヌティシマムを検出できます。

この他、足の指の間に発症している場合には白癬を合併しやすいことから「KOH直接鏡検」がおこなわれることがあります。KOH直接鏡検は白癬の診断に有用な検査で、患部から採取した鱗屑をスライドグラスに乗せ、KOH液と呼ばれる薬液を滴下して白癬菌を検出する方法です。

紅色陰癬の治療

紅色陰癬の治療では、コリネバクテリウム・ミヌティシマムに有効な抗菌薬を用いた薬物療法がおこなわれます。

抗菌薬は一般的にイミダゾール系などの種類の外用薬が用いられますが、患部が広範囲に及んでいる場合にはエリスロマイシンなどの内服薬を用いることもあります。

また、白癬などの真菌症を合併している場合には、ミコナゾールなどの抗真菌薬を併用することもあります。

治療の一環として薬物療法のほかに、患部を洗浄して清潔に保つことも重要です。再発のリスクが高いため、症状が改善した後も適切なケアを継続することが推奨されます。

紅色陰癬になりやすい人・予防の方法

日本で紅色陰癬を発症するのはまれですが、高温多湿の環境で生活している人や、多汗症の人、肥満の人、糖尿病の人は発症する可能性があります。

紅色陰癬を予防するには、高温多湿の環境を避け、皮膚を清潔に保つことが重要です。

毎日入浴やシャワーで身体を清潔に保つほか、足や陰部などが蒸れないよう通気性の良い素材の下着や靴下を着用するようにしましょう。また、おむつを使用している場合は、こまめな交換も大切です。

このほか、多汗症や肥満、糖尿病の人は、医療機関で適切な治療を受けましょう。

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