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皮膚アミロイドーシス
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

皮膚アミロイドーシスの概要

アミロイドーシスは、アミロイドと呼ばれる異常なタンパク質が体内に蓄積する病気です。このうち、皮膚に限局してアミロイドが蓄積する状態を皮膚アミロイドーシスと呼びます。

皮膚アミロイドーシスには大きく分けて3つのタイプがあります。

「斑状アミロイドーシス」は主に背中の上半分に褐色の斑点があらわれ、強いかゆみをともないます。「結節性アミロイドーシス」は皮膚に赤みを帯びた結節ができるタイプで、顔面や手足によく見られます。「苔癬型(たいせんがた)アミロイドーシス」は背中や脚などの摩擦が起きやすい部分に網目状の色素沈着があらわれるのが特徴で、かゆみを伴います。

症状は主に背中、腕、脚などにあらわれ、その程度には個人差があります。かゆみの強さも人によって異なり、日光が当たる部分で症状が悪化しやすい傾向にあります。

皮膚アミロイドーシスの原因

皮膚アミロイドーシスには、大きく分けて2つの発症メカニズムがあります。

1つは、皮膚の表面にある表皮細胞が関係するものです。
表皮細胞に含まれるケラチンというタンパク質が代謝するときに、アミロイドが異常に発生し皮膚に蓄積することがあります。これが、苔癬型アミロイドーシスや斑状アミロイドーシスなどの主な原因になっています。

2つ目は、全身性アミロイドーシスの症状として皮膚にアミロイドが蓄積するケースです。
多発性骨髄腫、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患をきっかけとして全身性アミロイドーシスを発症すると、皮膚を含む全身のさまざまな臓器にアミロイドが蓄積することがあります。

他にも、遺伝的な要因や強い日光への暴露、皮膚の乾燥なども症状に影響を与える可能性があります。

皮膚アミロイドーシスの前兆や初期症状について

皮膚アミロイドーシスの症状は、タイプによって特徴が異なります。

斑状アミロイドーシスでは、主に背中に茶色っぽい斑点ができ、強いかゆみをともないます。皮膚の表面がざらざらとした感じになることもあります。

結節性アミロイドーシスでは、顔や手足に赤みを帯びた硬いしこりができます。このタイプではかゆみはあまりありません。

苔癬型アミロイドーシスでは、主に背中や脚の摩擦が生じやすい部分に網目状の色素沈着が現れ、強いかゆみが生じます。特に夜間にかゆみが強くなることがあります。

また、いずれもストレスや環境の変化により、症状が悪化することがあります。

皮膚アミロイドーシスの検査・診断

皮膚アミロイドーシスの診断は、症状の観察と皮膚の精査によって行われます。

医師は、症状の様子やあらわれた時期、かゆみの程度などを詳しく確認します。また、生活習慣や家族歴なども参考にします。

確定診断のためには、症状のある部分の皮膚を一部採取して顕微鏡で調べる検査(皮膚生検)が必要です。皮膚生検では、殊な染色を行い、アミロイドが皮膚に溜まっているか確認します。

また、皮膚症状が全身性アミロイドーシスの一部としてあらわれている可能性もあるため、必要に応じて、血液検査や尿検査、心臓や腎臓などの検査も行う場合があります。

皮膚アミロイドーシスの治療

皮膚アミロイドーシスの治療は、かゆみや色素沈着などの症状を和らげることが中心となります。完全な治癒は難しいものの、適切な治療とケアにより症状のコントロールが可能です。

薬物療法

皮膚アミロイドーシスでは、症状を和らげる対症療法が中心になります。主な症状であるかゆみに対して、ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬が使用されます。ステロイド外用薬は炎症を抑える効果があり、かゆみを軽減することができます。かゆみが強い場合は、内服の抗アレルギー薬が処方されることもあります。

レーザー治療

色素沈着が目立つ場合は、レーザー治療などが検討されることもあります。ただし、効果には個人差があり、症状が完全に消失するわけではありません。また、治療後に再び色素沈着が現れることもあります。

スキンケア

症状を悪化させないために、皮膚の適切なケアが重要です。保湿剤を使用して皮膚の乾燥を防ぎ、過度な掻き傷を避けるようにします。また、刺激の強い石鹸の使用は避け、入浴後は十分な保湿を心がけます。熱すぎるお湯での入浴も刺激となるため、控えめにしましょう。

日光による症状の悪化を防ぐため、日焼け止めの使用や、過度な日光暴露を避けることも大切です。また、ストレスがかゆみを悪化させることもあるため、ストレス管理も心がけましょう。

皮膚アミロイドーシスになりやすい人・予防の方法

皮膚アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスの発症者のほかに、関節リウマチなどの慢性炎症性疾患がある人や、多発性骨髄腫などの血液疾患がある人に発症するリスクがあります。表皮細胞の代謝異常が起こりやすい状態(強い日光への継続的な暴露など)も発症に関係すると考えられています。

予防法としては、基礎疾患のある方は定期的な健康診断を受けることが重要です。また、過度な日光暴露を避け、適度な保湿を心がけるなど、皮膚の健康管理に気を配ることも大切です。症状が気になる場合は早めに医師に相談することをおすすめします。

また、すでに症状が出ている場合は、定期的な通院と医師の指示に従った治療を継続することが大切です。症状が悪化しないよう、日々の生活習慣にも気を配るとよいでしょう。

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