目次 -INDEX-

光沢苔癬
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

プロフィールをもっと見る
防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

光沢苔癬の概要

光沢苔癬(こうたくたいせん)は、光沢のある小さな皮疹が複数生じる疾患です。小児などの比較的若年層の人に多く見られることが知られています。

皮疹は正常な皮膚と同じような色をしており、平らで均一な大きさ(1〜2mm程度)のものがポツポツとみられるのがこの疾患の特徴です。
皮疹は全身に起こり得ますが、手足の内側や体幹、外陰部などにできやすい傾向があり、手のひらや顔などにできることはまれとされています。皮疹はさまざまな箇所に散らばったり、一箇所に集まったりして発生します。

通常、皮疹以外に自覚症状を伴うことはありません。まれに痒みを伴うケースがあります。また、患部以外の正常な皮膚を掻くなど何らかの刺激が加わることでその部位にも皮疹ができることがあります。

光沢苔癬のはっきりとした原因は分かっておらず、何らかの要因によって免疫反応が生じた結果発症するという見解や、他の疾患と関連して発症するという意見があります。
また、月経異常を伴うことがあることから、ホルモンバランスの変化に伴って発症するという意見もあります。
いずれにしても原因の解明には至っておらず、有効な治療法も確立されていません。

光沢苔癬は、特別な治療をおこなわなくても自然に軽快します。しかし、治癒するまでに数ヶ月から数年単位の時間を要する傾向にあります。

未解明な点の多い疾患ではあるものの、重篤な症例は報告されておらず、合併症などのリスクもほとんどない疾患と考えられています。

痒みなどの自覚症状を認める場合には、外用薬や内服薬を用いた薬物療法のほか、光線療法がおこなわれることがあります。

出典:北海道大学 大学院医学研究院 皮膚科学教室 あたらしい皮膚科学第三版「6.光沢苔癬」

光沢苔癬の原因

光沢苔癬のはっきりとした原因は分かっていません。
国内外の複数の研究結果はあるものの、不明な点の多い疾患です。

海外でおこなわれた研究によれば、光沢苔癬は「扁平苔癬(へんぺいたいせん)」を合併することが多く、両者は関連する疾患ではないかと推察する意見があります。

扁平苔癬も明確な原因は解明されていないものの、元々発症しやすい体質の人に特定の薬剤やウイルスなどに対する免疫反応が生じた結果、発症すると考えられています。

しかしその一方で、光沢苔癬と扁平苔癬の患者さんの患部から採取した患部の細胞を観察した結果、どちらの疾患にも関連性はなく、別の疾患であると述べる研究者もいます。

別の研究では、ホルモンバランスの変化などによって発症する可能性も指摘されています。

いずれにしても、現時点では光沢苔癬の発症メカニズムを含め、解明されていない点が多くある疾患です。

光沢苔癬の前兆や初期症状について

光沢苔癬では、光沢のある平らな皮疹が生じます。皮疹に赤みなどはなく、正常な皮膚と同じような色か、黄みがかった色をしています。大きさはいずれも直径1〜2mm程度で、均一な大きさであることが特徴です。一般的に痒みなどの自覚症状を伴うことは少ない傾向にあります。

皮疹は全身のどこにでも生じ得るものの、特に手足の内側や下腹部に多いとされ、男性の陰茎などにも生じる例が知られています。一方、手のひらや足の裏、顔面などに出ることはまれだと考えられています。

また、皮疹は複数できて全身に広がることもあれば、いくつかの皮疹が集まってできたりするものもあります。

患部以外の正常な皮膚に何らかの刺激が加わると、その部位にも皮疹が発生する「ケブネル現象」を認めるケースもあります。

光沢苔癬の検査・診断

光沢苔癬では、問診や視診のほか「病理組織学的検査」がおこなわれます。

問診や視診から光沢苔癬が疑われる場合には、確定診断のために病理組織学的検査をおこない、患部の皮膚を一部採取し、細胞の状態を顕微鏡で詳しく調べます。

このほか、免疫の異常やホルモンバランスなどを調べるため、血液検査がおこなわれることもあります。

光沢苔癬の治療

光沢苔癬では、多くの場合特別な治療はおこなわれません。一般的に、患者の生命や生活の質に重篤な影響は与えず、症状は数ヶ月から数年で自然に軽快することを理由に、診断後も治療はせずに経過観察がとられることが多いです。光沢苔癬の原因はわかっておらず、確立された治療法が存在しないという背景もあります。

しかし、痒みなどの自覚症状を伴う場合には、副腎皮質ステロイド薬の外用薬や抗ヒスタミン薬の内服薬が用いられたり、光線療法が試みられたりすることがあります。

光線療法では、紫外線を用いた「PUVA(プバ療法)」がおこなわれることがあります。PUVA療法は、紫外線を照射すると作用する薬剤を使用した後に紫外線の「UVA波」を照射する治療法です。

光沢苔癬になりやすい人・予防の方法

光沢苔癬のはっきりとした原因は解明されていないため、なりやすい人は分かっていません。

年代では小児から若年期にかけて発症しやすいと考えられていて、男女比ではやや男性に多く見られるとの報告があります。

光沢苔癬を予防する方法もわかっていませんが、光沢苔癬自体は、発症しても自然治癒することが多く、重篤な症状を引き起こすリスクは低いと言えます。
したがって、もし発症してしまっても慌てずに対処することが重要です。ただし、自己診断をおこなうと、他の重篤な皮膚疾患などと鑑別できない可能性があります。気になる症状がある場合は医療機関を受診するとよいでしょう。

関連する病気

この記事の監修医師