

監修医師:
前田 広太郎(医師)
色素失調症の概要
色素失調症は、皮膚や歯、眼、中枢神経に異常をきたす、まれな遺伝性疾患です。X染色体にあるIKBKG遺伝子の異常が原因で、X連鎖性優性遺伝の形式をとります。男性胎児では致死的となることが多く、患者の多くは女性です。出生直後から水疱や色素沈着などの皮膚症状が現れ、成長とともにイボ状発疹や線状の色素斑などに変化します。症状には個人差があり、歯の形成異常、視力障害、発達の遅れなどを伴うこともあります。診断には臨床所見に加えてIKBKG遺伝子の異常を調べる遺伝子検査が中心で、必要に応じて皮膚生検や病理組織検査も行われます。治療は症状に応じた対症療法が主体で、皮膚、眼科、歯科、小児神経科などの専門的なフォローが重要です。重篤な合併症がなければ予後は比較的良好とされていますが、定期的な受診と多職種の連携による支援が望まれます。
色素失調症の原因
色素失調症は、皮膚、歯、眼、神経系などに異常をきたす疾患です。原因はX染色体のIKBKG遺伝子の異常で、X染色体優性遺伝の遺伝形質をとります。
男性胎児がIKBKG遺伝子に異常を持つと多くは胎内で死亡するとされており、患者のほとんどが女性です。男性の性染色体はXY型であり、一つしかないX染色体の遺伝子情報に異常があると、カバーできないためです。女性はXX型の性染色体なので、片方のX染色体に異常があっても、もう片方の遺伝子情報である程度カバーすることができます。
ただし、クラインフェルター症候群 (XXY型) など特殊な性染色体構成を有する男性や、異常のあるX染色体を持つ細胞と正常の細胞が混在する「体細胞モザイク」というタイプでは男性の症例が報告されています (参考文献 1) 。
色素失調症の前兆や初期症状について
本疾患では、皮膚に出現する特徴的な変化が早期診断の手がかりになります。症状は出生直後から出現し、次のような4つの時期に分かれます (参考文献 1) 。
- 水疱期(出生直後〜生後4カ月)
- 疣状 (ゆうじょう) 発疹期(生後数カ月)
- 渦巻状色素沈着期(生後6カ月〜成人期)
- 線状色素消退期(思春期以降)
四肢や体幹に水疱や膿疱が出現します。四肢では線を描くような、体幹では円を描くような分布で出ることが特徴的ですが、必ずしもこのパターンで出てくるわけではありません。
イボのようなものが全身に出現します。水疱ができた部位以外にも現れます。
こちらも四肢では線を描くような、体幹では円を描くような分布で出ることが多いです。
茶褐色の色素沈着が四肢は線状、体幹では円周状に広がります。鼠径部と腋窩で最も高頻度にみられます。
色素沈着が薄くなるほか、四肢や頭皮の脱毛が目立つようになります。
これらの皮膚症状以外にも、歯の形成異常、視力障害、けいれんや発達遅滞などがみられる場合があり、症状の程度には個人差があります。
発症直後から症状が出る症例や、生後数週間経ってから発症する症例まで様々ですが、この時期であれば小児科の定期診察をしてくれる「かかりつけの小児科」があるかと思います。当てはまる症状があれば、そちらを受診してください。
色素失調症の検査・診断
診断には臨床症状の整理が最も重要です。先述のような代表的な症状の存在だけでも色素失調症を強く疑うことができます。臨床症状だけでは断定しきれない場合には遺伝子検査を行います (参考文献 1) 。
遺伝子検査でも病的な変異が確認されない例では皮膚生検を行い、病理組織検査を行います (参考文献 1) 。
色素失調症の治療
色素失調症に対する根本的な治療法は存在しません。そのため、症状に応じた対症療法と長期的な支援が治療の中心となります (参考文献 1) 。
- 皮膚症状:水疱期には感染予防や不快感軽減のための局所療法が行われます。感染症を合併した場合には抗生剤などで対応します。
- 歯の異常:咀嚼 (そしゃく) や発音が障害される場合があります。小児歯科と連携した治療や、言語聴覚系のリハビリ・訓練を行うことで発達をサポートします。
- 眼合併症:網膜の異常による視機能低下予防のため、早期から眼科による経過観察と必要に応じてレーザー治療が行われます
- 中枢神経障害:けいれん・てんかんの管理・治療が重要なほか、発達遅滞に対しては特別支援教育でサポートするなどの福祉資源の活用が検討されます。
今日では、新生児期や乳児期に重い合併症を併発しなかった場合の生存期間は、色素失調症ではない人と変わらないとされています (参考文献 1) 。
長期にわたって付き合う疾患であるからこそ、網膜剝離をはじめとした、ある程度時間がたってからも現れることがある合併症の対策が重要です。症状が出たときには、かかりつけ医療機関を受診して治療を受けてください。
色素失調症になりやすい人・予防の方法
遺伝性疾患であるため、血縁者に色素失調症患者がいる場合には、生まれてくる子に発症リスクがあります。しかしながら 65% の症例では突然変異的に発症しているため、子どもが患者だからといって必ずしも自分が保因者というわけではありません。
遺伝や突然変異が原因なので、発症の予防は困難です。
新生児〜乳児期の症状である「水疱」になるべく触らないようにする、患部を清潔に保つ、定期的な受診を欠かさないといったことで、重症化を予防することが最も重要です。関連する診療科で定期的に症状・発達の評価をすることが、成長した後の後遺症を予防する手段ともいえるでしょう。
色素失調症は小児慢性特定疾病に指定されており、医療費の助成を受けることができます (参考文献 2) 。長くつきあう病気なので、公的な制度の利用も検討してください。




