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眼皮膚白皮症
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

眼皮膚白皮症の概要

眼皮膚白皮症(がんひふはくひしょう)は、生まれつき皮膚、毛髪、眼の色が薄くなる遺伝性疾患で、「アルビノ」とよばれることもあります。日本国内の患者数は約5000人と推定されており、国の指定難病に登録されている、まれな疾患です。

眼皮膚白皮症は、メラニン色素の合成が低下、または消失することで発症します。その結果、全身の皮膚は白く、毛髪は白から茶褐色や銀色に、眼の虹彩の色は青や灰色調になることが特徴です。
また、外見的な特徴だけでなく、視力障害や眼のゆれ(眼振)などの眼に関連する症状がみられることも多くあります。

眼皮膚白皮症は、非症候型と症候型の2つのタイプに分類されます。
非症候型では、メラニン色素の合成が少ないことによる外見的特徴や眼の症状のみがあらわれます。
一方で、症候型は外見的特徴や目の特徴に加えて、出血傾向、免疫不全、神経症状といった合併症をともなうことがあります。

眼皮膚白皮症の原因は、メラニン色素の合成などに関わる遺伝子の変異です。メラニン色素が少ないため、紫外線の影響を受けやすく、皮膚がんを発症するリスクが高くなると考えられます。そのため、幼少期から日常生活で紫外線対策を行うことが重要です。

現在、眼皮膚白皮症の確立された治療法はなく、紫外線対策を中心とした生活指導や、合併症を予防・管理するための対症療法が行われます。とくに症候型では、眼皮膚白皮症にともなう合併症に応じた治療が必要となります。

眼皮膚白皮症

眼皮膚白皮症の原因

眼皮膚白皮症の原因は、メラニン色素の合成や細胞内輸送に関わる遺伝子の異常です。これらの遺伝子に異常があると、メラニンの合成が低下、あるいは消失し、その結果、皮膚や毛髪、眼の色が薄くなる特徴がみられます。

2023年現在までに、非症候型眼皮膚白皮症では8種類、症候型眼皮膚白皮症では15種類、計23種類の原因遺伝子が報告されており、今後もさらに新たな原因遺伝子がみつかる可能性があります。

眼皮膚白皮症の前兆や初期症状について

眼皮膚白皮症は、生まれたときから通常よりも皮膚が白く、毛髪は白から茶褐色や銀色、眼(虹彩)の色は青や灰色調という特徴的な外見がみられることが一般的です。
しかし、すべての眼皮膚白皮症でこのような明確な特徴がみられるわけではなく、軽度の眼皮膚白皮症では、皮膚の色などの外見のみで眼皮膚白皮症と認識されにくい場合もあります。

ほかにも、矯正が不可能な視力障害、眼のゆれ(眼振)、光線過敏症などの症状がみられることも多いです。
眼のゆれは、眼皮膚白皮症の8割以上で認められ、生後6〜8週からあらわれることが一般的です。成長とともに目の揺れの振れ幅は減少するとされています。
また、光にさらされるとまぶしさや不快感を感じる症状(羞明)がみられ、日常生活に支障をきたすこともあります。

症候型の眼皮膚白皮症は、原因となる遺伝子によってさらに細かく分類され、それぞれのタイプで症状や合併症が異なります。一部のタイプでは、出血が止まりにくい、免疫機能の低下、神経症状(運動神経発達障害、精神発達障害など)、貧血といった合併症をともなう場合があります。
また、40歳以降に予後の悪い疾患(間質性肺炎、肉芽種性大腸炎など)を高い確率で合併するタイプもあり、早期診断によって予防対策を講じることが重要です。

眼皮膚白皮症の検査・診断

皮膚や毛髪、眼などの外見的特徴から眼皮膚白皮症が疑われる場合、眼底検査や視力検査を行います。

眼底検査では、眼底の色素や網膜の中心部(黄斑)に異常があるかどうかを調べます。軽症の眼皮膚白皮症では、皮膚や毛髪、眼などの色だけでは診断が難しい場合もあるため、眼底検査が重要な診断材料となります。遺伝子検査が行われる場合もあり、眼皮膚白皮症の原因遺伝子に変異が認められれば、眼皮膚白皮症の診断が確定します。

また、出血傾向の症状を合併する眼皮膚白皮症の場合は、血液検査で血小板の機能を確認する検査が行われます。

眼皮膚白皮症の治療

眼皮膚白皮症の根本的な治療法はなく、症状の悪化を予防したり遅らせたりするような、症状管理を目的とした生活指導が行われます。

人の皮膚は、本来、紫外線から身を守る仕組みが備わっており、その代表的なものがメラニン色素です。メラニンは紫外線や可視光線、赤外線を吸収して、DNAが損傷するのを防ぐ役割を果たしています。しかし、眼皮膚白皮症ではメラニン色素の合成が低下しているか、ほとんどつくられていないため、紫外線の影響を受けやすく、皮膚がんを発症するリスクが高まります。そのため、幼少期から日常生活で紫外線対策を徹底することが重要です。

紫外線対策として、日焼け止めやサングラスの使用、帽子や長袖の衣服の着用、日差しの強い時間帯を避けるなどの生活指導が行われます。また、早期に皮膚の異常を発見できるよう、皮膚科での定期的な診察を受診することが必要です。

視覚障害に対しては、早い段階から、矯正めがねやサングラスの使用を指導し、屈折異常の矯正や弱視訓練などが行われます。

合併症をともなう症候型の眼皮膚白皮症の場合は、それぞれの合併症の症状に対する対症療法が行われます。

眼皮膚白皮症になりやすい人・予防の方法

眼皮膚白皮症は遺伝性疾患であり、発症を予防する方法は現在のところ存在しません。

眼皮膚白皮症の原因遺伝子の異常がある人を家系にもつ場合は、眼皮膚白皮症を発症するリスクが高まる可能性があります。
両親がともに同じタイプの眼皮膚白皮症である場合、眼皮膚白皮症の子どもが生まれる確率はほぼ100%です。一方で、父親か母親のどちらかのみが眼皮膚白皮症である場合は、眼皮膚白皮症の子どもが生まれる確立は100〜200分の1とされています。


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