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顔面播種状粟粒性狼瘡
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

顔面播種状粟粒性狼瘡の概要

顔面播種状粟粒性狼瘡(がんめんはしゅじょうぞくりゅうせいろうそう)は、若い成人の顔にあらわれやすい、まれな皮膚の病気です。

主に20代から40代の方に多く見られ、顔の中心部分に吹き出物のような発疹ができるのが特徴的です。このような特徴的な見た目から「酒さ(しゅさ)」の一種ではないかと考えられることもあります。
無治療でも自然に治ることが多いですが顔に跡が残ることがあり、美容面で問題が生じる可能性があります。

出典:National Library of Medicine「Lupus miliaris disseminatus faciei」

以前は結核菌が原因で顔面播種状粟粒性狼瘡を発症すると考えられていましたが、現在では別の病気として明確に区別されています。

治療法は複数ありますが、最も効果的な治療法については、現段階で明らかになっていません。顔面播種状粟粒性狼瘡を適切に治すためには、皮膚科の専門医による継続的な診察と治療が必要となります。

顔面播種状粟粒性狼瘡

顔面播種状粟粒性狼瘡の原因

顔面播種状粟粒性狼瘡の原因は、はっきりとわかっていません。「狼瘡」とは結核を指す言葉であり、以前は結核の1つのタイプと考えられていましたが、その説は否定されています。

現在は、何らかの原因で毛穴の中にある毛を作る小さな袋状(毛包:もうほう)の構造が壊れることで発症している可能性が考えられており、これは炎症が起きている毛穴の周りを観察すると「肉芽腫」という炎症の塊ができているのが確認されることが根拠とされています。

また、肉芽腫からは常在菌の一種である「アクネ菌」が検出されることがあり、顔面播種状粟粒性狼瘡の発症に関係している可能性が指摘されています。

顔面播種状粟粒性狼瘡が顔の中心部分に発疹が多く見られる理由としては、顔の中心部分は皮脂腺が多く、毛穴の構造も特徴的であるためだと考えられています。

免疫が関係している可能性も指摘されていますが、どのような仕組みで病気が起きるのかについては、現在も研究が続けられています。

顔面播種状粟粒性狼瘡の前兆や初期症状について

顔面播種状粟粒性狼瘡の症状は、顔の中心部分にあらわれる発疹が特徴です。顔以外の部分に症状が出ることは非常にまれです。

まぶたやその周囲、鼻、頬、口の周りなどに、赤黄色や茶色の小さな吹き出物のような発疹が複数できます。左右対称にあらわれるのが特徴で、かゆみや痛みなどの症状はほとんどありません。

発疹の数は数か月かけて増えていくことが多いです。1~2年程度で自然に治っていく傾向がありますが、小さなくぼみ状の傷跡が残ることがあります。

出典:National Library of Medicine「Lupus miliaris disseminatus faciei」

特徴として、通常の吹き出物やにきびでよく見られるようなかさぶた、血管が浮き出たような症状、顔が赤くなるような症状は見られません。

冷やすことで症状が悪化したり、暑さで改善したりするような温度による発疹の変化も見られません。

顔面播種状粟粒性狼瘡の検査・診断

顔面播種状粟粒性狼瘡の診断には皮膚生検が重要ですが、他の病気との鑑別のために複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。

皮膚生検

顔面播種状粟粒性狼瘡を確実に診断するには、皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる検査が重要です。顔面播種状粟粒性狼瘡であれば、肉芽腫が見つかり、肉芽腫の中心部分には組織の壊死が確認できます。

鑑別のための検査

顔面播種状粟粒性狼瘡は他の皮膚の病気と症状が似ているため、複数の検査を行い、鑑別することも重要です。

結核などの感染症との鑑別のために、細菌検査を行うことがあります。また、サルコイドーシスという病気との鑑別のために、胸のレントゲン検査や血液検査を行うこともあります。

顔面播種状粟粒性狼瘡の治療

顔面播種状粟粒性狼瘡は自然治癒することもあり、根本的な治療は分かっておらず、一般的に薬物療法が行われます。薬物療法とレーザー治療を組み合わせた治療によって改善された報告もありますが、十分な研究データが集まっていないのが現状です。

薬物療法では、第一選択薬としてテトラサイクリン系という種類の抗生物質が使われます。症状が改善した後も、再発を防ぐために数か月間の継続した治療が必要になることがあります。

症状が強い場合や患者の意向で早い改善が求められる場合は、ステロイド薬を使うことがあります。ただし、長期使用による副作用の心配があるため注意が必要です。

顔面播種状粟粒性狼瘡になりやすい人・予防の方法

顔面播種状粟粒性狼瘡は、20歳代から40歳代の若い成人に多く発症する傾向にあります。しかし、まれに小児や高齢者でも発症することも報告されています。性別による発症の差はほとんど見られず、男女ともに同じように発症する可能性があります。

予防法に関しては確立されていませんが、毛包や皮脂腺との関連が指摘されていることから、日常的に皮膚の清潔を保つことは重要とされています。

過度な洗顔や強いスクラブ剤の使用は、かえって皮膚を刺激し、症状を悪化させる可能性があります。顔の皮膚を過度に刺激しないよう、強い日差しを避けたり、適切なスキンケア製品を選んだりすることも大切です。

また、早期発見につなげることも症状を悪化させない予防策の一つです。顔の中心部、特にまぶたの周りに小さな発疹が複数現れた場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。早い段階で治療を始めることで、発疹が治ったときにできる「跡(瘢痕)」を最小限に抑えられる可能性があります。


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