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類乾癬
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

類乾癬の概要

類乾癬(るいかんせん)とは、角化性紅斑(かくかせいこうはん:皮膚表面の炎症と表皮が作り変えられる角化が同時に起きる症状)が広い範囲でみられる皮膚の病気です。皮膚が赤く盛り上がり、フケが多くできますが、かゆみなどの自覚症状はほとんどありません。

類乾癬と似た名称の皮膚疾患に「乾癬」がありますが、両者は異なる疾患です。特に皮疹の色の違いが顕著であり、乾癬に対して類乾癬はやや薄い色調の皮疹を特徴としています。

類乾癬は症状の違いから大きく局面状類乾癬(きょくめんじょうるいかんせん)と苔癬状粃糠疹(たいせんじょうひこうしん)に分類されます。

症状の問診と医師の視診によって診断されますが、まれに菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう:悪性リンパ腫の一種)の前段階症状として類乾癬が発症することもあるため皮膚生検で詳しく検査するケースもあります。

局面状類乾癬とは

体幹や四肢に境界線がはっきりしている淡い紅斑(こうはん:皮膚の盛り上がりや毛細血管の拡張を伴っていない皮疹)が主症状の類乾癬です。壮年〜老年の男性に好発し、わずかにフケも生じます。

局面状類乾癬は皮疹の大きさによってさらに分類され、皮疹が5cmを超えると大局面型、5cm未満の皮疹には小局面型といわれます。大局面型の10〜30%ほどは菌状息肉症になる可能性があるため注意が必要です。

苔癬状粃糠疹とは

苔癬状粃糠疹は直径が数mm〜1cm程度の角化性丘疹(かくかせいきゅうしん)が体幹・大腿部・上腕に次々に発生する病気です。若年者に好発し、新しい丘疹と古い丘疹が入り乱れる状態が特徴的で、治った後も瘢痕(はんこん:傷が治った後にできる跡)や色素脱失・色素沈着などが残る可能性があります。

苔癬状粃糠疹には急性型と慢性型があり、急性型であれば全身の倦怠感や発熱を伴うケースがあります。慢性型では治癒まで数年かかることもあり、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことが特徴です。

類乾癬

類乾癬の原因

類乾癬を発症する原因は未だ解明されていません。

類乾癬を発症した患者の皮膚を病理検査すると皮膚に炎症がみられ、白血球が集まる傾向があることが分かっています。このような炎症性疾患によるもののほか、菌状息肉症の前駆症状によるものなど、さまざまなケースがあると考えられています。

類乾癬の前兆や初期症状について

類乾癬では初期から角化性紅斑が全身にわたって広く分布します。多くはかゆみなどの自覚症状はないものの、慢性化すると良くなったり悪くなったりを繰り返すことが特徴です。

急性型苔癬状粃糠疹の場合、全身の倦怠感や発熱を伴うことがあります。加えて潰瘍(かいよう:皮膚が傷つき、表皮より深部が欠損している状態)をともなう丘疹がみられますが、数週間で治癒し瘢痕化するのが特徴です。

類乾癬の検査・診断

類乾癬は医師による視診と、症状が発症してからの問診によって診断されます。類乾癬は全身の広い範囲にみられる角化性紅斑が特徴で、かゆみなどの自覚症状を伴いません。また、古い皮疹と新しい皮疹が入り乱れるなどの特徴もあり、症状が数年続くこともあります。

これらのような症状がある場合、類乾癬と診断されます。しかし、局面状類乾癬の大局面型は悪性リンパ腫である菌状息肉症に至るケースがあるため、注意が必要です。そのため5mmを超える皮疹がみられる症例であれば皮膚生検をおこない、腫瘍組織の有無を確認することもあります。

類乾癬の治療

類乾癬の治療にはステロイドの軟膏やナローバンドUVB療法やエキシマ治療というという光線療法を用います。ステロイド軟膏を使用しても効果がないケースに対して、ナローバンドUVB療法が有効です。

以前は類乾癬に対する光線療法としてPUVA療法が用いられてきました。PUVA療法は紫外線A波とソラレンという薬剤を皮疹に当てることで皮膚状態の改善を促す治療法です。しかし紫外線A波は皮膚に蓄積し少しずつダメージを与え、長期使用により皮膚がんのリスクを高める可能性があります。

対してナローバンドUVB療法では紫外線B波を利用します。紫外線B波はA波と比較して皮膚への蓄積ダメージが小さいため、小児にも使用可能な治療法です。また、ソラレンの使用も必要なく、照射時間が少ないメリットもあり、発がん性も低く安全性も高いとされています。
とはいえ皮疹に対しての治療成績ではPUVA療法とナローバンドUVB療法で大きな差はありません。

また、どちらの治療法でも再発のリスクはあるため、経過観察は重要です。

類乾癬になりやすい人・予防の方法

類乾癬を発症する原因は判明していないため、予防方法は確立されていません。しかし、過去の統計より局面状類乾癬は壮年〜老年の男性に、苔癬状粃糠疹は若年層の男性に好発しやすいと報告されています。

予防方法は確立されていませんが、大局面型局面状類乾癬は菌状息肉症に至るケースがあるため、5cm以上の類乾癬がみられる場合には定期的な検査が必要です。

また、光線療法後の皮疹再発にも注意しなければいけません。類乾癬は光線療法後に数ヶ月〜6ヶ月程度で再発するといわれています。そのため、定期的な光線療法が必要です。


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