監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
単純性紫斑の概要
単純性紫斑とは、明らかな原因がないにも関わらず皮膚にあざができる疾患で、特に女性に多くみられます。
紫斑とは、皮膚の下に出血することで紫色を帯びたあざ(斑)ができる状態です。原因として炎症を伴うものと伴わないものがあり、単純性紫斑のように炎症を伴わないものは、血管周囲の組織が弱くなることなどが原因で生じます。
似たような疾患に「老人性紫斑」があります。老人性紫斑では、加齢によって血管周囲の組織が弱くなり、軽微な刺激で腕や手の甲などにあざができます。
一方、単純性紫斑では、体をぶつけたり転んだりしていないにも関わらず、皮膚の至るところに紫色のあざが生じます。あざは特に膝から下に生じやすいものの、他の部位にできることもあります。また、あざは季節の変わり目に生じやすい傾向があります。
一般的にあざ以外の自覚症状は少ないものの、中にはあざが硬くなったり、押すと軽い痛みを感じたりすることもあります。
はっきりとした原因はわかっていないものの、特定の薬剤を内服していることや日光にさらされること、体重が少ないことなどによって発症リスクが高まると考えられています。また、家族内にあざができやすい人がいる場合にも発症するケースがあります。
発症を認める場合でも、時間の経過とともにあざは自然に消失します。そのため、検査の結果異常がない場合には、特別な治療を行う必要はありません。しかし、患者さんによっては、内服中の薬剤を中止するよう指示されることがあります。また、同じような症状を示す疾患に重篤な疾患もあるため、そのような疾患と鑑別するために血液検査が必要なケースもあります。
単純性紫斑の原因
明らかな原因は解明されていません。
しかし、血液の塊ができるのを防ぐための「ワルファリン」という薬剤や、非ステロイド性解熱鎮痛薬の「アスピリン」を使用している場合、過去にステロイド薬を使用している場合には発症率が高まる傾向があります。また、低体重であることや、日光にさらわれることによっても発症リスクが高まります。
このほか、家族内に紫斑ができやすい人がいる場合にも発症するケースがあります。
単純性紫斑の前兆や初期症状について
体をぶつけたり転んだりしていないにも関わらず皮膚にあざができます。あざは点状の小さなものから大きなものまでさまざまで、特に足にできやすく、膝から下に多くみられる傾向があります。このほか、二の腕やお尻、太ももなどにできることもあります。
一般的に、あざ以外の自覚症状は少なく、特別な治療をしなくても自然に消失します。しかし、中にはあざの部分が硬くなったり、抑えると軽い痛みを伴ったりするケースもあります。
単純性紫斑の検査・診断
一般的に、問診や視診によって概ね診断することができます。
しかし、単純性紫斑と似た症状を示す「IgA血管炎」や「血小板減少性紫斑病」と鑑別するために、血液検査が行われることがあります。
IgA血管炎は、あざのほか関節痛や腹痛、腎炎などを伴う疾患です。明確な原因は分かっていないものの、「IgA」という抗体の存在が関連しているのではないかと考えられています。
一方、血小板減少性紫斑病は、体内に血小板を攻撃する抗体が存在することで血小板が減少し、あざのほか身体の至るところで出血しやすくなる疾患です。
いずれも血液検査では異常が確認されますが、単純性紫斑病では血液検査を行なっても検査結果に異常がみられないことが特徴です。
単純性紫斑の治療
血液検査で異常が確認されない場合には、一般的に特別な治療は行われません。
しかし、アスピリンやワルファリンを内服していてあざを認める場合には、主治医から薬剤の内服を中止するよう指示されることもあります。
いずれにしても、単純性紫斑は重篤な疾患ではなく、2週間から4週間程度で自然に消失するため、治療はせず経過観察のみとなることが多いです。
出典:一般社団法人日本血栓止血学会「単純性紫斑・老人性紫斑」
単純性紫斑になりやすい人・予防の方法
アスピリンやワルファリン、ステロイド薬を内服している場合や、日光にさらされる機会が多い場合、低体重の場合、家族にあざができやすい人がいる場合などには、単純性紫斑を発症しやすい傾向にあります。
現在のところ単純性紫斑の発症を予防する明確な方法は見つかっていないものの、上記に当てはまる場合で皮膚にあざを認める場合には、医療機関に相談しましょう。
関連する病気
- IgA血管炎
- 血小板減少性紫斑病
- 老人性紫斑
参考文献