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多形日光疹
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

多形日光疹の概要

多形日光疹とは、光線過敏症の一種で、アレルギー反応を引き起こす疾患です。日光に晒された皮膚に赤みや湿疹・水疱(すいほう)が生じ、多くの場合かゆみを伴います。

通常は顔や腕、足のほか首・胸の上部など日光が当たりやすい部位に赤み・湿疹・水疱が生じますが、まれに日光が当たっていない部位にも症状が出ることがあります。

多形日光疹は、健常者であれば反応が出ない程度の日光であっても症状が現れます。

光線過敏症のうち日光アレルギーに分類される疾患は、薬剤など原因が皮膚の外にある「外因性光アレルギー」と、原因が皮膚の中にある「内因性光アレルギー」に分けられます。
多形日光疹は日光アレルギーのうち内因性日光アレルギーに分類されます。皮膚に光が当たることでアレルギーの原因となる物質が体内に生成され、症状が現れます。

多形日光疹の原因は明らかになっていませんが、症状を抑えるために、日差しの強い日や時間は外出を控えるようにしましょう。また外出の際は、長袖長ズボンの着用、日傘の使用など、皮膚に日光が当たらないような対策が重要です。

多形日光疹

多形日光疹の原因

多形日光疹は、日光に含まれる紫外線が皮膚に当たったときに体内で産生される物質(アレルゲン)が原因で発症すると考えられています。
また一部では家族内での発症がみられることから、遺伝による関連が疑われていますが、はっきりしたことは分かっていません。

紫外線には波長の長い紫外線Aと波長が短い紫外線Bがあり、多形日光疹の原因となるのは紫外線Aです。

紫外線Aは波長が長いため、多くの物質を透過する性質を持ちます。そのため、室内などのガラス越しであっても肌に紫外線が届き、症状が出現する可能性があります。

多形日光疹の前兆や初期症状について

多形日光疹は皮膚に日光が当たった後、かゆみを伴う赤み・湿疹・水疱(すいほう)がみられます。日光に肌が当たり続けることで症状が持続し、日が当たっていないところまで赤み・湿疹・水疱などの症状が広がる可能性があるため注意が必要です。

症状自体は1時間〜数日で消えることが多いです。ただし症状の出方は個人差があり、日光に当たった直後に症状が出ることもあれば、翌日以降に症状が出ることもあります。

多くは紫外線が強い時期に症状が出現し、夏を過ぎると徐々に症状が落ち着いていくでしょう。

多形日光疹の検査・診断

多形日光疹は原因が明らかになっていないため、確定診断に有効な検査がありません。そのため、光線過敏症に分類されるほかの疾患を除外していき、最終的には医師の触診・視診で多形日光疹と診断します。

例えば湿布薬などを使った後に日光に暴露されていれば薬剤性光線過敏症が疑われ、既往歴にHIV感染などの自己免疫疾患があれば自己免疫性光線過敏症が疑われるでしょう。また、皮膚症状のうち赤みなどでなく膨疹(ぼうしん)があれば、日光蕁麻疹を疑います。
このように一般的には問診や医師による触診・視診で診断を行います。

光線過敏症では光パッチテスト(光線貼付試験)も有効です。薬剤を皮膚に塗布した後にその部位に日光を当てることで症状の有無を確かめます。
また、どの紫外線で症状が出現するかも同時に調べ、原因となる紫外線の波長も検査することも有効です。薬剤による反応がみられず、紫外線Aに反応すれば多形日光疹の可能性が高いといえるでしょう。

多形日光疹の治療

多形日光疹では、出現した症状を抑えるためにステロイド薬や抗ヒスタミン薬などの薬を用いて治療します。

皮膚の湿疹・痒みに対してはステロイド薬が効果的です。ステロイド薬は皮膚の炎症を抑える作用があるので、赤みや痒みといった多形日光疹の症状を抑える効果が期待できます。

症状が強い場合には抗ヒスタミン薬を使用します。多形日光疹はアレルギー性疾患であるため、体内でアレルギー反応を起こす物質の作用を抑える抗ヒスタミン薬が有効です。

多形日光疹になりやすい人・予防の方法

多形日光疹は原因が解明されておらず、発症しやすい人もわかっていない病気です。しかし免疫系が関与している可能性があるため、自己免疫疾患がある人やアレルギー体質の人は発症しやすいと考えられています。

予防方法は日光に肌を晒さないことが重要です。帽子をかぶることや長袖を着ること、室内では遮光カーテンを利用して紫外線を遮断することが多形日光疹の発症予防になります。
短い時間でも帽子や日傘を利用し、日光に皮膚が触れないようにこころがけてください。

また、紫外線をカットする日焼け止めも効果的です。日焼け止めによって皮膚に到達する紫外線が遮断されれば、多形日光疹を予防できる可能性があります。日焼け止めに表記されているSPF(数字で表記)・PA(+の数で表記)のうち紫外線Aの遮光効果を表すものはPAなので、PAの+が多い商品がとくに有効です。


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