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江崎 聖美

監修医師
江崎 聖美(医師)

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山梨大学卒業。昭和大学藤が丘病院 形成外科、群馬県立小児医療センター 形成外科、聖マリア病院 形成外科、山梨県立中央病院 形成外科などで経歴を積む。現在は昭和大学病院 形成外科に勤務。日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会実施医師。

老人性色素斑の概要

シミ(色素斑)の多くは加齢性や紫外線暴露に伴うものであり、高い頻度でみられる代表的なものは、老人性色素斑や肝斑です。老人性色素斑は、紫外線や加齢の影響によって皮膚に現れる、境界が比較的明瞭な褐色の色素斑です。日光黒子と呼ばれることもあります。おもに、顔、手、腕、肩など、日光に頻繁にさらされる部分に発生します。特に中年以上の人に多く見られ、若い人でも日光に多く晒れば同様の色素斑が出現することがあります。自然消退することはありません。一部が隆起して脂漏性角化症という良性腫瘍に移行することがあります。

一方、肝斑は両側の頬部を中心としてできる境界がはっきりとした色素斑で、中年女性に多く見られます。女性ホルモンと紫外線暴露が主な原因と考えられています。
肝斑と老人性色素斑を合併している例もあり、専門医でなければ見分けが難しい場合があります。中高年に見られる色素斑で、同じく紫外線の暴露により生じる疾患として日光角化症があります。日光角化症は皮膚癌の早期の病変であり見ただけでは判断も難しい為、専門医の診断が必要となります。日焼けを防ぐことが最も効果的な予防策であり、日焼け止めを日常的に使うことが奨励されています。

老人性色素斑の原因

老人性色素斑の主な原因は、長期間にわたる紫外線曝露と加齢です。老化と紫外線暴露により、皮膚内のメラノサイト(メラニンを生成する細胞)を刺激し、メラニンの過剰生成を引き起こします。このメラニンが皮膚に蓄積することで、茶色の色素斑として現れます。加齢により皮膚の代謝が低下し、紫外線によるダメージが回復しにくくなることも、色素沈着の一因となります。

また、ホルモンバランスの変化や遺伝的要因、喫煙やアルコールの過剰摂取などの生活習慣も、リスクを高めると考えられています。紫外線によるダメージは若い頃から蓄積されるため、若年期からの日焼け対策が重要です。特に、日光に多く曝露されるアウトドアの活動を行う人々や、日焼けサロンを頻繁に利用する人は、紫外線の影響をより強く受ける傾向があります。

老人性色素斑の前兆や初期症状について

老人性色素斑は通常小さな褐色から濃い茶色の色素斑として現れます。これらの斑点は平坦で、かゆみや痛みなどの自覚症状を伴うことはほとんどありません。時間が経つにつれて、色素斑は次第に大きくなり、色が濃くなることが一般的です。また、複数集まることがあり、それによってより目立つことがあります。

老人性色素斑自体は治療を必要としない良性疾患です。しかし、急激に増大する、かゆみや痛み、出血を伴う、境界が不明瞭、色がまだらなどの症状が見られた場合には皮膚癌との区別が必要なため注意が必要です。これらの症状は、皮膚癌の初期症状である可能性があるため、早めに皮膚科を受診し、専門医による詳細な診断が必要です。

老人性色素斑の検査・診断

老人性色素斑の診断は、通常、視診や問診によって行われます。斑点の形状、色、境界などを観察し、経過や症状も含めて判断を行います。ダーモスコピー(ライトがついた拡大鏡のような診療器具)を用いて皮膚病変の表面を拡大して詳しく観察することもあります。悪性病変と判断が難しい時は、皮膚の一部を採取して顕微鏡で確認する検査(生検)を行うこともあります。

老人性色素斑の治療

老人性色素斑の治療は、主に美容的な理由で行われます。通常は保険の対象外です。また、処置には合併症が伴う可能性があり、治療の選択には医師の診察や説明を聞いた上での選択が必要です。また、医療機関によって選択できる治療が異なる場合があります。

以下のような方法が一般的です。

レーザー治療

老人性色素斑に対して最も効果的な治療法の一つがレーザー治療です。Qスイッチレーザーが使用されます。レーザー光はメラニン色素をターゲットにして破壊し、色素斑を薄くします。効果が早く、比較的短期間で改善が期待できるため、人気の高い治療法です。レーザー治療はメラノサイトに直接作用し、色素細胞を破壊することで、シミの原因を根本的に取り除くことが可能です。1回の照射で効果が得られることがほとんどですが、ものによっては複数回治療を必要とすることがあります。レーザー照射後1-2日は発赤や腫脹がおき、その後かさぶたができます。7-10日でかさぶたが取れて上皮化します。施術後最も起こる合併症として炎症性色素沈着があり、アフターケアが必要です。角質が厚くなったものにはCO2レーザーが適応になることもあります。

光治療(IPL)

インテンシブ・パルス・ライト(IPL)は、560~1200nmの波長域の光を用いて皮膚の色素沈着を改善する治療法です。レーザーよりも穏やかな作用を持つため、複数回の治療が必要ですが、色素斑以外にも赤ら顔や血管拡張にも効果があります。メラニン色調の濃い大きな色素斑では治療効果がはっきりせず、Qスイッチレーザー治療を選択するほうが良いとされていますが、小さい色素斑や薄い色素斑で炎症性色素沈着を起こしやすい人や、雀卵斑(そばかす)などのように再燃を繰り返す色素斑などの治療に使われます。

外用薬

メラニン生成を抑制する外用薬も一般的です。代表的なものとしてハイドロキノンやレチノイン酸が挙げられます。これらの外用薬は、定期的な使用で徐々に色素沈着を軽減し、シミを薄くする効果があります。ただし、効果が現れるまでに数ヶ月かかることもあり、皮膚の乾燥や刺激感を引き起こすことがあります。

ケミカルピーリング

化学薬品を用いて皮膚の古い角質を取り除き、新しい皮膚の再生を促し、メラニンの排出を促す治療法です。これにより、色素斑が薄くなり、肌全体が明るくなる効果が期待できます。ピーリングは、他の治療法と併用することで、より効果的な結果を得ることが可能です。

老人性色素斑になりやすい人・予防の方法

老人性色素斑になりやすい人

老人性色素斑ができやすい人には、以下の特徴があります。

  • 紫外線を多く浴びる人
  • 高齢者

予防の方法

老人性色素斑を予防するためには、日常的に紫外線対策を行うことが最も重要です。紫外線によるダメージを防ぐために、SPF30以上の日焼け止めを使用することが推奨されます。外出する際には、屋外に出る15〜30分前に、顔だけでなく手や腕にも日焼け止めを塗布し、特に紫外線が強い時間帯(10時~14時)はこまめに塗り直すことが大切です。水泳や発汗がある場合は、それ以上に頻繁に塗り直してください。屋外で過ごす際には、帽子やサングラス、長袖の衣服を着用し、できるだけ直射日光を避けるようにしましょう。また、日陰で過ごすことや、紫外線カット効果のある傘や衣類を利用することも効果的です。また、抗酸化作用のあるビタミンEや、メラニン色素の生成を抑えるビタミンCを摂取すること、喫煙や過度な飲酒を控えるなど生活習慣を改善することも良いとされています。


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