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ボーエン病
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

ボーエン病の概要

ボーエン病とは、表皮(皮膚の表面)内部にできる早期の皮膚癌のことです。
初期段階では、癌細胞が表皮に留まっていますが、これを放置すると癌細胞が真皮(表皮の内側にある肌の本体)まで及び、ボーエン癌と呼ばれる病気になる可能性があります。

一般的に、ボーエン病は高齢者に多くみられる病気であり、紫外線やヒトパピローマウイルスなどが原因とされています。
また、免疫力の低下や長期にわたる皮膚への刺激もリスク要因として挙げられています。

ボーエン病は、手術で全ての病変を取り除くことができれば完治の可能性が高くなるため、異常を感じた際には早期に病院を受診することが大事です。

ボーエン病の原因

ボーエン病の原因は、明らかにされていませんが、紫外線やヒトパピローマウイルスなどが原因の一つであると考えられています。

長期間日光を浴び続けることで、皮膚が損傷され癌化するリスクが高まります。

ヒトパピローマウイルスは、性的な接触の経験がある女性の50%以上が、生涯で一度は感染するとされている身近なウイルスです。
このウイルスはボーエン病のほかに、子宮頸癌や膣癌、肛門癌などタイプの違いにより多くの病気の原因になります。

さらに、井戸水や農薬などに含まれたヒ素を摂取したり、ヒ素を扱う工場で働いていたりすると、ボーエン病を発症する恐れがあります。

ボーエン病の前兆や初期症状について

ボーエン病の初期症状は分かりにくく、患者さん自身が気づきにくいことがあります。

特に、湿疹やシミ、ほくろなどと見た目が似ているため、これらの症状を別の皮膚病と勘違いするケースが多いからです。

通常、ボーエン病の前兆では体幹部や下肢、陰部などの皮膚の一部が赤くなる、または茶色の斑点などが現れます。
この斑点は、表面はざらざらしており小さなフケのようなものが付いている場合があります。
見た目がほくろに似ている場合もあり、平らで境界がはっきりしているのが特徴です。

症状が進むと、徐々に斑点が広がったり盛り上がったりする状態になる場合があります。
また、皮膚にかさぶたができやすく、傷が治りにくくなることもあります。

これらの症状は痛みやかゆみを伴わないことが多いため、見過ごされてしまうことも少なくありません。
ボーエン病の進行速度はゆっくりですが、進行して転移すると真皮内に癌が浸潤します。

血管やリンパ管などを通じて、癌が内臓に転移することで死亡率が高まるリスクがあります。
もし外用薬に効果がみられず症状が続く場合や斑点の大きさが変わったり色が濃くなったりした場合には、早期に皮膚科を受診し、適切な治療を受けることが重要です。​

ボーエン病の検査・診断

ボーエン病は、早期発見が重要な皮膚癌です。

ただし、湿疹や尋常性乾癬、脂漏性角化症などの皮膚病と似ていることもあり、診断が難しいケースもあります。
正確な診断のためには、適切な検査が不可欠です。

検査

ボーエン病の検査は、まず皮膚科医による視診から始まります。

視診では、病変部の大きさや形状、色に加えて境界の明瞭さや表面の質感などを詳細に観察します。
これにより、他の皮膚病との鑑別が可能です。

視診で異常が疑われる場合には、ダーモスコピー(皮膚鏡)を使用して病変部の詳細を確認します。
ダーモスコピーは、皮膚の層や色素の分布を詳しく観察するための装置であり、皮膚癌の早期発見に役立ちます。

また、診断精度を高めるために、視診時に病変部の写真を撮影して変化を記録するケースもあります。
このような視診とさまざまな検査を実施したうえで、さらに詳細な検査が必要と判断された場合には、組織検査や他の確定診断のための検査が行われます。

診断

ボーエン病の確定診断には、局所麻酔下での皮膚生検が行われるのが一般的です。
皮膚生検では、病変部の一部を切除し、顕微鏡を用いて細胞の構造や配列、異常な増殖の有無を詳しく調べます。
この検査により、ボーエン病特有の細胞異常が確認されることで、他の皮膚病との区別が可能になります。

また、生検によって浸潤が確認された場合には、さらなる精密検査が必要です。
この場合、CT検査やMRI検査を実施し、リンパ節や内臓への転移があるかどうかを評価します。

加えて、必要に応じて超音波検査やPET-CTなどの画像診断も考慮して、全身的な転移の有無を確認します。

ボーエン病の治療

ボーエン病の治療は、病状が表皮で留まっている場合と、進行している場合で異なります。

表皮で留まっている場合

初期のボーエン病の治療は、手術によって病変部を切り取ります。

手術では、癌細胞を残さずに取り除くために、患部の周囲から数mm程度大きめに切除することで、手術後に転移したり再発したりすることはほとんどありません。

さらに、ボーエン病の病変が小さい場合は、切り取った後に皮膚を寄せてそのまま閉じることができます。
一方で、病変が大きい場合は、無理に縫い寄せることで引っ張られたり変形したりして縫合できないケースもあります。
そのため、植皮術(他の部位からの皮膚で傷口を覆う)や皮弁形成術(周りの皮膚を切開し、ずらしながら傷口を覆う)で修復しなければなりません。

植皮術や皮弁形成術、どちらが適した治療法であるかは、患部の状況により判断します。

表皮より進行している場合

ボーエン病の症状が進行しているときは、病変を切除して修復することに加え、リンパ節郭清術(癌細胞の周辺にあるリンパ節を切除する)を組み合わせて治療する場合もあります。

また、患部の状況に応じて、放射線治療や抗癌剤の投与のほかに、レーザー焼灼や冷凍凝固療法などを考慮して治療を行います。

ボーエン病になりやすい人・予防の方法

ボーエン病の受診時の平均年齢は75.2歳で、高齢者に多く発症する病気です。
特に、70歳以上の方は、皮膚に異変がないか日頃からチェックすることが大切です。

赤みや斑点、かさぶたなどが見られた場合は、早期に皮膚科の受診を検討してください。

高齢者は皮膚の再生能力が低下しているため、病気の進行が早い場合もあります。
早期発見が病気の進行を防ぎ、治療の選択肢を広げるため、定期的な皮膚のチェックが大事です。

ボーエン病の予防には、日焼け対策が不可欠です。

紫外線を避けるために、外出時は日焼け止めをしっかり塗り、長袖や長ズボン、帽子を着用しましょう。
特に、顔や首、手などの露出部位は紫外線を浴びやすいため注意が必要です。

ただし、ボーエン病を発症する原因は紫外線だけではないこともあり、下肢や体幹に発生する場合もあります。
これらの部位に対しては、原因が不明のため効果的な予防策はありませんが、規則正しい生活やバランスの取れた食事などで免疫力を保つことが予防につながるかもしれません。

また、井戸水を飲用している方は、定期的に水質検査を受けることで、ヒ素の摂取リスクを減らせます。


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