

監修医師:
五藤 良将(医師)
プロフィールをもっと見る
防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
目次 -INDEX-
酒さ様皮膚炎の概要
酒さ様皮膚炎(rosacea-like dermatitis induced by topical corticosteroids)は一般的な酒さと症状が似ているため混同されることが多いですが、異なる原因によって引き起こされる皮膚炎のことです。顔面に赤みやニキビのような発疹が現れる慢性炎症性皮膚疾患で、特にステロイド外用薬の長期間使用が原因となることが多くあります。顔面の赤みやほてり、ヒリヒリ感が主な症状であり、病状が進行すると毛細血管の拡張やニキビ様の発疹も見られるようになります。この疾患は、特に女性に多く見られ、生活の質に多く影響することがあります。酒さ様皮膚炎の原因
酒さ様皮膚炎の主な原因は、長期間のステロイド外用薬やタクロリムスなどの免疫抑制剤の使用です。これらの薬剤が皮膚のバリア機能を低下させ、炎症を引き起こします。 また、症状の悪化には以下の要因も関与することがあります。- 遺伝的要因 家族に酒さ様皮膚炎の患者さんがいる場合、発症リスクが高まります。遺伝的な素因が関与していると考えられます。
- 環境要因 紫外線や極端な温度変化、風、乾燥などの環境要因が酒さ様皮膚炎を引き起こすことがあります。
- 化学物質 化粧品、洗剤、特定の薬剤に含まれる刺激物が皮膚にダメージを与え、酒さ様皮膚炎を誘発することがあります。
- 生活習慣 ストレスや不適切な食生活(アルコール、香辛料などの摂取)が酒さ様皮膚炎の発症に関与している場合があります。
酒さ様皮膚炎の前兆や初期症状について
酒さ様皮膚炎の前兆や初期症状には以下のようなものがあります。顔面の赤み
特に頬、鼻、額に赤みが現れ、持続的に続くことが多い傾向です。これは初期段階で顕著な症状です。ほてり
温度変化やストレス、アルコール摂取などによって引き起こされる顔面のほてりも初期症状の一つです。ほてりは一過性であることが多いですが、頻繁に起こる場合は酒さ様皮膚炎の進行を示唆します。ヒリヒリ感
洗顔後やスキンケア製品の使用後に感じることが多く、皮膚のバリア機能が低下していることを示しています。大変不快な症状で、生活に支障をきたす可能性があります。ニキビ様の発疹
顔面の中心部にニキビに似た丘疹や膿疱が現れることが多い傾向です。これらの発疹は、酒さと同様に赤みを伴いますが、黒ずみや白ずみは見られません。毛細血管拡張
顔面の皮膚に細い血管が目立つようになります。これは毛細血管の拡張によるもので、特に頬や鼻の周りに見られることが多いようです。 酒さ様皮膚炎の症状が現れた場合、皮膚科を受診することが推奨されます。他の病気と症状が混同しやすいため、適切な診断や治療の選択をすることが必要です。酒さ様皮膚炎の検査・診断
酒さ様皮膚炎の診断は、臨床症状と患者さんの病歴に基づいて行われます。具体的には以下の方法が用いられます。臨床症状の観察
酒さ様皮膚炎の典型的な症状(顔面の赤み、ほてり、ヒリヒリ感、ニキビ様の発疹、毛細血管拡張)を確認します。これらの症状の組み合わせが診断の重要な手掛かりとなります。病歴の確認
ステロイド外用薬や免疫抑制剤の使用歴、家族歴、環境要因の特定などを行います。詳細な病歴の聴取により、酒さ様皮膚炎のリスク要因を特定します。皮膚生検
必要に応じて、皮膚の一部を取り、生検を行うことで、他の皮膚疾患との鑑別診断を行います。皮膚生検は、組織学的な特徴を明らかにするために重要です。血液検査
免疫系の異常や感染症の有無を確認し、酒さ様皮膚炎以外の原因を排除します。血液検査は、全身的な健康状態を評価するためにも有用です。酒さ様皮膚炎の治療
酒さ様皮膚炎の治療には以下の方法が用いられます。薬物療法
- 外用薬 メトロニダゾールやアゼライン酸などの外用薬が使用されます。これらの薬は、皮膚の炎症を抑え、赤みや発疹を改善します。外用薬は、酒さ様皮膚炎の初期段階や軽症例に対して特に効果的です。
- 内服薬 重症例や外用薬で効果が見られない場合には、抗生物質(ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど)やイソトレチノインが使用されることがあります。これらの薬剤は、皮膚の深部で炎症を抑制し、症状の改善を図ります。※イソトレチノインは日本では未承認であり、使用にあたっては医師の判断と十分な説明が必要です。
スキンケア
- 低刺激性の洗顔料 肌に優しい成分の洗顔料を使用し、機械的な刺激を避けることが推奨されます。洗顔時には、たっぷりの泡で優しく手のひらで洗い、ぬるま湯で十分にすすぐことが重要です。
- 保湿 刺激を感じない保湿力の高い保湿剤を使用し、皮膚のバリア機能を回復させます。保湿剤は、肌に優しく、抗炎症作用のある成分を含むものが望ましいです。
- 紫外線対策 日焼け止めを使用し、紫外線から肌を保護します。日常的な外出時にはSPF30程度、炎天下での活動時にはSPF50以上の日焼け止めを使用し、こまめに塗り直すことが推奨されます。
生活習慣の改善
- 食事の見直し 香辛料やアルコール、熱い飲み物を控えることが重要です。これらの食品は、血管を拡張させ、酒さ様皮膚炎の症状を悪化させる可能性があります。
- ストレス管理 ヨガや瞑想、深呼吸などのリラクゼーション法を取り入れ、ストレスを軽減します。ストレスは、酒さ様皮膚炎の症状を悪化させる要因の一つです。
酒さ様皮膚炎になりやすい人・予防の方法
酒さ様皮膚炎になりやすい人には以下の特徴があります。- 遺伝的要因 家族に酒さ様皮膚炎の患者さんがいる場合、発症リスクが高まります。遺伝的な素因が関与していると考えられます。
- ステロイド外用薬の長期使用 長期間ステロイド外用薬を使用している人はリスクが高いです。ステロイド薬の使用は、皮膚のバリア機能を低下させ、炎症を引き起こします。
- 敏感肌 敏感肌の人は外部刺激に対する反応が強く、発症しやすい傾向があります。




