

監修医師:
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)
チアノーゼの概要
チアノーゼは、皮膚や粘膜が青紫色に変色する症状で、血液中の酸素が不足している状態です。通常、酸素が十分に供給されている血液は明るい赤色をしており、これが皮膚や粘膜を介して健康的なピンク色になります。しかし、酸素が不足すると血液は暗赤色になり、皮膚や粘膜が青紫色になってしまいます。その他にも、心臓や肺の問題、血液の循環障害など、さまざまな原因で引き起こされます。結果、身体全体の酸素供給が不十分になっている判断材料になるのです。
チアノーゼは、中央性チアノーゼと末梢性チアノーゼの2種類に分類されます。中央性チアノーゼは、酸素の吸収が不十分な場合に発生し、口唇や舌、顔全体が青紫色になります。一方、末梢性チアノーゼは、血液の循環が不十分な場合に発生し、手足や指先が青紫色になる点が特徴です。どちらも、基礎疾患が原因で発生するため、その原因を特定し治療する必要があります。
チアノーゼは単独の症状で現れる場合と、他の症状と一緒に現れる場合があります。具体的には、息切れや胸の痛み、意識の低下などと併発する可能性があり、これらの症状が見られる場合は、すぐに医師の診察を受けた方がよいです。。
チアノーゼの原因
チアノーゼの原因は主に心臓、肺、および血液の循環などの問題が挙げられます。この章ではチアノーゼの原因を、部位別に説明します。
心臓
先天性心疾患や心不全など、心臓の疾患が原因でチアノーゼが生じる可能性があります。これらの状態は、血液の酸素化が不十分となり、手足や指先などにチアノーゼが生じます。例えば、先天性心疾患の一つであるファロー四徴症は、血液が正常に酸素化されず、青紫色の皮膚になるのが特徴です。
肺
慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺炎、肺水腫などが、チアノーゼの原因である可能性もあります。上記の疾患は、肺が酸素を十分に吸収できない状態であり、血液中の酸素濃度が低下してチアノーゼが発生します。特に、COPD患者さんは慢性的に酸素不足に陥っており、日常的にチアノーゼが見られることが多いです。
血液の循環
末梢血管疾患や静脈血栓症などが原因で、チアノーゼが見られるケースもあります。末梢血管疾患では毛細血管まで血液が行き渡らず、手足や指先に十分に供給されないことで生じるのが末梢性チアノーゼです。また、静脈血栓症では、血栓が血管を塞ぐことで血流を阻害し、血液の循環悪化によって、チアノーゼが生じます。
中毒や代謝障害
中毒症や代謝障害もチアノーゼの原因です。例えば、一酸化炭素中毒は、酸素が血液に正常に結合できなくなるため、急速にチアノーゼが進行します。薬剤が原因となるメトヘモグロビン血症などの代謝障害も同様で、血液の酸素運搬能力が低下し、チアノーゼを引き起こします。
チアノーゼの前兆や初期症状について
末梢冷感・息切れ
チアノーゼの前兆や初期症状の確認は、早期の治療のために非常に重要です。前兆としては、冷え性や指先の冷感などが挙げられます。血液循環の悪化で生じ、息切れや呼吸困難感など併発する点が特徴です。酸素不足により、呼吸が速く、浅くなると十分に酸素を取り込めなくなります。その結果、身体が疲れやすくなり、日常生活においても体力が低下します
心拍数の変化
心拍数の変化もチアノーゼの前兆として現れます。酸素不足になると、心臓は酸素を全身に供給しようと過剰に働き、心拍数が増加します。このような状態が続くと、心臓に負担がかかり、心不全を引き起こしかねません。
皮膚や粘膜の変色
一般的な初期症状として、皮膚や粘膜の色が変わります。手足や唇、舌が青紫色に変色が生じ、特に寒冷環境や運動後に変色することが多いです。
意識障害
意識障害も初期症状の一つです。酸素が不足することで、脳への酸素供給が減少し、頭痛やめまい、さらには意識障害が見られます。特に、高齢者や心肺機能が低下している方はリスクが高いため、注意が必要です。
このような前兆や初期症状を見逃さないことで、チアノーゼの早期治療に繋がります。もし前兆や初期症状が見られる場合は、循環器内科や内科の受診を推奨します。
チアノーゼの検査・診断
チアノーゼの検査・診断は、視診と問診が基本です。
視診
皮膚や粘膜の色を観察し、青紫色の変色が見られるかを確認します。また、問診により、症状の発現時期や持続時間、他の症状の有無を詳しく把握します。この検査はチアノーゼのタイプや進行状況を把握するために重要です。
血液ガス分析
次に、血液ガス分析が行われます。この検査では、動脈血を採取し、酸素と二酸化炭素の濃度を測定します。これにより、血液中の酸素飽和度が確認され、酸素不足の程度が明らかになります。特に、中央性チアノーゼが疑われる場合には、この検査が非常に重要です。
パルスオキシメーターでの測定
指先に装着するパルスオキシメーターを使用して、非侵襲的に酸素飽和度を測定する方法も、簡単に酸素飽和度をモニタリングできます。外来診療や救急医療の現場で広く利用されていて、迅速かつ簡便に測定できるため、初期診断に有用です。
胸部X線撮影・心電図検査
心臓や肺の異常の確認に、胸部X線撮影や心電図検査も有効です。胸部X線撮影では、肺の状態や心臓の大きさ、形状を確認し、肺炎や心不全などの異常を検出します。心電図検査では、心臓の電気的活動を記録し、心筋梗塞や不整脈などの心疾患を診断します。
心エコー検査
場合によって行われる心エコー検査では、超音波を用いて心臓の構造や機能を詳細に観察します。この検査で心臓の弁の異常や心室の拡張、収縮不全などを確認できます。先天性心疾患が疑われる場合は、この検査が効果的です。
肺機能検査
肺機能検査もチアノーゼの診断に役立ちます。この検査は、肺の容量や気流の速度を測定し、COPDや喘息などの肺疾患を評価します。肺の換気能力が低下している場合、酸素の取り込みが不十分となり、チアノーゼになる可能性があります。
血液検査
必要に応じて血液検査も行われます。ヘモグロビン濃度や赤血球の数を測定し、貧血の有無を確認します。貧血が原因で酸素運搬能力が低下している場合、チアノーゼが見られます。一部の中毒症状や代謝異常を特定するための特異的な血液検査も行います。
チアノーゼの治療
チアノーゼの治療は、原因によって変化します。
酸素療法
酸素不足が直接の原因である場合には、酸素療法が行われます。酸素マスクや鼻カニューレを使用して酸素を直接供給し、血液中の酸素濃度を上昇させます。これにより、チアノーゼの症状が緩和されます。
薬物療法
例えば、心不全の患者さんには、利尿薬や血管拡張薬、β遮断薬などが処方されます。これらの薬物療法で、心臓の負担を軽減し、血液の循環を改善します。肺が原因の問題がある場合は、肺疾患の治療が中心となります。COPDや喘息の患者さんには、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬が使用されます。これにより、気道の炎症を抑え、呼吸を改善します。また、重症の肺炎や肺水腫の場合は、入院治療が必要となり、抗生物質や利尿薬が投与されます。
外科的手術
心臓手術が必要となることもあります。先天性心疾患の場合は、外科的修正手術が行われることが多いです。
血栓溶解療法・抗凝固療法
血液循環に問題がある場合は、血栓溶解療法や抗凝固療法が行われます。血栓症の患者さんには、ヘパリンやワルファリンなどの抗凝固薬が処方され、血栓の形成を防ぎます。また、血栓が既に形成されている場合は、血栓溶解薬を用いて血栓を溶解します。これにより、血液の流れが改善され、チアノーゼの症状が軽減されます。
高濃度酸素療法・高圧酸素療法
さらに、中毒や代謝異常が原因の場合は、特異的な解毒療法や代謝補充療法が行われます。一酸化炭素中毒の場合は、高濃度酸素療法や高圧酸素療法が適用され、血液中の一酸化炭素を迅速に除去します。メトヘモグロビン血症の場合は、メチレンブルーの投与が行われ、正常なヘモグロビンへの変換を促進します。
チアノーゼになりやすい人・予防の方法
チアノーゼになりやすい人の特徴(心疾患・肺疾患)
チアノーゼになりやすい人は、いくつかの共通した特徴があります。心疾患や肺疾患を持つ患者さんは、チアノーゼを発症するリスクが高いです。他にも、慢性心不全やCOPD、喘息などの既往歴がある方が、酸素供給の障害が起こりやすいです。。定期的な医療チェックを受けることが推奨されます。
チアノーゼになりやすい人の特徴(寒冷環境での作業が多い人)
寒冷環境に長時間さらされることも、チアノーゼのリスクをあげます。寒冷刺激で、血管が収縮し、末梢の血液循環が悪化し、手足や指先が青紫色に変色します。寒冷地で生活する人や寒冷環境での作業が多い人は、適切な防寒対策を講じることが重要です。
予防方法(生活習慣の改善)
予防方法は、1つ目に基本的な健康管理が挙げられます。バランスの取れた食事、適度な運動を心がけて、心肺機能を維持し、全身の血液循環を良好に保てます。また、喫煙は肺機能を低下させ、酸素供給に影響を与えるため、チアノーゼのリスクを高めます。
予防方法(感染症に対する予防接種)
肺炎やインフルエンザなどの感染症も、肺の機能を低下させ、酸素不足を引き起こします。予防接種を受け、手洗いやうがいなどの基本的な衛生対策を徹底することが大切です。
予防方法(ストレス管理)
最後に、ストレス管理も重要な予防策です。過度のストレスは、心拍数や呼吸数に影響を与え、酸素供給を妨げることがあります。リラックスする時間を持ち、ストレスを適切に発散することが、健康維持につながります。
心肺機能に不安がある方は、専門医の診察を受け、必要な検査を行うことが重要です。早期に異常を発見し、適切な治療を行うことで、チアノーゼの発症を防ぐことができます。早めの対策と継続的なケアを心がけましょう。
関連する病気
- 先天性心疾患
- 呼吸不全
- 肺水腫
参考文献




