目次 -INDEX-

汗疱
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

プロフィールをもっと見る
防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

汗疱の概要

汗疱(かんぽう)とは、手のひらや足の裏に小さな水ぶくれが発生する皮膚疾患です。多量の汗を原因とすることがほとんどで、汗による皮膚疾患を総称して、異汗性湿疹といいます。 いわゆる汗疹(あせも)も異汗性湿疹の一種で、汗疱は手のひらや足の裏にできる汗疹です。感染性の疾患ではないため、他人にうつることはありません。 汗をかきやすくなる春~夏にかけて多く見られ、ほとんどは2~3週間で自然治癒しますが、まれに皮膚のかぶれがひどくなって治療を必要とする場合があります。

汗疱の原因

汗疱は多量の汗によって起こると考えられていますが、その他の原因も指摘されており、明確にはわかっていません。汗疱の主な原因と考えられているのは、以下の3つです。

  • 汗の詰まり
  • 金属アレルギー
  • 薬の副作用
それぞれの原因を確認しましょう。

汗の詰まり

汗疱は多量の汗をかいた際に発症することがほとんどで、汗腺が詰まって汗が正常に流れないことが原因と考えられています。通常であれば、汗腺でつくられた汗が汗管を通って流れていきますが、皮脂汚れやほこりが溜まることで詰まってしまうことがあります。詰まった汗は行き場を失い、皮膚に滞留して水ぶくれとなるのが汗疱です。多量の汗とともに体内のミネラルや老廃物が排出されると、汗の詰まりを起こしやすくなります。

金属アレルギー

汗疱は、金属アレルギーによって起こる場合もあるといわれています。アクセサリーや歯科金属をつけると、汗や体液によって徐々に溶け出した金属が体内に吸収され、金属アレルギーの人は肌や粘膜に炎症が起こります。体内に吸収された金属が汗によって皮膚から排出される際、炎症を起こして汗疱となる場合も少なくありません。重度の金属アレルギーの場合はすぐに気が付きますが、汗疱程度の症状だと気が付かない場合もあります。

薬の副作用

医薬品の副作用によって起こる皮膚の疾患を、薬疹(やくしん)といいます。一部の医薬品では、副作用として汗疱が報告されており、医薬品を使った直後に汗疱を生じた場合は薬疹を疑います。自己免疫疾患の治療などに用いられる免疫グロブリン療法では、0.1~5%未満の頻度で汗疱が生じるとされており、使用前には医師から十分な説明を受けてください。薬の副作用によって生じた汗疱は、ほとんどの場合薬の使用を止めれば自然治癒します。

汗疱の前兆や初期症状について

汗疱は手のひらや足の裏にできる皮膚疾患であるため、患者さん自身での発見が容易です。以下のような症状がある場合には、早めに対処すれば治りも早くなるでしょう。

  • 手足の水ぶくれ
  • 皮膚のかゆみ
  • 皮膚のただれ
以下が詳細です。心当たりがある場合には、皮膚科を受診しましょう。

手足の水ぶくれ

汗疱の主な症状は、手のひらや足の裏にできる水ぶくれです。直径1~2mmの小さな水ぶくれが連続してでき、複数の水ぶくれがつながって大きな水ぶくれになることもあります。水ぶくれが破れると、痛みを伴う湿疹となります。

皮膚のかゆみ

汗疱ができた部分は、軽度のかゆみを伴うことがほとんどです。引っ掻いてしまうと汗疱が破れやすくなるため、できるだけかかずに保護しましょう。かゆみを伴う水ぶくれは虫刺されでも起こることがありますが、汗疱は小さな水ぶくれが複数できるのが特徴です。

皮膚のただれ

汗疱が進行して水ぶくれが破れると、皮膚のただれによって強い痛みが生じます。ただれた部分は細菌に感染しやすく、化膿する場合も少なくありません。軽度のただれであれば、時間の経過とともに患部が乾燥して自然治癒します。汗疱が自然治癒する際には、古い皮膚がうろこのように剥がれ落ちる鱗屑(りんせつ)が見られます。

汗疱の検査・診断

汗疱の診断は、主に皮膚科医師による視診によって行います。汗疱と似た症状のほかの病気もあり、鑑別のために詳しい検査を行うこともあります。汗疱の診断でポイントとなるのは、以下の3点です。

  • 手のひらの水ぶくれ
  • 水虫(白癬)との鑑別
  • 掌蹠膿疱症との鑑別
こちらの内容を確認しましょう。

手のひらの水ぶくれ

手のひらや足の裏に複数の水ぶくれがあり、ボロボロと鱗屑が落ちる場合には汗疱と診断されることがほとんどです。汗をかきやすい体質で、汗の量が増える時期には汗疱の可能性が高いでしょう。汗をかく量が少ないのに汗疱のような症状がある場合は、金属アレルギー検査などを行います。

水虫(白癬)との鑑別

足の裏にできる汗疱は、いわゆる水虫(白癬)と症状が似ており、視診だけでは鑑別できません。水虫は真菌の感染によって起こる病気で、汗疱のような水ぶくれと鱗屑が見られ、強いかゆみを伴います。水虫が疑われる場合には、顕微鏡検査や血液検査で真菌の有無を確認します。

掌蹠膿疱症との鑑別

手のひらに膿を伴う水ぶくれができる病気を、掌蹠膿疱症といいます。軽度の掌蹠膿疱症は、症状が汗疱と似ており、視診だけで鑑別はできません。重い掌蹠膿疱症では膿によって水ぶくれが黄色くなるため、汗疱とは明らかな違いがあります。掌蹠膿疱症の原因は不明ですが、金属アレルギーや内臓の疾患が関与しているといわれています。汗疱は2~3週間で自然治癒しますが、掌蹠膿疱症は数年に渡って症状が続くのが特徴です。

汗疱の治療

汗疱が生じたら、引っ掻いたり破いたりせずに患部を保護しましょう。汗疱の主な治療法は、以下の3つです。

  • 経過観察
  • 保湿剤
  • ステロイド外用薬・抗ヒスタミン薬
それぞれ以下の内容を確認しましょう。

経過観察

軽度の汗疱はほとんどが2~3週間で自然治癒するため、特に治療はせずに経過観察となります。水ぶくれが自然に消退し、膨れていた皮膚が鱗屑となってボロボロと剥がれ落ちていきます。

保湿剤

汗疱が生じた皮膚は固くなっているため、保湿剤でやわらかくして汗の排出を促します。鱗屑がボロボロ落ちるときにも、皮膚の回復を促すために保湿を心がけましょう。皮膚科で処方される保湿剤のほか、市販のハンドクリームなども使用できます。

ステロイド外用薬・抗ヒスタミン薬

汗疱が悪化して炎症を起こしている場合は、ステロイド薬を用いて炎症を抑えます。かゆみがひどい場合には、抗ヒスタミン薬でかゆみを抑えるなどの対処が必要です。外用薬は皮膚科医師の判断によって処方されるため、汗疱が悪化してきたら早めに受診しましょう。

汗疱になりやすい人・予防の方法

汗疱はほとんどの場合自然治癒しますが、原因が取り除かれていない場合は再発を繰り返します。汗疱になりやすい特徴がある方は、予防を心がけましょう。汗疱を予防する主な方法は、以下の3つです。

  • 汗はこまめに拭く
  • 水仕事や土仕事は手袋を着用する
  • 金属アレルギー検査を行う
以下が詳細です。

汗はこまめに拭く

汗疱は大量の汗による汗腺の詰まりが原因の一つであるため、汗をかいたときはこまめに拭くようにしましょう。汗そのものよりも、汗と一緒に流れる皮脂やほこりが汗腺を詰まらせますので、手足を清潔に保つことが大切です。足に汗疱ができやすい方は、定期的に靴を脱いで湿気を逃がしましょう。

水仕事や土仕事は手袋を着用する

水や土を扱う仕事の方は、手の皮膚が荒れやすく汗疱などが生じやすくなります。手を清潔に保つことは重要ですが、洗い過ぎも皮膚の負担となって症状が悪化することが少なくありません。作業の際には手袋を着用するなどして、手の皮膚を保護しましょう。

金属アレルギー検査を行う

汗をかいていないのに汗疱が頻発する場合は、金属アレルギー検査を行いましょう。皮膚科医院では、専用の検査薬を背中や腕に貼り付けるパッチテストで金属アレルギー検査ができます。歯科治療後に金属の詰め物がある場合は、除去して非金属の詰め物に交換する場合もあります。

関連する病気

この記事の監修医師