監修医師:
高藤 円香(医師)
円形脱毛症の概要
円形脱毛症は、円形や楕円形の脱毛斑が突然生じる病気です。脱毛症状は頭部だけでなく、眉毛や体毛など毛髪が存在するあらゆる部位に発生します。
頭部の脱毛は、単発型・多発型・全頭型・蛇行型に分類され、経過はさまざまです。1年以内に毛髪の回復がみられるケースもありますが、再発する例も少なくありません。多発型や全頭型は治療が長期にわたります。頭部に加えて体毛すべての毛が脱毛するものを汎発型といい、円形脱毛症のなかでも重度のタイプで慢性的な治療が必要です。
円形脱毛症の原因は、頭髪の産生に関わる毛包組織に対する自己免疫疾患と考えられていますが、具体的には解明されていません。遺伝の関与やアトピー性疾患との合併が高いと考えられています。その他、橋本病に代表される甲状腺疾患・尋常性白斑・全身性エリテマトーデス・関節リウマチなどの自己免疫疾患の合併が知られています。
男女差はなく全年齢層に出現する可能性があり、15歳以下の発症が全体の1/4と、子どもの発症も少なくありません。見た目に関わる症状があり、治療に時間がかかるため、なにより精神的苦痛が大きく生活の質にも影響する病気です。
円形脱毛症の原因
円形脱毛症の原因は不明ですが、いくつかの説が考えられています。
自己免疫疾患
近年有力視されている原因は、自己免疫疾患です。本来は身体を守ってくれる役割を果たす免疫に異常が発生し、身体が自分の毛髪を異物だと認識して毛包を攻撃するため、脱毛を引き起こします。詳しいメカニズムはわかっていません。
遺伝
円形脱毛症は遺伝的な要素もあると考えられています。円形脱毛症の約8%に血縁関係の人が同じく発症しており、関係が近い程、発症率が高くなるといわれています。
アトピー素因
円形脱毛症の発症には、アトピー素因が関与すると考えられています。円形脱毛症の患者さんは、アトピー性疾患を合併するケースが少なくありません。また、アトピー性皮膚炎の方が円形脱毛症を発症した場合は症状が重篤な傾向があるとの報告があり、アトピー素因は治療効果や予後にまで関与する可能性があります。
ストレス
ストレスは、円形脱毛症が起こりやすい状態を作り出す間接的な要因と考えられています。過度な精神的ストレスは、円形脱毛症の原因として有力視される自己免疫疾患の引き金になり得ます。
円形脱毛症の前兆や初期症状について
脱毛前に軽い痒み・違和感・赤みがみられることがあります。しかし、前兆がない場合が大半で一気に毛髪が抜け落ち、頭部だけでなく毛髪があるあらゆる部位に類円形の脱毛斑が生じます。
脱毛症状はさまざまですが、活動期には病巣内外に切断毛・毛包内黒点・容易に抜ける病毛がみられるのが特徴です。痛みなどの症状が伴わないため、自分で気付かないケースも少なくありません。その他、爪の甲に小さな点状陥凹がみられるのも特徴です。
気になる症状がみられたら、早めに皮膚科を受診しましょう。
円形脱毛症の検査・診断
円形脱毛症の診断は、主に問診・視診・合併症の検査を行います。
脱毛症状の経過・治療歴・家族歴・既往歴・合併症などの確認は重要です。視診では、ライトがついた拡大鏡(ダーモスコピー)を用い、抜けた毛の根元を観察し診断と病期を判定します。また、脱毛斑がない部位の頭髪を引っ張る牽引試験(pull test)で抜け毛の有無を確認します。ほとんどの場合は、視診で診断が可能です。ほかの疾患と区別がつきにくい場合は、皮膚生検を行い、病変部皮膚を顕微鏡で詳しく観察します。
甲状腺疾患・全身性エリテマトーデス・関節リウマチなどの自己免疫疾患、アトピー性疾患などの合併症の有無を確認するため、血液検査を行う場合があります。
円形脱毛症の治療
ドライアイの治療は、眼表面の涙液と眼表面の上皮を層別に治療するTFOT(Tear Film Oriented Therapy)の考えのもとで行われます。
眼鏡やゴーグルの装着は、涙液の蒸発を抑制する簡便な方法で、点眼液や涙点プラグは装着の煩わしさをなくして涙液を留めることが可能です。
円形脱毛症の治療法はまだ確立されていませんが、推奨される治療には以下の方法があります。
局所免疫療法
脱毛斑に、人工的にかぶれを起こす薬剤を塗って発毛を促す治療法です。年齢を問わず、多発型・全頭型・汎発型の症例の第一選択として行う治療法で、有効なら2~3ヵ月で発毛がみられる効果的な治療法のひとつです。湿疹やアトピー性皮膚炎の症状がある患者さんの場合、症状が悪化する恐れがあるため慎重に検討する必要があります。保険適用外の治療です。
ステロイド局所注射療法
脱毛斑に炎症や免疫機能を抑える効果のあるステロイドを注射で注入する治療法です。症状が改善しない単発型および多発型の成人患者さんに対して行います。高い水準の発毛効果が期待される治療法ですが、ステロイドの副作用を考慮し、子どもに対しては行いません。注射時に強い痛みを伴う・副作用として注射部位が陥没する場合があるため注意が必要です。
外用療法
円形脱毛症に使用する外用薬には、ステロイド・カルプロ二ウム塩化物・ミノキシジル外用薬があります。ステロイド外用薬は、皮膚の炎症や免疫機能を抑える効果が期待されるため、円形脱毛症の治療薬として使用されている有効性が確かめられた治療法です。単発型から融合傾向のない多発型の円形脱毛症に推奨されます。長期使用により皮膚の萎縮・血管拡張・陥没をきたすことがあるので注意が必要です。カルプロニウム塩化物外用薬・ミノキシジル外用薬は、血管を拡張する効果があり発毛効果が認められている薬で、単発型および多発型の症例に併用療法で使用します。AGAと円形脱毛症の両方を発症している患者さんにも使われる外用薬です。
内服療法
円形脱毛症の内服薬には、ステロイド薬・抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬・JAK阻害薬などがあります。急激な進行の場合、炎症や免疫機能を抑える効果があるステロイド内服薬を使用します。高い効果が実証されていますが、内服をやめた後に脱毛が再発するケースが少なくありません。子どもには使用せず、脱毛が広範囲に広がった成人の患者さんに用いられます。花粉症などのアレルギー症状を緩和する抗ヒスタミン薬は、アトピー素因を持った単発型および多発型の患者さんに効果が期待できる薬です。脱毛範囲の縮小が認められています。初期症状や軽症の場合は、アレルギーを抑制する薬を服用します。JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬は、重症の円形脱毛症治療用の新しい内服薬です。自己免疫の作用によるリンパ球の毛包への攻撃を抑える薬剤で、毛穴を攻撃している免疫反応を取り除き発毛を促します。2022年6月より保険適用となり、15歳以上で頭部全体の50%以上の毛髪が脱毛し、6ヵ月以上発毛がみられない重症円形脱毛症の患者さんが治療の対象です。
冷却療法
ドライアイスや液体窒素などを脱毛斑にあて、誤作動を起こした免疫細胞の働きを抑えて、毛髪の再生を図る治療法です。治療の際、軽い痛みがありますが簡便で副作用が少ない方法で、進行型の症状に対して行います。保険適用外の治療です。
紫外線療法
紫外線を照射する治療法で症状固定期の全頭型や汎発型の成人患者さんに行います。
スーパーライザー療法
スーパーライザーと呼ばれる装置を使用し、皮膚の奥まで届く特殊な赤外線を脱毛斑に照射する治療法です。簡単に治療を受けられ、副作用も軽いのが特徴です。単発型および多発型の患者さんに行います。
ステロイドパルス療法
点滴でステロイドを3日間程の短期間で大量投与する治療法です。発症後6ヵ月以内の成人患者さんで、急速に進行する重症例に有効な治療法です。子どもには成長障害が生じる可能性があるため行いません。
かつらの使用
多発型・全頭型・汎発型の患者さんに、かつらの使用が推奨されています。直接的な治療効果はありませんが、紫外線や物理的な衝撃から頭皮を守るとともに、情緒を安定させQOLの向上に効果が期待されます。
円形脱毛症になりやすい人・予防の方法
円形脱毛症は、発症の原因が解明されていない病気ですが、自己免疫疾患・遺伝的な素因・アトピー素因が関係しているといわれています。
家族に円形脱毛症の人がいる・自身がアトピー性疾患に羅患している・家族がアトピー性疾患に羅患している人は、円形脱毛症になりやすいです。また、ストレスや疲労は自己免疫疾患を起こすきっかけになるため、精神的なストレスを受けている・疲労が溜まっている人も円形脱毛症を発症しやすい傾向にあります。
円形脱毛症を予防するには、普段から以下の生活を意識して、心身のストレスへの対策が必要です。
- ストレスを溜めない
- 運動習慣を身につける
- 十分な休息をとる
- 栄養バランスの整った食事をとる
ストレスと関連する不調を予防するには、ストレスへの抵抗力をつけることです。食事・運動・休息などバランスのよい生活を心がけるなど、日頃から体調管理に気を配りましょう。
円形脱毛症は自然治癒する場合もあります。症状が強い・見た目が気になる場合は早めに専門の医師を受診しましょう。
参考文献