

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
目次 -INDEX-
ダニアレルギーの概要
ダニアレルギーとは、家庭内に潜むダニのフンや死骸が原因となって発症するアレルギー性疾患です。
空気中に浮遊するこれらの微細な物質が目や皮膚に触れたり、吸い込んだりすることで身体の免疫機能が過剰に反応し、さまざまな症状を引き起こします。
ダニアレルギーは通年性アレルギーに分類され、一年を通して症状が出る可能性のある疾患です。特に、ダニの死骸やフンが増える秋頃に症状が悪化しやすい傾向があります。
ダニアレルギーの原因
ダニアレルギーの主な原因は、ヤケヒョウダニやコナヒョウダニなどの家庭内に潜むダニです。これらは高温多湿の環境を好み、特に夏に繁殖し秋に死骸やフンが増加します。また、ダニは人のフケや角質片、カビ、ホコリなどをエサにして増殖します。そのため、生活環境が発症リスクに大きな影響を及ぼします。
ダニアレルギーの前兆や初期症状について
ダニアレルギーによって引き起こされる症状はさまざまですが、大きく分けると以下のような疾患として現れます。
アレルギー性鼻炎
アレルゲンが鼻粘膜に付着し、炎症を起こします。主な症状として、サラサラとした水様性の鼻水やくしゃみ、鼻づまりがあります。
アレルギー性結膜炎
アレルゲンが目の粘膜に付着して炎症を起こします。主な症状として、目のかゆみや充血、目やに(眼脂)、目の異物感があります。
アトピー性皮膚炎
強い痒みのある湿疹が特徴で、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚疾患です。症状は顔や首、肘や膝の内側などに多くみられます。
気管支喘息
気道に炎症が起こり狭くなることで、繰り返す咳や喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューとした呼吸)、呼吸困難などの症状が現れます。
アナフィラキシー
アレルゲンへの曝露後、数分から1時間以内に全身性の発疹や粘膜浮腫、呼吸困難などの症状が現れます。アナフィラキシーは重篤化すると血圧低下や、意識消失などのショック状態になる可能性があり、すぐに治療が必要な疾患です。
粉製品に混入したダニを摂取したことによって、アナフィラキシーが発生した事例が国内外で報告されています。
ダニアレルギーが疑われる場合に受診すべき診療科は、症状や目的によって異なります。以下の表を参考にして受診することをおすすめします。
| 診療科 | 症状や目的 |
|---|---|
| アレルギー科 | 全般的なアレルギーの診断・治療 |
| 耳鼻咽喉科 | 鼻汁や咳などの上気道症状 |
| 皮膚科 | 湿疹やかゆみなどの皮膚症状 |
| 呼吸器内科 | 咳が続く、息苦しいなどの喘息症状 |
| 眼科 | 目のかゆみ、涙、異物感などの症状 |
また、重度の呼吸困難や意識が朦朧とする、じんましんが全身に広がるといった症状が現れた場合はアナフィラキシーを発症している可能性があります。すぐに医療機関を受診してください。
ダニアレルギーの検査・診断
ダニアレルギーが疑われる場合、医療機関ではいくつかの検査が行われます。主に血液検査と皮膚テストが中心となります。
血液検査(血中アレルゲン特異的IgE抗体検査)
血液検査では、血液中に含まれるIgE抗体の量を測定します。IgE抗体は、体内にアレルゲン(ダニなど)が侵入すると過剰に反応するタンパク質の一種です。IgE抗体がアレルゲンに反応すると、ヒスタミンやロイコトリエンといった化学物質を放出し、アレルギー症状を引き起こします。
血液検査で特定のアレルゲンに対するIgE抗体の量を測定し、アレルギーの原因を突き止めます。
皮膚テスト
皮膚テストは、アレルゲンを皮膚に少量接触させて反応を見ることで、アレルギーの有無を判定する検査です。
皮膚テストは、迅速に結果が得られ、感度がより高いという特徴があります。その一方で、アナフィラキシーが誘発されるリスクもあるため、症状や体調によっては血液検査を優先して行う場合があります。
皮膚テストにはプリックテスト、スクラッチテスト、皮内テストの3種類があります。スクラッチテストや皮内テストは、プリックテストが陰性だった場合に補助的に行います。
プリックテスト
プリックテストでは、専用の針を使用して前腕の皮膚を軽く刺し、アレルゲンを皮膚に浸透させます。15〜20分後に出現した膨疹(皮膚が赤く盛り上がっている状態)の大きさを測定してアレルギーの有無を判定します。
スクラッチテスト
スクラッチテストでは、前腕や背部の皮膚に細い針で線状の傷をつけ、少量のアレルゲン溶液を滴下します。15分~20分後に膨疹の大きさを測定して、判定します。
皮内テスト
皮内テストでは、アレルゲンを皮内に注入して反応をみる検査です。
皮内テストは、皮膚テストのなかでもより高感度にアレルゲンを検出できる検査です。その一方で、アナフィラキシーショックを誘発するリスクも高くなるため、ショックに対応できる環境を整えて、慎重に行う必要があります。
症状によっては、血液検査や皮膚テストのほかに呼吸機能検査や鼻汁検査、涙液検査などの追加検査が行われる場合もあります。
ダニアレルギーの治療
ダニアレルギーの治療方法は、大きく次の4つに分けられます。
- アレルゲンの除去(環境整備)
- 薬物療法
- 舌下免疫療法
- 皮下免疫療法
それぞれの治療法について、詳しくみていきましょう。
アレルゲンの除去(環境整備)
アレルギーの治療では、まず原因となる抗原を取り除くことが基本です。
ダニアレルギーの場合は、抗原であるダニを身の回りから除去することが重要です。掃除や除湿、布団の管理などの環境を整えて、ダニを除去します。
薬物療法
ダニアレルギーによる炎症をコントロールするために抗アレルギー薬や、ステロイド剤を投与します。症状に応じて内服薬や、軟膏、点鼻薬、点眼薬などを使用します。
薬物療法は対症療法であり、日常生活の質を保つために有効な治療ですが、ダニアレルギーの根本的な治療にはなりません。
舌下免疫療法
舌下免疫療法は、ダニアレルギーの根本的な改善を目的として行われます。
アレルゲンエキス(主にコナヒョウダニと、ヤケヒョウダニのエキスを含む錠剤)を毎日舌下に置き、一定時間保持してから飲み込みます。この治療を数年間続けることで、身体をアレルゲンに慣れさせ、アレルギー体質そのものを改善することが期待できます。
治療開始後、数ヶ月で効果が現れることもありますが、3年以上の継続が推奨されています。
皮下免疫療法
皮下免疫療法は、アレルゲンエキスを週に1回程度皮下に注射し、その濃度を徐々にあげていく方法です。
皮下免疫療法も、舌下免疫療法と同様にアレルギー体質を根本的に改善することを目的とした治療です。しかし注射を用いた治療であるため、通院が必要です。
ダニアレルギーになりやすい人・予防の方法
ダニアレルギーになりやすい人、予防の方法はそれぞれ以下の通りです。
ダニアレルギーになりやすい方
家族にアレルギー体質の人がいる方
アレルギー体質は遺伝的な要素が大きいとされています。両親のどちらか、または両方がアレルギー疾患を持っている場合、その子どももアレルギーを発症しやすいといわれています。
小児や10代の若年層
成長過程にある小児や若年層は、免疫システムが未発達であるため、アレルゲンに過敏に反応しやすい傾向があります。
ダニが繁殖しやすい環境で生活している方
高温多湿であったり、カーペットや布製品が多い家に住んでいたりするなど、アレルゲンであるダニが繁殖しやすい環境で生活している方も、ダニアレルギーを発症しやすいといえます。
乾燥肌の方
乾燥肌は皮膚のバリア機能が低下しており、アレルゲンが侵入しやすい状態です。そのため、乾燥肌の方はダニアレルギーを発症しやすくなります。
ダニアレルギーの予防
以下のような生活環境の改善が効果的です。
- 部屋の湿度を50%以下に保つ
- 掃除機による定期的な掃除をする(特に床や家具の裏、布団、ぬいぐるみなど)
- 寝具やカーテンのこまめな洗濯をする
- ダニ忌避スプレーやダニ捕りシートを活用する
- 抗ダニ加工された寝具を使用する
- 粉製品は冷蔵庫で保管し、開封したら早めに使いきる
生活環境からダニを減らすことが、症状の予防・緩和につながります。また乾燥肌の方の場合は、肌の保湿も効果的な対策です。
参考文献




