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慢性副鼻腔炎
林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
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眼科(角膜外来)

慢性副鼻腔炎の概要

慢性副鼻腔炎とは、副鼻腔に炎症が長期間続く疾患であり、鼻づまりや粘り気のある鼻汁、顔面の圧迫感などが主な症状として現れます。 通常、副鼻腔の炎症は風邪などで一時的に発生することがありますが、3ヶ月以上にわたって症状が持続する場合、慢性副鼻腔炎と診断されます。

この疾患は蓄膿症とも呼ばれ、副鼻腔内に膿が溜まりやすくなり、鼻の奥に膿のような分泌物がたまり、慢性的な鼻づまりや嗅覚の低下を引き起こすことがあります。慢性副鼻腔炎は、アレルギー性鼻炎や鼻中隔湾曲症と関連することが多く、治療には薬物療法や手術療法を検討します。 適切な治療を受けないと、長期間にわたり症状が持続し、日常生活に影響を与えることがあります。そのため、早期の診断と適切な治療が重要です。

慢性副鼻腔炎の原因

慢性副鼻腔炎の原因は以下のとおりです。

感染

風邪やインフルエンザなどのウイルス感染によって副鼻腔の粘膜が炎症を起こし、その後細菌感染が加わることで慢性化することがあります。特に、適切な治療が行われない場合、炎症が長引き、慢性副鼻腔炎へと移行することがあります。真菌(カビ)が原因となることもあり、免疫力が低下している方では真菌感染による副鼻腔炎が長引くことがあります。

アレルギー

アレルギー性鼻炎を持つ方は、副鼻腔の粘膜が慢性的に炎症を起こしやすく、慢性副鼻腔炎のリスクが高くなります。特に、ダニや花粉、ハウスダストなどのアレルゲンが原因で粘膜が腫れ、副鼻腔の換気が悪くなり、炎症が長引くことがあります。アレルギー反応によって分泌物が増加し、鼻づまりが悪化することで細菌感染が起こりやすくなります。

解剖学的異常

鼻中隔湾曲症(鼻の中央の仕切りが曲がっている状態)や鼻茸(ポリープ)がある場合、副鼻腔の排泄が妨げられ、慢性副鼻腔炎の発症リスクが高くなります。これらの異常により、鼻の通りが悪くなり、分泌物が副鼻腔内にたまりやすくなるため、炎症が慢性化しやすくなります。特に、鼻茸が大きくなると、鼻呼吸が困難になり、鼻づまりの症状が強くなることがあります。

環境要因と生活習慣

慢性副鼻腔炎は、喫煙や大気汚染などの環境因子によって悪化することがあります。特に、タバコの煙は鼻の粘膜を刺激し、副鼻腔の炎症を引き起こしやすくします。また、乾燥した空気や長時間の冷房・暖房の使用も、粘膜を乾燥させることで慢性副鼻腔炎の症状を悪化させることがあります。

慢性副鼻腔炎の前兆や初期症状について

慢性副鼻腔炎の症状は以下となります。

鼻づまり

慢性副鼻腔炎の代表的な症状の一つは鼻づまりです。炎症によって粘膜が腫れ、鼻の通りが悪くなり、常に鼻が詰まっている感覚が続きます。鼻づまりが悪化すると、口呼吸が習慣化し、喉の乾燥やいびきの原因になることがあります。

粘り気のある鼻汁

副鼻腔炎では、黄色や緑色の粘り気のある鼻汁が特徴的です。通常の鼻水とは異なり、膿が混じることで粘性が高くなり、副鼻腔内に滞留しやすくなります。また、鼻の奥にたまった鼻汁が喉へ流れ込むことで、後鼻漏(こうびろう)が起こり、喉の違和感や咳の原因となることがあります。

顔面の圧迫感や痛み

副鼻腔に炎症が広がると、顔面の圧迫感や鈍い痛みが生じることがあります。特に、頬や額、目の周囲に重い感じや不快感を覚えることが多く、頭を下げると症状が悪化することがあります。

嗅覚の低下

炎症によって嗅覚の神経が影響を受けると、においを感じにくくなることがあります。嗅覚の低下は、炎症が長引くほど回復が遅れることがあるため、早期の治療が重要です。

受診のタイミングと診療科

慢性副鼻腔炎が疑われる場合には、耳鼻咽喉科を受診することが推奨されます。診察では、鼻内視鏡検査を行い、副鼻腔内の炎症やポリープの有無を確認します。また、必要に応じてCT検査を実施し、副鼻腔の状態を詳しく評価することもあります。

慢性副鼻腔炎の検査・診断

慢性副鼻腔炎の診断では、まず医師が症状の経過や頻度、生活習慣などを詳しく確認します。特に、鼻づまりや鼻汁の状態、顔面の圧迫感、嗅覚の低下などの有無を詳しく問診します。

視診では、鼻の中の粘膜の腫れや分泌物の状態を観察します。炎症の程度やポリープの有無を確認するために、鼻内視鏡検査というカメラを用いて鼻の中を観察する検査を行うことがあります。 診断には画像検査が有効です。特にCT検査は、副鼻腔の内部の詳細な状態を確認するのに適しており、炎症の広がりや鼻茸(ポリープ)の有無、副鼻腔の通気性の低下などを評価します。慢性副鼻腔炎では、CT画像上で副鼻腔内の粘膜の肥厚や液体貯留が見られることが特徴です。 X線検査も副鼻腔の炎症の評価に用いられますが、より精密な診断にはCTが推奨されます。 さらに、細菌感染が関与しているか、アレルギーが関係しているかを判断するために鼻汁の細菌培養検査血液検査を実施することがあります。特にアレルギー性鼻炎が関連している場合には、アレルゲンに対する反応を調べることで、治療方針の決定に役立ちます。

慢性副鼻腔炎の治療

慢性副鼻腔炎の治療では、まず薬物療法が行われます。マクロライド系抗生物質は、副鼻腔の炎症を抑える効果が期待できるため、長期間の服用を行います。また、ステロイド点鼻薬は鼻粘膜の腫れを抑え、鼻づまりの改善に効果があります。さらに、鼻汁を排出しやすくするために去痰薬や粘液調整薬が処方されることもあります。アレルギーが関与している場合は、抗アレルギー薬を使用します。

薬物療法で十分な効果が得られない場合や、鼻茸が大きくなり鼻の通気を妨げている場合には、手術を検討します。主に内視鏡下副鼻腔手術(ESS: Endoscopic Sinus Surgery)を行い、副鼻腔内の通気を改善し、炎症を引き起こしている組織を除去します。手術は鼻内から内視鏡を挿入して行うため、身体への負担が少なく、回復も早いのが特徴です。術後は、再発を防ぐために薬物療法を継続します。

慢性副鼻腔炎になりやすい人・予防の方法

慢性副鼻腔炎は、特にアレルギー性鼻炎を持つ方や鼻中隔湾曲症のある方に多くみられます。アレルギーによって粘膜が慢性的に腫れ、副鼻腔の換気が悪くなることで炎症が長引きやすくなります。 また、鼻の構造的な異常があると副鼻腔内の分泌物が排出されにくくなり、慢性的な炎症を引き起こす要因になります。喫煙もリスクを高める要因の一つであり、タバコの煙が鼻粘膜を刺激して炎症を悪化させることが知られています。さらに、免疫力が低下している場合、細菌やウイルスに対する防御力が弱まり、慢性的な炎症が持続しやすくなります。

予防には、風邪をひかないようにすることが重要です。手洗いやうがいを習慣づけ、体調管理をしっかり行うことで感染症のリスクを減らすことができます。また、アレルギーのある方は、ダニや花粉などのアレルゲンを避けることが大切です。室内では、定期的に掃除機をかけ、空気清浄機を使用するなどの対策も有効です。鼻洗浄(生理食塩水を使った鼻うがい)を行うことで、鼻腔内を清潔に保ち、炎症の悪化を防ぐ効果が期待できます。 喫煙や受動喫煙を避けることも、慢性副鼻腔炎の予防には重要です。さらに、室内の湿度を適切に保つことで、鼻粘膜の乾燥を防ぎ、炎症のリスクを軽減することができます。

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