肺胞微石症
本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

肺胞微石症の概要

肺胞微石症は、肺胞内に石灰化した結石(微石)が蓄積する、きわめてまれな遺伝性疾患です。

病状の進行がとてもゆっくりであるのが特徴で、発症していても初期(小児期)には自覚症状がほとんどありません。病気が進行すると肺の柔軟性が失われ、息切れや呼吸困難、慢性的な咳などの症状が現れます。家族歴や健康診断の胸部X線検査などから診断されることが多いとされています。

肺胞微石症の主な原因は、遺伝子の変異であることがわかっています。SLC34A2という遺伝子に異常が起き肺胞内でリンの排出がうまく機能しなくなることで発症すると考えられています。

現在のところ、肺移植手術を除くと、この病気の進行を止める、あるいは根本的に治癒するのに有効な治療法は確立されていません。病状に応じた酸素療法や対症療法がおこなわれています。

肺胞微石症の原因

肺胞微石症の主な原因は、遺伝子の異常によるものと考えられています。

発症原因となりうる遺伝子として、肺胞内でのリン排出に関係する「SLC34A2」という遺伝子が特定されています。
SLC34A2遺伝子に異常が現れると、肺胞内に余分なリンが蓄積し、それがカルシウムと結合して、徐々に微石が形成されると考えられています。

SLC34A2遺伝子は常染色体劣性遺伝(両親から特定の遺伝子を受け継ぐと発現する遺伝形式)であるため、家族歴による発症が多く見られます。

ただし、日本では家族歴のない発症例も報告されていることから、遺伝以外の環境要因が関与している可能性も指摘されています。

症例数が少ない疾患であるため、詳しい発症メカニズムなどは今も明らかになっていない疾患です。

肺胞微石症の前兆や初期症状について

肺胞微石症は、発症していても初期段階ではほとんど自覚症状がないことが知られています。
通常は病状の進行がゆるやかであるため、小児期などに症状が問題となるケースは少なく、多くは成人になってから、中年期にかけて症状が出ます。

病気が進行すると、長時間の歩行や階段の昇降などの軽い運動でも息苦しさを感じるようになります。
初めは軽度であっても、徐々に息切れの頻度が増し、最終的には安静時にも息苦しさを感じます。また、肺の柔軟性が失われたり炎症が生じたりして、慢性的な咳や痰がみられることもあります。

現在のところ、肺移植以外には根本的な治療が期待できる手段がないため、長期的な予後が悪く、最終的には慢性呼吸不全などの重篤な症状を併発するとされています。

肺胞微石症の検査・診断

肺胞微石症の診断には、主に画像検査、病理検査、遺伝子検査が用いられます。
それぞれの検査を組み合わせることで、病気の特定と進行度の評価が可能となります。

画像検査

肺胞微石症には特徴的な所見があり、肺の中に微石が広がる様子が胸部X線検査などによって確認できます。
患者本人に自覚症状が出ていないケースでも、健康診断などで偶然発見される場合もあります。
肺胞微石症の疑いが強い場合、胸部CT検査などによってさらに詳細に調べ、微石の分布や影響の範囲を調べることができます。

病理検査

確定診断をするために、肺の組織を直接調べる病理検査をおこなう場合もあります。
経気管支肺生検(はいきかんしせいけん=trans bronchial lung biopsy:TBLB)や気管支肺胞洗浄(きかんしはいほうせんじょう=broncho alveolar lavage:BAL)などにより、肺の組織内に微石の存在が確認できる可能性があります。

遺伝子検査

遺伝子検査をおこない、肺胞微石症の原因遺伝子として特定されている「SLC34A2遺伝子」の変異が確認できた場合には、症状と合わせて肺胞微石症と診断されます。

肺胞微石症の治療

現在のところ、肺胞微石症に対する根本的な治療法はありません。
そのため、治療の目的は病気の進行を抑え、患者の呼吸機能を維持することを目的におこなわれるのが一般的です。
症状の進行に応じて薬物療法や酸素療法などの対症療法が試みられています。ドナーなどの条件が整う場合は、肺移植手術が検討されるケースもあります。

肺胞微石症になりやすい人・予防の方法

肺胞微石症は主に遺伝的な要因が関与していると考えられており、家族に発症者がいる場合は発症リスクが高い可能性があります。原因遺伝子として特定されているSLC34A2遺伝子は、常染色体劣性遺伝であることがわかっています。したがって、発症のない人でも遺伝子上の「保因者」となる可能性があり、両親ともに保因者であればその子どもに発症する可能性があります。
家族歴を調べることで、肺胞微石症の発症リスクを知ることが可能です。また、遺伝子検査により詳細を調べることもできます。
ただし、この疾患では家族歴のない人にも発症の報告があることには留意が必要です。
生活習慣や環境因子による発症予防は難しいとされていますが、肺の健康を維持するような生活習慣を心がけ、定期的な健康診断などで肺の異変について早期発見に努めることは重要と言えます。


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