

監修医師:
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)
目次 -INDEX-
胸膜腫瘍の概要
胸膜腫瘍(きょうまくしゅよう)とは、肺や胸壁を覆う「胸膜」に発生する腫瘍の総称です。
良性のものには孤立性線維性腫瘍があり、一般的に進行が遅く、治療により予後が良好な場合が多いです。
悪性のものでは、悪性胸膜中皮腫や転移性胸膜腫瘍が挙げられます。
悪性胸膜中皮腫はアスベスト(石綿)の吸入が主な原因とされ、転移性胸膜腫瘍は、肺がんや胃がんなどが胸膜に転移し形成される腫瘍です。
悪性の場合、進行すると予後が不良な場合もあります。
胸膜腫瘍の主な症状には、胸痛、息切れ、咳、胸部の圧迫感などがあり、腫瘍の進行によって胸水が溜まることもあります。
胸膜腫瘍の治療法は、腫瘍の種類や進行度、患者の健康状態に応じて異なり、外科療法、化学療法、放射線療法などが組み合わせて実施されます。
胸膜腫瘍の原因
胸膜腫瘍の原因は、腫瘍の種類によって異なります。
孤立性線維性腫瘍は細胞の異常や遺伝子の変化で胸膜に発生します。
悪性胸膜中皮腫はアスベスト(石綿)の吸入によるものが多いです。
アスベストはかつて建築資材や断熱材として広く使用されており、吸い込むことで胸膜に異常を引き起こし、腫瘍の発生につながるとされています。
ただし、悪性胸膜中皮腫を発症するリスクは曝露の量や期間に影響され、アスベストを吸い込んだからといって必ずしも胸膜腫瘍を発症するわけではありません。
転移性胸膜腫瘍は、肺がんや胃がん、乳がんなどが転移して胸膜に腫瘍が形成されます。
また、慢性的な感染症が胸膜腫瘍の発症に関与する場合もあります。
胸膜腫瘍の前兆や初期症状について
胸膜腫瘍の初期症状は非常にわかりにくく、自覚症状がほとんどありません。
腫瘍が進行すると、深呼吸や咳で増悪する胸痛、持続する乾いた咳、胸部の圧迫感が現れます。また、胸水の貯留によって呼吸困難が生じ、特に横になると悪化することがあります。
さらに、全身症状として、原因不明の発熱や食欲不振をともなう体重減少全身の倦怠感が見られることがあります。
胸膜腫瘍の検査・診断
胸膜腫瘍の診断には、画像診断や胸水検査、組織採取が組み合わせておこなわれます。
画像検査
胸膜腫瘍の診断では、まず画像検査が行われます。
胸部X線検査やCT画像によって、胸膜の肥厚や腫瘍の広がりを視覚的に確認し、腫瘍の大きさや位置を把握することが可能です。
PET-CT検査では、微量の放射性薬剤を注射し、がん細胞の代謝活性を可視化し、全身の臓器への転移の有無を調べます。
胸水検査
胸膜腫瘍では、胸膜の間に胸水と呼ばれる液体がたまることがあります。
胸水を採取して細胞を調べることで、腫瘍の有無を確認します。
胸腔穿刺(きょうくうせんし)と呼ばれる方法で胸水を採取し、がん細胞が含まれているかを詳しく分析します。
組織採取
画像検査や胸水検査で腫瘍が疑われる場合、胸腔鏡(小さな切開で胸部を観察・治療する内視鏡検査)を用いた組織採取が行われます。
胸膜から直接組織を採取し、腫瘍の種類や進行度を詳細に調べ、悪性胸膜中皮腫などの診断が確定されます。
胸膜腫瘍の治療
胸膜腫瘍の治療法は、腫瘍の進行度や患者の体調に応じて選択されます。
主な治療法として外科療法、化学療法、放射線療法、そして緩和ケアが挙げられます。
外科療法
外科療法は、腫瘍が胸膜に限定されている場合に実施されます。
代表的な手術として「胸膜肺全摘除術」があり、片側の肺、胸膜、横隔膜、心膜の一部を切除します。
これにより腫瘍を可能な限り取り除きますが、大規模な手術であるため慎重な患者の全身状態評価が必要です。
化学療法
進行した胸膜腫瘍には化学療法が用いられることが多く、腫瘍の進行を抑える薬剤が使用されます。
治療は通常、複数の抗がん剤を組み合わせて行われ、定期的な効果判定と副作用の管理が重要です。
手術が難しい場合に選択される治療法です。
放射線療法
放射線療法は、痛みの緩和や転移した腫瘍の制御を目的におこなわれます。
腫瘍が広範囲に広がる場合は難しいこともありますが、症状を和らげる効果が期待されます。
緩和ケア
緩和ケアには胸水の貯留を防ぐ胸膜癒着術や痛みのコントロールが含まれます。
呼吸困難の軽減や不安への対応など、患者が日常生活を快適に送れるよう、身体面と精神面の両方からの支援を行います。
胸膜腫瘍になりやすい人・予防の方法
胸膜腫瘍の発症リスクは、腫瘍の種類によって異なります。
悪性胸膜中皮腫では、過去にアスベスト(石綿)に曝露した経験がある人でリスクが高くなります。特に、アスベストを扱う工場や建設現場で働いたことがある人、またはアスベストが含まれる建材を使用した建物の近くで生活していた経験がある人は注意が必要です。現在ではアスベストの使用が禁止されていますが、過去に曝露した影響は消えるわけではなく、引き続きリスクがあります。
転移性胸膜腫瘍については、肺がん、乳がん、胃がんなどの既往歴がある人で発症リスクが高くなります。特に、これらのがんの進行度が高い場合や、リンパ節転移がある場合は、胸膜への転移の可能性に注意が必要です。また、喫煙歴がある人は肺がんのリスクが高まることから、間接的に転移性胸膜腫瘍のリスクも上昇する可能性があります。
予防の方法としては、アスベストを含む建材を適切に処理することや、解体作業時に防護具を使用することが重要です。また、禁煙も重要な予防法の一つです。
アスベスト曝露の可能性がある人やがんの既往歴がある場合は、定期的な健康診断を受けることで早期発見を目指すことが推奨されます。
参考文献