DI1662
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

耳性帯状疱疹の概要

耳性帯状疱疹は「ラムゼイ・ハント症候群」とも呼ばれ、「水痘帯状疱疹ウイルス」によって発症する疾患です。耳の強い痛みや耳付近にできる水ぶくれなどが主な症状で、通常は片方の耳にだけ症状が出ます。ウイルスが神経を障害することにより、顔面の麻痺や難聴、めまいといったさまざまな症状が出ることもあります。

耳性帯状疱疹の原因である水痘帯状疱疹ウイルスは、ヘルペスウイルスの一種であり、「水ぼうそう」を引き起こすウイルスとしても知られています。患者の免疫力の低下などをきっかけに、体内に潜伏していたウイルスが再び活性化すると、帯状疱疹や耳性帯状疱の原因になると考えられています。

耳性帯状疱疹の部分的な症状は1週間程度で自然治癒することもあるものの、重症化すると治癒しても顔面麻痺などの後遺症が残る恐れがあります。そのため、診断できた場合はすみやかに治療を開始し、後遺症などのリスクを減らすことが推奨されています。

治療では、抗ウイルス薬と副腎皮質ステロイド薬を用いた薬物療法がおこなわれrるのが一般的です。顔面麻痺が残る可能性が高い場合などは、神経への圧迫を取り除くための手術が検討されるケースもあります。

出典:慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトKOMPAS 「帯状疱疹」

耳性帯状疱疹の原因

耳性帯状疱疹の原因は、水痘帯状疱疹ウイルスです。
耳性帯状疱疹は、患者が過去に感染した水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化で発症すると考えられています。

水痘帯状疱疹ウイルスに初めて感染すると、多くの場合は水ぼうそうを発症します。一度感染したウイルスは、水ぼうそうの治癒後も神経付近に潜伏して患者の体内に残ります。ウイルスが潜伏していても通常は無症状で経過しますが、免疫力の低下などをきっかけにウイルスが再び活性化することがあります。

活性化したウイルスが、肋間神経などを障害すると帯状疱疹を引き起こし、顔面神経を障害すると耳性帯状疱疹を引き起こすと考えられています。

免疫力が低下する原因はさまざまで、ストレスや過労などの日常的な要因や、加齢による体力低下、紫外線の影響などが指摘されています。抗がん剤や免疫抑制薬の使用などが原因となることもあります。

耳性帯状疱疹の前兆や初期症状について

耳性帯状疱疹の初期症状として、耳付近あるいは耳の内側からくる強い痛みが挙げられます。耳や耳周辺の皮膚に水ぶくれ状の疱疹ができることもあります。

こうした痛みや皮膚症状は、通常片方の耳、すなわち顔面の片側にだけ出るのが特徴で、多くの場合1週間程度でおさまります。

一方、症状が重いと顔面麻痺を合併するケースが多く、めまいや難聴、味覚障害などを伴うこともあります。顔面麻痺では顔の片側の表情筋が動かしにくくなり、左右の顔で表情が異なる「表情筋運動障害」を認めることもあります。

顔面麻痺をはじめとする神経症状は後遺症として残りやすいのも特徴ですが、早期に医療介入することで後遺症のリスクを減らすことが期待できます。

このほか、まれに脳神経炎や脳炎を合併して重篤な状態に陥るケースもあるため、注意が必要です。

耳性帯状疱疹の検査・診断

耳性帯状疱疹は、問診や血液検査、画像検査などによって診断されます。

問診では、症状の種類や経過などを確認します。症状が軽い場合でも、血液検査で水痘帯状疱疹ウイルスの抗体価が高くなっているかどうかを確認することで診断できます。

他の疾患と区別するために、造影剤を用いたMRI検査などがおこなわれることもあります。

また、耳にできた水疱から排出液を採取して培養し、顕微鏡でウイルスの存在を確認する検査をおこなうこともあります。

このほか、顔面麻痺の程度を把握するため、顔面神経が広がる皮膚に電極を貼り、神経の電気信号を捉える筋電図検査などがおこなわれることもあります。

耳性帯状疱疹の治療

耳性帯状疱疹では、一般的に薬物療法がおこなわれます。

水痘帯状疱疹ウイルスの活性を抑える抗ウイルス薬と、炎症を抑える副腎皮質ステロイド薬を同時に投与する治療が広くおこなわれています。

痛みが強い場合には、鎮痛薬や神経ブロック注射が用いられることもあります。発症後痛みが長期間持続する場合には、皮膚に貼付するパッチ剤のほか、抗てんかん薬や抗うつ薬などが用いられるケースもあります。

治療後は顔面麻痺の程度を観察し、後遺症を残す可能性が高いと判断される場合には、リハビリテーション、あるいは顔面神経への圧迫を取り除くための手術を検討することもあります。

耳性帯状疱疹になりやすい人・予防の方法

耳性帯状疱疹は、免疫力の低下しやすい中高年以降で発症しやすく、高齢者にも多く見られます。しかし、耳性帯状疱は過去に水痘帯状疱疹ウイルスに感染したことのある人なら誰でも、発症する可能性があります。

発症を予防するためには、水痘帯状疱疹ウイルスそのものに対する感染予防が考えられます。水痘帯状疱疹ウイルスにはワクチンが存在するため、予防接種を受けることで発症予防が期待できます。

すでに水痘帯状疱疹ウイルスへの感染歴(水ぼうそうの罹患歴)がある人は、免疫力の低下を防ぐことが発症予防につながります。
体調管理や規則正しい生活リズムの維持に努め、過度なストレスや過労を避けることは、耳性帯状疱疹の原因となるウイルスの再活性化を防ぐ観点から重要です。

また、がんなどの治療で免疫抑制剤や抗がん剤、放射線治療などをしている人は耳性帯状疱疹の発症リスクが高いと言えます。治療先の医療機関の指示に従って、発症をできるだけ防ぐ行動が必要になります。


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