副鼻腔がん
大津 和弥

監修医師
大津 和弥(医師)

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三重大学医学部卒業。三重大学附属病院で研修。市立四日市病院、三重大学附属病院などに勤務後、国立がんセンター東病院研修。三重大学附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 講師を務め、小松病院で一色信彦、田邊正博の音声外科医師の指導の下音声外科手術を研鑽。市立ひらかた病院耳鼻咽喉科部長、市立ひらかた病院耳鼻咽喉科主任部長、音声外科センター長などを歴任。大阪医科薬科大学臨床教授。現在は大津耳鼻咽喉科・ボイスクリニック 院長。

副鼻腔がんの概要

副鼻腔(ふくびくう)がんは、鼻腔の周りにある顔面の骨に囲まれた空洞(副鼻腔)に発生するがんです。

副鼻腔は左右に4個ずつある左右対称の構造であり、それぞれは上顎洞(じょうがくどう)、前頭洞(ぜんとうどう)、篩骨洞(しこつどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)と呼ばれ、鼻腔とつながっています。この空間にできた悪性腫瘍(がん)は副鼻腔がんと総称されます。

副鼻腔がんの中では、上顎洞に生じるがんがもっとも多く、上顎洞がんが副鼻腔がん全体の半数以上を占めます。副鼻腔がんの患者数を性別で見ると、男性が多いことも知られています。
ただし、副鼻腔がんは、がん全体の中では比較的珍しいがんです。

副鼻腔がんの主な初期症状は、鼻血や鼻づまりです。
副鼻腔がんは特徴的な自覚症状が現れにくく、早期発見が難しいとされています。進行した副鼻腔がんでは、視力低下や頭痛などの症状も見られます。

副鼻腔がんの治療では、外科的手術だけでなく放射線治療や化学療法が選択されます。
がんの大きさや広がっている箇所を考慮して、個別の治療がおこなわれる場合もあれば、三つの治療を組み合わせる三者併用療法がおこなわれる場合もあります。

長期的な鼻粘膜の炎症は、副鼻腔がんを発症する原因になると考えられており、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)や喫煙習慣などが副鼻腔がんの主なリスク要因とみられています。

副鼻腔がんの原因

副鼻腔がんの発症原因は正確には特定されていません。
副鼻腔がんの発症リスクを高める原因として有力視されているのは、長期的な鼻粘膜の炎症です。

とりわけ、重症化した慢性副鼻腔炎を抱えているものの治療せずに放置されている場合では、副鼻腔がんを発症するリスクが高いと考えられています
そのほか、喫煙習慣、大気汚染や粉塵にさらされた影響、 ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染なども発症リスク要因になり得ると考えられています。

副鼻腔がんの前兆や初期症状について

副鼻腔がんは、発症初期には自覚症状に乏しいこともあり、早期発見が難しいがんとされています。

早期の副鼻腔がんでは、鼻水や鼻づまりなどの症状が多く見られます。さらに繰り返し鼻血が出たり、鼻水に血や膿が混じったりします。
ただし、これらの症状は副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎とも似ています。
副鼻腔がんを発症している場合は、こうした症状が片側の鼻にだけ偏って見られる傾向があります。

副鼻腔がんが進行すると、副鼻腔の外にも影響が広がります。顔面の腫れやしびれ、歯茎や上あごの腫れ、眼球突出や視界のゆがみ、などが代表的なもので、腫瘍が広がった方向により、顔面および目や口に症状が及びます。

副鼻腔がんの検査・診断

副鼻腔がんの診断は、視診、内視鏡検査、画像検査(CT検査、MRI検査、PET検査など)、病理検査等で総合的におこなわれます。

鼻づまりや鼻血などに対しては、まず鼻鏡(びきょう)と呼ばれる器具を使って視診をおこなうのが一般的です。 鼻腔の奥を調べる際は、細い内視鏡を使います。
診察結果から副鼻腔がんを疑う場合は、組織の一部を採取してがん細胞の有無を調べる病理検査をおこないます。

病理検査の結果、副鼻腔がんと診断されたら、がんの進行の程度や転移の有無を調べるために、画像検査を実施します。

副鼻腔がんの治療

副鼻腔がんの治療は、手術や放射線治療、化学療法が基本となります。
がんの進行状態や患者の健康状態などを考慮して、単独の治療法、あるいはそれぞれを組み合わせた治療法がとられます。

早期発見できた場合は手術で切除できるケースもありますが、進行した副鼻腔がんの治療として外科的手術を用いた場合は、患者の容姿に影響を残す可能性があります。したがって、まず放射線治療と化学療法を併用して、腫瘍の縮小を狙うケースも多いです。

放射線治療と化学療法は、手術後の再発予防や正常組織における障害の予防などを目的におこなわれる場合もあります。

副鼻腔がんになりやすい人・予防の方法

副鼻腔がんは、男性の発症が多く見られますが、女性でも発症します。60代以降の高齢者にも発症が多いとされています。

発症のリスクを高める要因は、長期的な鼻粘膜の炎症状態だと考えられており、慢性副鼻腔炎を治療せずに放置している人は、副鼻腔がんの発症リスクが高いと言えます。したがって慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などを早期に治療し、悪化させないことは副鼻腔がんの発症予防につながります。

他には、喫煙習慣、大気汚染や粉塵の影響、 ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染なども発症リスク要因になり得ると指摘されています。とくに喫煙あるいは受動喫煙によるがん発症の因果関係を指摘する研究は複数あることからも、禁煙や受動喫煙の回避がこの病気の予防につながる可能性があります。


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