外耳腫瘍
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

外耳腫瘍の概要

外耳腫瘍とは、耳の外側である「外耳」にできる腫瘍のことです。

耳は外側から外耳、中耳、内耳の大きく3つの部位で構成されています。このうち、外耳とは、一般的に「耳」と呼ばれる外側に飛び出た「耳介」と、耳の穴である「外耳道」までの部分を指します。

外耳腫瘍には良性のものと悪性のものがあります。

良性の外耳腫瘍には、耳の骨に発生する「骨腫」や「外骨腫」、けがなどによって蓄積したかさぶたが病変となる「ケロイド」、皮膚の分泌物が袋状に蓄積する「表皮封入嚢胞」などがあります。
外耳の良性腫瘍では、耳垢が溜まったり聞こえが悪くなったりすることがあります。

良性で小さなものであれば、特別な治療は行わず経過観察となることもあります。しかし、症状によっては注射での治療や、手術を検討します。

一方、悪性の外耳腫瘍はできる部位によって「耳介腫瘍(耳介がん)」「外耳道腫瘍(外耳道がん)」などがあります。
耳介腫瘍や外耳道腫瘍を発症すると、耳から分泌物が出ることがあります。また、分泌物に血液が混ざったり、痛みを伴ったりするケースもあります。

悪性の外耳腫瘍を認める場合には、第一選択として手術が考慮され、術後に放射線療法や化学療法を行うこともあります。

外耳腫瘍の原因

外耳腫瘍では、耳への物理的な刺激が原因になることがあります。

良性の外耳腫瘍の原因

良性の外耳腫瘍のうち、表皮封入嚢胞は皮膚の分泌物が溜まることで発症することがあります。また、ケロイドは耳にピアスを開けたりけがをしたりすることでかさぶたの組織が蓄積し、それが病変となって発症することがあります。

外骨腫は、スキューバダイビングやサーフィンなど冷たい水の中を泳ぐ人に発症することがあり「サーファーズイヤー」と呼ばれることもあります。

悪性の外耳腫瘍の原因

発症頻度の高い外耳道がんでは、耳かきなどの慢性的な物理的刺激がリスクを高める可能性があります。

また、正式には外耳腫瘍とは異なるものの、長期間に渡り日光にさらされている人で外耳に「有棘細胞がん」や「基底細胞がん」などの皮膚がんを認めるケースもあります。

外耳腫瘍の前兆や初期症状について

外耳腫瘍では、良性と悪性で症状が異なります。

良性の外耳腫瘍の前兆や初期症状

良性の外耳腫瘍では、耳に小さなしこりや膨らみを自覚します。腫瘍が大きくなると、耳垢が溜まって聞こえが悪くなることがあります。また、水中に潜った後に耳に入った水を排出しにくくなるケースもあります。

悪性の外耳腫瘍の前兆や初期症状

悪性の外耳腫瘍を発症すると、耳から分泌物が出ることがあり、ときに分泌物に血液が混ざることがあります。また、耳の痛みや聞こえにくさを伴うこともあります。

悪性の外耳腫瘍の症状は慢性外耳道炎や良性の外耳腫瘍と似ていることもあり、発見が遅れてしまうケースもあります。

外耳腫瘍の検査・診断

症状や見た目から外耳腫瘍が疑われる場合には、良性か悪性かを診断するために精密検査が行われます。

検査では、腫瘍のある患部を検体として一部採取し、細胞の状態を顕微鏡で詳しく調べる「病理組織学的検査」が行われます。

診断の結果悪性腫瘍であった場合には、さらに腫瘍の大きさや転移の有無、進行度(ステージ)などを評価するためにCT検査やMRI検査などの画像検査を行います。全身状態に問題がない場合には、画像検査の際に注射で造影剤を投与し、腫瘍の広がりを細かく調べることもあります。

外耳腫瘍の治療

外耳腫瘍では、良性と悪性で治療が異なります。

良性の外耳腫瘍の治療

骨腫や外骨腫では、腫瘍が小さい場合には特別な治療はせず経過観察となることがあります。一方、腫瘍が大きく聞こえにくさなどの症状を認める場合には、腫瘍を切除するための手術が考慮されます。

ケロイドを認める場合にも手術が行われることがあり、状態によっては術後に放射線療法が行われることもあります。他にも、患部に副腎皮質ステロイド薬を注射する薬物療法が行われることがあります。

悪性の外耳腫瘍の治療

悪性の耳介腫瘍や外耳道腫瘍の場合には、第一選択として手術が考慮されます。手術では耳の後ろを切開するものの、発症早期の腫瘍であれば切開範囲は非常に少なく済みます。また、早期に手術を行なった場合には、術後の機能障害のリスクも比較的少ない傾向にあります。

病状が進行している場合には、場合によっては開頭手術が必要になったり、顔の神経や顎を一緒に切除したりすることもあります。切開する範囲が広くなると、術後に耳や顔などの機能障害を招くリスクが高くなります。そのため、耳や顔の機能をできる限り温存するために、手術で可能な限り腫瘍と切除した後、放射線療法や抗がん剤を用いた化学療法が行われることがあります。

放射線療法や化学療法は術後に行われるだけでなく、全身状態の問題などで手術が受けられない患者さんに行われるケースもあります。

抗がん剤は点滴で投与する方法のほか、太い血管(動脈)に「カテーテル」と呼ばれるチューブを挿入し、腫瘍に栄養を与える血管に直接抗がん剤を注入する方法(超選択的動注化学療法)が用いられることもあります。

外耳腫瘍になりやすい人・予防の方法

良性の外耳腫瘍は、スキューバダイビングやサーフィンをする人に発症することがあります。スキューバダイビングやサーフィンをする際は、専用の耳栓を使用するようにしたり、耳に水が入らないようにしたりすることで外骨腫の予防につながります。

また、日頃よく耳かきをしているという人は、外耳道がんなどの悪性腫瘍を発症するリスクが高まる可能性があります。

耳には耳垢を自然に排出する「自浄作用」があり、日頃家庭で耳かきを行う必要はありません。耳かきは控え、入浴後に水分が気にある場合には、綿棒で軽く拭う程度にとどめましょう。


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