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アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の概要

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(Allergic bronchopulmonary aspergillosis ; ABPA)は、アスペルギルス属と呼ばれるカビが肺に侵入した際に、免疫系が過剰に反応して起こるアレルギー反応の結果として生じる疾患です。特にAspergillus fumigatusが最も原因として多いです。また、アスペルギルス属のほかスエヒロタケなどの他の真菌でも同様の病態を認めることがあります。そのことから、アレルギー性気管支肺真菌症とも呼ばれます。

この病気は特に気管支喘息や嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)といった呼吸器疾患を持つ人に発症しやすいとされています。APBAによって免疫系が過剰に反応することで、気道や肺に炎症や損傷を引き起こします。

ABPAは、特に気管支喘息と似た症状を示すことが多く、その特徴を正確に見極めることが患者さんと医療従事者にとって重要です。適切な治療を受けることで症状の管理は可能ですが、合併症や肺の損傷を防ぐために定期的な経過観察が必要です。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の原因

ABPAは、原因となる主にアスペルギルス属の真菌に対して免疫応答が誘導され過剰に反応することによって引き起こされます。以下は主な原因です。

主な原因

1.アスペルギルスへの曝露
主原因となるAspergillusfumigatusは、土壌や腐った植物、室内環境などに広く存在するカビです。このカビが免疫力が弱い人や既存の呼吸器疾患を持つ人の下気道腔内に沈着し、Ⅰ型・Ⅲ型アレルギー反応を引き起こすことで発症します。

2.遺伝的な要因
一部の人はアレルギー反応を起こしやすい遺伝的な傾向を持っています。この傾向がある人がアスペルギルスの胞子に触れると、ABPAを発症する可能性が高まります。

3.基礎疾患の存在
ABPAは気管支喘息や嚢胞性線維症などの呼吸器の基礎疾患を持っている成人患者さんに発症することが多いです。これらの疾患では粘液の分泌が増え、気道が炎症を起こしやすくなるため、カビが定着しやすい環境が作られます。

4.環境要因
湿度の高い環境や、カビが多い場所(例:堆肥の山や湿った建物)への長期間の曝露は、ABPA発症のリスクを高めます。

5.加齢や生活習慣
加齢により免疫力の低下を認めたり、生活習慣などが発症リスクを高める原因になり得ます。

これらの原因を理解することで、リスクが高い人々を特定し、予防策を講じることができます。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の前兆や初期症状について

ABPAでは多くの場合、以下のような症状が見られます。これらの症状がある方は、呼吸器内科を受診しましょう。

1.喘息症状の悪化

喘息の症状がよりひどくなる、または通常の薬でコントロールできなくなることがあります。これには、喘鳴(ぜんめい)や息切れ、咳の増加が含まれます。

2.喀痰

喀痰として茶色っぽい粘液の塊や血が混ざる場合もあります。

3.息切れ

身体を動かしたときや横になったときに息が苦しくなることがあります。

4.微熱

発熱が断続的に起こることがありますが、通常は軽い熱です。

5.全身の倦怠感やだるさ

疲労感や全身の弱さを感じることがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。

これらの症状が複数組み合わさって現れ、長期間続く場合は、医療機関を受診し、適切な評価を受けることが大切です。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の検査・診断

ABPAの診断は、患者さんの病歴や症状、複数の検査結果を相当的に評価することが必要です。診断基準は複数存在しますが、最近ではISHAMから出ているABPA診断のコンセンサス基準(2024年に改訂)が最も新しい内容となります。

1.次のいずれも満たしていること

  • Aspergillus fumigatus特異的IgEが高値である(≧0.35kUA/L)
  • 血清総IgEが高値である(≧500IU/L)

2.次の3つのうち2つを満たしていること

  • Aspergillus fumigatus特異的IgG抗体が陽性である
  • 末梢血中好酸球数の増多を認める(≧500/μL)
  • 胸部CTで気管支拡張や粘液栓、high-attenuation mucus(HAM)という所見を認める

また、気管支喘息の既往や症状があることや、喀痰や気管支洗浄液の培養からAupergillus菌が検出されることなども、他の診断基準では項目に含まれております。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の治療

薬物療法

1.プレドニゾロン
プレドニゾロンは、気道の炎症を抑え、呼吸を改善するために一般的に処方されます。投与量は患者さんの状況にあわせて調節されます。

2.抗真菌薬
プレドニゾロンで改善しない場合や、プレドニゾロンの代替薬または減量するための薬剤としてアゾール系の経口抗真菌薬を用いることがあります。

サポートケア

1.定期的なモニタリング
ABPAと診断された患者さんは、喘息の病状などと合わせて呼吸機能の状態を確認し、治療計画を必要に応じて調整するために、定期的なフォローアップを受けるべきです。

2.肺リハビリテーション
肺リハビリテーションプログラムに参加することで、運動訓練、肺疾患管理に関する教育、呼吸器の健康に特化した栄養指導を通じて、全体的な肺の健康を向上させることができます。

上記の他に、再発を繰り返すような症例に対しては重症気管支喘息に使用される生物学的製剤が有効であったという報告もありますが、現時点でABPAに対する有効性のエビデンスに乏しいです。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)になりやすい人・予防の方法

かかりやすい人

以下のような人はアレルギー性気管支肺アスペルギルス症に対する高い発症リスクがあります。

1.気管支喘息患者
気管支喘息症状のある方で、症状の悪化や粘液栓のような痰が出る場合に疑います。

2.嚢胞性線維症の患者
この遺伝性疾患は粘液の分泌に影響を与え、慢性的な肺感染症を引き起こしやすくなります。そのため、嚢胞性線維症の患者は気道内での真菌の定着に対して特に感受性が高まります。

3.カビの多い環境に頻繁にさらされる人々
農場の近くに住む人は、カビ胞子の多い環境にさらされる機会が一般の人より多いです。
堆肥や有機材料を扱う仕事に従事している場合も、真菌への曝露リスクが高くなります。

予防方法

外的要因による影響を完全に防ぐことはできませんが、リスクを軽減する方法はあります。

1.予防接種
インフルエンザワクチンなどの予防接種を最新の状態に保つことで、既存の肺疾患を悪化させる可能性のある呼吸器感染症から身を守ることができます。

2.環境的なトリガーを避ける
カビが多く存在する場所(湿った地下室や屋根裏など)への接触を最小限に抑えたり、除湿機や空気清浄機を利用してカビを避けることが大切です。


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