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マイコプラズマ感染症
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

マイコプラズマ感染症の概要

マイコプラズマは細菌の一種です。感染様式は飛沫感染と接触感染ですが、短時間の接触では感染リスクが低く、家庭内や小規模のコミュニティで広がりやすい点が特徴です (参考文献 1, 2) 。潜伏期間は2~3週間程度と長めで、初期症状として発熱・倦怠感・頭痛・のどの痛みがみられ、数日経つと長引く乾いた咳が出現します (参考文献 2)。診断では他の感染症との鑑別が重要で、鼻咽頭ぬぐい液からの抗原検出や血液検査、胸部X線撮影、呼吸音の聴診を組み合わせて総合的に判断します。治療の中心はマクロライド系抗菌薬ですが、マクロライド耐性のマイコプラズマの存在が問題となっており、その場合は薬剤変更や別の原因の検討が必要です (参考文献 2) 。予防には手洗い、アルコール消毒、マスクなどの基本的な感染対策が有効で、流行期にはより一層の注意が求められます。2024年冬には大きな流行が確認されており、今後もメディアや医療機関の情報発信に注目し、適切な対策を講じましょう。

マイコプラズマ感染症の原因

マイコプラズマは細菌の一種です。マイコプラズマの感染様式は飛沫感染接触感染ですが、感染するには比較的濃厚な接触が必要とされています (参考文献 1) 。例えば感染者と一緒に住んでいる、感染者と友人で長い時間一緒に遊んでいるような場合には感染が成立するリスクが高いですが、短時間だけの接触ではあまり感染リスクは高くありません。コロナ禍で話題となったような大規模クラスターというよりは、家庭内や小さなコミュニティで感染が広がるというようにイメージしてください。

マイコプラズマ感染症の前兆や初期症状について

感染から発症までの時間を潜伏期間と呼びますが、マイコプラズマ感染症の潜伏期間は2~3週間とされていて (参考文献 1) 、初期の症状として発熱・体のだるさ・頭痛・のどの痛みが出ます (参考文献 2) 。発症後数日たつと痰のからまない咳 (乾性咳嗽) が出始め、かなり長引きます (参考文献 2) 。
これらの症状のほかにも息がゼーゼーという喘鳴、皮疹、胸痛などの多彩な症状が現れることがあります (参考文献 1) 。
症状だけでマイコプラズマ感染症を他のいわゆる「風邪」と区別することは医師でも難しいです。稀に重症化することもある疾患ですので、マイコプラズマ感染症を疑うような症状があればお近くの内科を受診してください。

マイコプラズマ感染症の検査・診断

マイコプラズマ感染症は発熱や倦怠感といった全身症状や呼吸器症状、皮疹や溶血による症状など様々な臨床像を呈します。最も多い「マイコプラズマ上気道炎」や「マイコプラズマ肺炎」が問題になることが多いので、これらについて解説します。

問診による経過の整理、診察室での身体診察 (視診や呼吸音の聴診など) 、胸部X線撮影の結果から上気道炎に留まると判断される場合には、これ以上の検査をしない場合もあります (参考文献 3) 。

肺炎が疑われる場合には原因の特定を進めます。マイコプラズマ肺炎は他の細菌性肺炎やインフルエンザ、COVID-19 との鑑別が重要になります。
原因の微生物特定のために行われる検査は、インフルエンザやコロナの検査と同じように鼻の奥に綿棒を突っ込んで咽頭ぬぐい液を採取し、そこからマイコプラズマ抗原を検出するという方法です。血液検査でマイコプラズマ肺炎に特徴的なデータが得られる場合があるほか、全身の状態の把握もできるため、採血をする場合も多いです。
肺炎とわかったうえで、次の6つの項目のうち、5項目以上合致する場合にはマイコプラズマ肺炎の可能性が高いと判断されます (参考文献 2) 。

  • 年齢が60歳未満
  • 基礎疾患がないか、あるいは軽い
  • 頑固な咳がある
  • 胸部聴診で特段の所見がない
  • 迅速診断法で他の原因菌が証明されない
  • 血液検査で白血球数が 10,000/μL 未満

マイコプラズマ感染症の治療

ほとんどの場合、マイコプラズマ感染症は抗菌薬投与をしなくても自然に治ります。例えばマイコプラズマ感染症の多くを占める「マイコプラズマ上気道炎」では軽い熱や咳や咽頭痛・鼻水が主な症状ですが、原因微生物を特定するための検査や抗菌薬の投与は基本的に不要とされています (参考文献 3) 。

マイコプラズマ肺炎などの積極的な介入をした方がよい病態の場合には、マクロライド系の抗菌薬を中心とした治療をしていきます。マクロライドの投与を開始すると48時間以内に解熱が得られる場合が多いです (参考文献 2) 。
最近ではマクロライドに対して耐性のあるマイコプラズマ感染症が増えてきており、そのような場合にはマクロライド系の抗菌薬が効きにくいです。
マクロライドの効きが悪い場合には、マクロライド耐性のマイコプラズマを考えて他の種類の抗菌薬への変更や、他の原因である可能性を考えて戦略を練り直します。

マイコプラズマ感染症になりやすい人・予防の方法

マイコプラズマ感染症になりやすい人

小さなコミュニティで感染が広がりますから、身近なところにマイコプラズマ感染症の患者がいる方は感染リスクが特に高くなります。マイコプラズマ感染症は学校の中で流行しやすいことが知られていますが、お子さんが家庭内にマイコプラズマを持ち込んで家庭内で蔓延する事例も多いです (参考文献 2) 。

予防の方法

予防にはコロナ禍でよく言われたような石けんでの手洗いアルコール消毒といった基本的な感染対策に加えて、マスクの着用が有効です (参考文献 2) 。
流行期に関してですが、以前は4年に1度程度のスパンでの流行がみられました。2020年からのコロナ禍で感染対策が徹底されたことが影響してか、2020〜2023年は大きな流行が見られなくなりました。2024年の冬からのシーズンにはマイコプラズマ感染症が猛威を振るいました。

マイコプラズマ感染症が流行しているシーズンにはマスコミや医療機関からの情報発信があることも多いですので、マイコプラズマ感染症が流行しているシーズンには改めて感染対策の徹底をすることが予防になります。

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