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膿胸
松本 学

監修医師
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)

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兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。

膿胸の概要

膿胸とは、細菌などの感染によって胸膜腔に膿がたまる病気です。
胸の中には、肺や心臓、気管などの重要な臓器があり、これらの臓器は「胸膜」という薄い膜に包まれています。

胸膜は2枚あり、胸の中で臓器を保護し、滑らかに動くようにする役割を持ちます。
2枚の胸膜の間には空間があり、これを「胸膜腔」といいます。
膿胸は胸膜に細菌が感染し、胸膜腔に膿がたまることで発症します。

膿がたまることで胸の痛みや発熱などの症状が現れ、肺がうまく膨らまないことで呼吸困難になることもあります。
膿胸が3ヶ月以上続くと慢性膿胸になったり、膿がたまる場所が気管支や肺とつながった場合は有瘻性膿胸(ゆうろうせいのうきょう)になったりします。

慢性膿胸や有瘻性膿胸に移行すると、治療が難しくなるため早めに治療を受けることが大切です。

膿胸

膿胸の原因

膿胸は肺の感染症や外科手術、外傷によって、口の中にいる常在細菌や黄色ブドウ球菌、嫌気性菌などが感染し、発症することがほとんどです。

肺の感染症

肺炎や肺化膿症などの病気が進行すると、膿胸につながることがあります。
高齢者や糖尿病、長期間のステロイド薬の使用などで免疫力が低下している人は注意が必要です。
また、肺結核が原因で膿胸になるケースでは慢性膿胸に移行する例が多く見られます。

外科手術後

外科手術後に、手術後の感染や縫合不全が原因で、膿がたまることがあります。
肺の一部を切除する手術を受けた後、縫合部分がうまくくっつかない場合などでは、気管支と呼ばれる空気の通り道に穴が開き、細菌が入り込んで膿がたまります。
心臓や肺、食道などの手術後にも膿胸が発生することがあります。

外傷

食道の損傷も膿胸の原因です。
誤って鋭いものを飲み込んでしまったり、胃カメラの検査中に食道が傷ついたりすると、食道に穴が開くことがあります。
この穴から細菌が入り込んだ場合、胸の中で感染を引き起こして膿がたまり、膿胸につながります。

膿胸の前兆や初期症状について

膿胸の症状は、胸の痛みや発熱、咳などです。胸の痛みは深く息を吸ったり、咳をすると強くなることが特徴です。
黄色や緑色の痰が出ることもあり、膿がたくさんたまると呼吸が苦しくなります。
慢性膿胸の場合、長い間症状が出ないこともあります。

膿胸の検査・診断

膿胸の検査では、始めに胸部の画像診断で胸水の存在を確認します。胸腔穿刺によって膿性の胸水が採取でき、胸水培養で細菌が検出された場合に膿胸と診断します。

画像検査

胸部レントゲンや胸部CTによって、胸の中の液体や胸膜の厚さを確認します。

胸腔穿刺

胸に細い針を刺して、肺と胸の壁の間にたまった液体や空気を取り除く処置です。
液体がたまっている場合は、胸に針を刺してその液体を取り出し、膿が含まれているか調べます。

培養検査

培養検査は、病気の原因となる細菌を特定するための検査です。

採取した検体から培養によって増やした細菌を調べることで、病気の原因となっている細菌を特定し、適切な治療法を見つけます。

膿胸の治療

膿胸の治療は、感染を治すための抗菌薬の使用や、膿を取り除くためのドレナージ(排液)です。
場合によっては手術が必要になることもあります。

抗菌薬の使用

検査で特定された細菌に対して効果的な抗菌薬を投与し、体全体の感染を抑えます。

胸腔ドレナージ

感染が起きている胸の中に細い管を入れて、膿や細菌を体の外に排出する治療法です。
胸の中を生理食塩水で洗浄したり、直接抗菌薬を注入したりすることもあります。

外科療法

治療がうまくいかない場合や、病気が慢性化してしまった場合は、外科手術が必要になることもあります。
手術では、問題となっている胸膜を取り除いたり、膿がたまりにくくするための小さな窓を胸に作ったりします。

  • 開窓術
    肋骨を一部取り除き、胸壁を外に開放して大気にさらす方法です。

  • 肺剥皮術(はいはくひじゅつ)
    厚くなっている一部の胸膜を取り除き、肺がしっかり膨らむようにする方法です。
    重症例では、問題となっている胸膜や肺を取り除く胸膜肺切除術を行うこともあります。

  • 胸郭形成術
    厚くなった胸膜や肋骨の一部を除去し、膿がたまっている胸腔をつぶす治療法です。

膿胸になりやすい人・予防の方法

高齢者や糖尿病の人、免疫力が低下している人は、細菌が感染することで膿胸を発症することがあります。
膿胸を予防するためには、以下の感染対策が大切です。

手洗い

外出先から帰ったら、石鹸と水でしっかり手を洗いましょう。
必要に応じて、アルコール消毒液なども活用してください。

人ごみを避ける

人が多く集まる場所を避けることにより、細菌やウイルスの感染を予防できます。
特に風邪やインフルエンザが流行している時期は、人混みを避けることで感染リスクを減らせます。

免疫力を高める

免疫力を高めるためには、適度な運動をして体力を維持したり、十分な睡眠をとって疲れをためないようにしましょう。
栄養バランスの取れた食事を心がけることも、体の抵抗力を高められます。

口腔ケア

口腔ケアによって口の中を清潔に保つことで、細菌やウイルスが体内に入りにくくなり、感染症のリスクを減らせます。

定期受診

定期的に医師の診察を受け、健康状態をチェックすることが重要です。
特に高齢者や持病のある方は、早期発見と早期治療が予防につながります。


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