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急性副鼻腔炎
渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

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1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

急性副鼻腔炎の概要

副鼻腔炎とは、副鼻腔内の粘液に膿がたまり炎症を起こしている病気です。発症してから4週間以内の副鼻腔炎を「急性副鼻腔炎」と呼びます。
鼻づまり、鼻漏(鼻汁が流れ出てきて自覚症状も伴うもの)などの呼吸器症状や頭痛、頬の痛みなどの症状を伴うのが特徴です。

副鼻腔には「篩骨洞」「蝶形骨洞」「前頭洞」「上顎洞」の4つの部位があり、中でも上顎洞が最も炎症が起きる可能性が高いです。小児の場合は、出生時は篩骨洞と上顎洞の2つのみで、成長とともに蝶形骨洞と前頭洞が発達していきます。

急性副鼻腔炎は、小児〜高齢者まで幅広い年代で発症します。適切な治療を行うことで多くのケースが10日以内に治癒しますが、慢性副鼻腔炎への移行(3ヶ月以上、副鼻腔炎の症状が続く場合)や髄膜炎、硬膜下血腫、眼窩膿瘍などの合併症が引き起こされるケースもあります。

急性副鼻腔炎

急性副鼻腔炎の原因

急性副鼻腔炎の主な原因はウイルスです。ライノウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルスなど、多くが上気道感染症(いわゆる風邪)の原因となるウイルスです。
細菌感染の原因菌は、肺炎球菌(30%程度)、インフルエンザ菌(30%程度)、モラクセラ・カタラーリス(20%程度)となっています。
(出典:急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン(2013年追補版)

ウイルスや細菌以外には、真菌が原因で引き起こされる急性副鼻腔炎もあり、糖尿病やHIVなど、免疫が低下している病気を伴っている場合がほとんどです。

また、アレルギーで局所的に浮腫を起こし、急性副鼻腔炎を引き起こす場合もあります。

副鼻腔の役割の一つは、吸い込まれた空気に含まれる汚染物質やほこり(以下、抗原)などを、副鼻腔を覆う粘液でろ過することです。ろ過された抗原は、微細な毛「繊毛」を使って、鼻腔と副鼻腔をつなぐ管を通り、鼻腔から排出されます。そのため、普段は無菌状態を保っています。
しかし、鼻腔や管で炎症が起こると、抗原を正常に排出できず、副鼻腔内で抗原となった物質が増殖し、粘液に膿がたまります。これが急性副鼻腔炎の状態です。

急性副鼻腔炎のほとんどがウイルス感染ですが、重大な症状が3〜4日続く場合や一般的な鼻汁や鼻漏といった症状が10日以上続く場合などは、細菌感染である可能性があります。

稀ではありますが、増殖した細菌が静脈を通り、脳や眼窩まで広がり、重篤な合併症を引き起こす場合もあります。小児の場合は、篩骨洞から眼窩感染、前頭同から頭蓋内合併症が起きるのが一般的です。

急性副鼻腔炎の前兆や初期症状について

上気道感染症の症状とともに、鼻づまりや鼻汁、後鼻漏(鼻からのどの奥に流れる鼻水のこと)、顔面の痛み、顔面の圧迫感、頭痛などの症状があらわれます。急性副鼻腔炎と上気道感染症の症状は同時期にあらわれることが多いため、鑑別は困難です。

ウイルス感染では、発症初期に頭痛や筋肉痛などの全身症状も生じることが多いです。高熱や膿性鼻汁(ドロドロの黄色い鼻水)などの強い症状が3〜4日間続く場合は細菌性の急性副鼻腔炎が疑われます。

また、細菌性の急性副鼻腔炎では、鼻閉や鼻汁、鼻漏などに加えて悪臭のする呼気や耳の痛み、咳嗽の症状が見られることがあるのも特徴です。

急性副鼻腔炎の検査・診断

成人の副鼻腔炎の診断基準は、患者が膿性の鼻漏、後鼻漏、鼻閉、顔面の圧迫感、顔面痛の中から少なくとも2つの症状、または1つの主要な症状に加えて2つ以上の副鼻腔炎の症状を抱えているかどうかで診断されます。小児の基準も同様ですが、鼻閉よりも膿性鼻汁または後鼻漏、ならびに湿性咳嗽(痰が絡んだ湿った咳)の有無に重点が置かれているのが違いとしてあります。

急性副鼻腔炎は、再発したものや他の合併症が考えられるもの、難治性のものではない限り、基本的に画像検査は行われません。
以下に該当する場合は、細菌感染が疑われ、重症化や合併症のリスクがあるため、CTやMRIを用いた画像検査が行われることがあります。

【細菌感染による急性副鼻腔炎の判断基準】

    • 重度の症状が3~4日以上続く:膿性の鼻水や顔面痛をともなう高熱(39度以上)
    • 主な症状が10日以上も改善しない
    • 改善傾向であったが、再び悪化した

急性副鼻腔炎では、他にも内視鏡検査(膿瘍の有無や鼻腔の状態を確認)や血液検査(炎症の程度の確認)、細菌培養検査(原因となっている細菌を特定する)が行われることがあります。

急性副鼻腔炎の治療

急性副鼻腔炎が軽症の場合はウイルス感染によるものの場合が多く、その場合、抗菌薬の投与による効果は期待できません。経過観察が妥当で、自然治癒による改善が認められるケースが多いです。

抗菌薬の投与で、薬剤に耐性をもった細菌が生まれる可能性があることを考慮して、軽症の場合は投薬せずに経過観察を行い、症状が悪化した場合に抗菌薬を投与するのが望ましいです。

一方、細菌感染による急性副鼻腔炎の場合は、重症化や合併症の予防のため、早期に抗菌薬による治療が必要になります。具体的な抗菌薬としては、ペニシリン系抗菌薬、セフェム系抗菌薬、マクロライド系抗菌薬などが挙げられます。

アレルギーによる炎症が原因の場合は、抗菌薬の効果が期待できないため、初期に限り抗ヒスタミン薬の投与が行われます。

重症度の高い急性副鼻腔炎の場合は、炎症が起きている副鼻腔の洗浄を行ったり、手術にて異常のある粘膜の除去などを行ったりする場合もあります。

細菌感染による急性副鼻腔炎の中でも、真菌感染の場合は抗菌薬などでは対処は困難なため、手術による除去を行います。

急性副鼻腔炎になりやすい人・予防の方法

喫煙習慣または喫煙歴のある人、喘息や慢性気管支炎の既往歴のある人、肥満の人、高齢者は急性副鼻腔を発症しやすいことがわかっています。

予防方法として、上気道感染症の予防や1年に1回のインフルエンザワクチン接種、生活習慣の改善を行うことでリスクを下げられる可能性があります。


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