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扁桃周囲膿瘍
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

扁桃周囲膿瘍の概要

扁桃周囲膿瘍は、細菌感染によって扁桃周囲に膿が溜まり、膿瘍を形成する疾患です。主に急性扁桃炎から進行し、左右差のある激しい喉の痛みや腫れ、発熱などの症状を引き起こします。
膿瘍が形成されると、喉の奥に膿が溜まるため、扁桃腺が大きく腫れ、飲み込みや呼吸が困難になることがあります。

感染が進行とともに喉の奥の構造が変化し、気道が圧迫されることがあります。重症化すると呼吸困難を引き起こす危険性があり、その場合は緊急治療が必要です。そのため、早期発見と迅速な対応が重要な疾患です。
治療方法としては、膿の排出と抗生物質の投与が一般的です。膿瘍が大きい場合や、症状が重篤な場合には、外科的な処置が必要となる可能性があります。早期に適切な治療を行うことで、症状の悪化を防ぎ、合併症のリスクを低減できるでしょう。

扁桃周囲膿瘍の原因

扁桃周囲膿瘍の主な原因は、細菌感染です。特に急性扁桃炎が悪化すると、扁桃腺の周囲に膿が溜まり、膿瘍を形成します。
一般的に、扁桃周囲膿瘍を引き起こす細菌としては、連鎖球菌やブドウ球菌、嫌気性菌などが挙げられます。これらの細菌が喉の奥に侵入し、扁桃腺周囲の組織に感染を広げることで膿瘍が形成されます。特に免疫力が低下している場合や、慢性的な扁桃炎を繰り返している場合には、扁桃周囲膿瘍のリスクは高いといえるでしょう。

また、口腔内の衛生状態が不良な点も、扁桃周囲膿瘍の原因の一つです。歯周病や虫歯など、口腔内の感染症がある場合には、細菌が喉に広がり扁桃周囲膿瘍を引き起こしかねません。さらに、喫煙やアルコールの過剰摂取も、白血球やマクロファージ、リンパ球からなる口腔内の免疫機能を低下させるため、扁桃周囲膿瘍のリスクを高めます。
一部には、扁桃周囲膿瘍は風邪やインフルエンザなどの上気道感染症から発展するケースもあります。上気道感染症により喉の粘膜が傷つき、細菌が侵入しやすくなるためです。
また、慢性的な鼻炎や副鼻腔炎を患っている人も、鼻腔内の細菌が喉に流れ込みやすく、喉の奥の組織に炎症が広がり、扁桃周囲膿瘍のリスクが高くなります。

扁桃周囲膿瘍の前兆や初期症状について

扁桃周囲膿瘍の前兆や初期症状は、急性扁桃炎の症状と似ていますが、より重篤で急速に進行します。

喉の痛み

最初に感じるのは喉の痛みであり、通常は片側に集中します。この痛みは非常に強く、飲み込むことが困難になることが多いです。また、耳にまで痛みが放散することがあります。

発熱

初期症状として、発熱が見られることが多く、体温は38度以上になることが一般的です。高熱が続くと、倦怠感や全身の痛みを伴うこともあります。これにより、日常生活に支障をきたしてしまうことがあります。

開口障害

また、口を開けることが困難になることも扁桃周囲膿瘍の特徴です。咀嚼筋の痙攣によって口を開きにくくなったり、扁桃が前方に押し出されたりすることで、開口や呼吸のしづらさがでてきます。この状態では、食事や会話が困難になります。

悪臭を伴う口臭

さらに、悪臭を伴う口臭も初期症状の一つです。膿瘍内で細菌が増殖することにより、口腔内に不快な臭いが発生します。これは、患者さん自身だけでなく、周囲の人にも気づかれることが多いです。

嚥下時の違和感

喉の奥に膿が溜まることで、嚥下時に違和感や痛みを感じることもあります。特に固形物を飲み込む際には強い痛みが生じ、水分さえも飲み込みづらくなるほどです。このため、食欲が低下し、脱水症状を引き起こす可能性もあります。
これらの初期症状が現れた場合、早期に耳鼻科を受診することが重要です。扁桃周囲膿瘍は迅速な治療が必要な疾患であり、適切な治療を受けることで症状の悪化を防ぐことができます。症状が軽いうちに対処することで、より迅速な回復が期待できるようになります。

扁桃周囲膿瘍の検査・診断

扁桃周囲膿瘍の診断は、患者さんの症状と喉の外観をもとに行います。

身体診察

まず行うのは、喉の視診です。扁桃腺の腫れや赤み、膿の有無を確認し、扁桃周囲の炎症の程度を判断します。視診だけでなく、触診も行い、扁桃腺周囲の硬さや痛みの程度を評価します。

血液検査

血液検査も診断に役立ちます。血液中の白血球数やC反応性蛋白(CRP)の値を測定することで、体内の炎症の程度を確認できます。白血球数が増加している場合やCRP値が高い場合は、体内で感染症が起きているかもしれません。

ファイバースコープ

さらに、喉の奥を詳細に観察するために、ファイバースコープを用いることもあります。ファイバースコープは細い管状のカメラです。喉の奥まで挿入して内部を直接確認できるため、膿瘍の大きさや位置、周囲の組織への影響を詳しく把握できます。

画像診断

必要に応じて画像診断を行うこともあります。特に膿瘍が大きく、喉の奥深くに広がっている場合には、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)を用いることで詳細な画像を得ることができます。これにより、膿瘍の正確な位置や大きさ、周囲の組織への影響を詳細に評価することが可能です。

扁桃周囲膿瘍の治療

扁桃周囲膿瘍の治療は、まず膿の排出を行うことが最優先です。膿を除去することで、炎症を抑え、症状の改善を図ります。患部に穿刺して膿を除去する方法か、膿瘍が大きい場合や症状が重い場合には、切開排膿術が行われることが一般的です。

内服治療

軽度の膿瘍や初期段階の場合には、抗生物質の内服治療が有効です。抗生物質は、細菌感染を抑えるために使用され、通常は10日から14日間の服用が推奨されます。患者さんは医師の指示に従い、処方された薬を正しく服用することが重要です。
また、痛みや腫れを軽減するために、鎮痛剤や抗炎症薬が処方されることもあります。これにより、飲み込みや呼吸の困難を軽減し、日常生活の質を改善することができます。さらに、十分な水分摂取や休息をとることで、体力を回復させることも大切です。

切開排膿術

切開排膿術は、局所麻酔を施した後、膿瘍部位に小さな切開を加えて膿を排出する方法です。手術自体は短時間で行われ、患者さんの負担も比較的少ないです。膿の排出後は、感染の拡大を防ぐために、抗生物質の投与が行われます。抗生物質は、細菌の種類に応じて適切なものが選ばれます。

扁桃摘出術

扁桃周囲膿瘍は再発する傾向があり、再発を防ぐために扁桃腺の摘出手術(扁桃摘出術)が検討されることがあります。特に、慢性的な扁桃炎を繰り返している場合や、膿瘍が再発するリスクが高い場合には、予防的な措置として行われることがあります。扁桃摘出術は、全身麻酔下で行われ、術後の回復期間も必要ですが、再発のリスクを大幅に低減する効果があります。

扁桃周囲膿瘍になりやすい人・予防の方法

扁桃周囲膿瘍になりやすい人

慢性的な扁桃炎を繰り返している人は、膿瘍のリスクが高いです。慢性扁桃炎は、細菌が繰り返し扁桃腺に感染することによって引き起こされ、これが膿瘍の形成につながります。また、免疫力が低下している人もリスクが高く、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすいです。
口腔内の衛生状態が悪い人も、扁桃周囲膿瘍になりやすいです。歯周病や虫歯などの口腔内の感染症があると、細菌が喉に広がりやすくなります。さらに、喫煙やアルコールの過剰摂取も、口腔内の防御機能を低下させ、膿瘍のリスクを高めます。

扁桃周囲膿瘍の予防方法

まず口腔内の衛生状態を保つことが重要です。毎日の歯磨きや定期的な歯科検診を行い、歯周病や虫歯を予防することが大切です。また、適切なうがいを行い、喉の粘膜を清潔に保つことも有効な予防方法になります。
免疫力を維持するためには、バランスの取れた食事と十分な睡眠が大切です。栄養バランスの取れた食事は、体の免疫機能を高めてくれます。特にビタミンCやビタミンDを多く含む食品を摂取することで、感染症に対する抵抗力を強化できるでしょう。また、ストレスを軽減し、適度な運動を行うことも免疫力の向上に寄与します。

喫煙や過度なアルコール摂取も、免疫力低下のもとになり、感染リスクを高めるため注意が必要です。

また、風邪やインフルエンザの予防も重要です。感染症の流行時には、人混みを避け、手洗いやマスクの着用が欠かせません。インフルエンザの予防接種を受けることで、感染リスクの減少につながります
日常生活の中で注意を払い、適切な予防策を講じることで、扁桃周囲膿瘍の発症を防ぎましょう。

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