

監修医師:
五藤 良将(医師)
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
副鼻腔炎の概要
副鼻腔炎、または蓄膿症とは、副鼻腔の粘膜に炎症が生じる病気です。風邪やアレルギーが原因で鼻の粘膜が腫れ、異物や分泌物が副鼻腔内に滞留し、膿が溜まることで発症します。症状としては、ドロドロした鼻水や、頬や目の周りに痛みが生じます。 症状が4週間以内で治まる場合は急性副鼻腔炎、約3ヵ月以上続く場合は慢性副鼻腔炎と診断されます。 鼻の中は、鼻腔と副鼻腔で構成されています。 副鼻腔とは、鼻腔の周囲に存在する空洞のことで、鼻腔と小さな穴でつながっています。 頬の裏側に上顎洞、両目の間に篩骨洞(しこつどう)、額の裏に前頭洞、鼻の奥深部に蝶形骨洞(ちょうけういこつどう)と、左右合わせて8個の副鼻腔があります。 鼻腔と副鼻腔は、粘液を分泌する細胞でできた粘膜で覆われています。 ほこりの粒子は、副鼻腔に入ると粘液に捕らえられ、線毛という小さな毛の働きで、狭い開口部を通って鼻腔に運ばれます。副鼻腔から分泌された粘液は、線毛が鼻腔へ押し出します。風邪やアレルギーなどでこの働きが滞ると、副鼻腔炎につながります。副鼻腔炎の原因
副鼻腔炎は、鼻の周囲にある副鼻腔の粘膜に炎症が生じる病気です。副鼻腔炎の原因は多岐にわたり、症状の持続期間や性質によって急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎、そして難治性の好酸球性副鼻腔炎に分類されます。 急性副鼻腔炎は、主にウイルスや細菌による感染が原因で発生します。風邪を引いた後によく見られ、鼻腔の炎症が副鼻腔に波及し、副鼻腔の入口が塞がることで、膿が内部に滞留します。これにより、頭痛や顔面痛、眼痛などが引き起こされることがあります。 慢性副鼻腔炎は、副鼻腔炎の症状が約3ヵ月以上持続する場合に診断されます。 主に急性副鼻腔炎が長引いた結果として発症しますが、アレルギー反応、鼻中隔弯曲症、中甲介蜂巣など骨構造の異常、または環境因子(ハウスダスト、花粉)が関与することがあります。 炎症が長引くことで、粘膜が腫れ上がり、鼻茸(鼻ポリープ)の形成に至ることもあります。 また、好酸球性副鼻腔炎という難治性の副鼻腔炎もあります。 好酸球性副鼻腔炎は、慢性副鼻腔炎の一形態です。アスピリン不耐症や気管支喘息の患者さんに多く見られる傾向にあり、両側の鼻に鼻ポリープが形成されやすい特徴があります。 好酸球が関与する炎症は、慢性副鼻腔炎よりも再発しやすく、ステロイド治療に一時的に反応するものの、根治は難しいとされています。副鼻腔炎の前兆や初期症状について
副鼻腔炎の前兆や初期症状として、主に以下のものが見られます。- 鼻水の変化: 最初は透明でサラッとしていた鼻水が、次第にドロッとした質感に変わります。
- 色のついた鼻水や臭い鼻水: 鼻水に黄色や緑色が見られる場合や、生臭い臭いを感じる場合は、膿が鼻の奥に溜まっている可能性があります。
- 鼻詰まり: 常に鼻が詰まっており、鼻をかんでもスッキリしない状態が続きます。
- 後鼻漏: 鼻水が喉に垂れる感じがあり、ネバネバとした不快感が伴うことがあります。
- 頭痛や頭重: 頭がもやもやして集中できない、頭が重いなどの症状も副鼻腔炎の前兆の一つです。
- 発熱
- 顔面の痛み: 副鼻腔の腫れにより、頬や歯、目の奥に違和感や痛みを感じることがあります。
- 匂いの変化: 嗅覚が鈍くなり、食べ物の匂いや味がわかりにくくなることがあります。
副鼻腔炎の検査・診断
副鼻腔炎の診断は視診と画像診断が基本とされます。 鼻腔形態やポリープの有無、鼻水の流れる箇所を詳細に確認します。 視診と前鼻鏡検査- 前鼻鏡という器具で、肉眼で鼻内を観察します。
- ファイバースコープという細長いカメラで、鼻腔内を詳細に観察します。鼻汁の性状や鼻茸(鼻ポリープ)の有無、膿の流出などを確認します。
- レントゲン:副鼻腔の炎症の概略を把握します。
- CTスキャン:副鼻腔の粘膜肥厚、液体の貯留、骨構造の変化を詳細に観察します。CTにて副鼻腔や固有鼻腔に粘膜肥厚が認められた場合、副鼻腔炎の可能性があります。
- MRI:炎症や腫瘍の鑑別に役立ち、組織の性質をより詳細に観察します。
- 鼻腔通気度検査:鼻詰まりの程度を数値化し、症状の重さを評価します。
- 基準嗅覚検査:嗅覚障害の有無を確認します。
- 組織生検:鼻茸(鼻ポリープ)などの組織を一部採取し、組織検査を行います。好酸球性副鼻腔炎が疑われる場合は、鼻茸中に好酸球の浸潤の程度を確認します。
- 血液検査とアレルギー検査:全身的な炎症の指標やアレルゲンに対する反応を調べ、治療方針の決定に役立てます。
副鼻腔炎の治療
副鼻腔炎の治療方法は、抗菌薬による短期間の治療が基本ですが、症状の種類(急性、慢性、好酸球性)によって異なります。 【急性副鼻腔炎の治療】 約1週間抗生物質を投与します。加えて、症状を軽減するために、抗アレルギー薬や去痰薬、噴霧式のステロイド点鼻薬が用いられることもあります。 症状が軽減した後は、再発防止のために鼻洗浄が推奨されます。 【慢性副鼻腔炎の治療】 慢性副鼻腔炎では、以下の保存的治療が行われます。- 1. 副鼻腔にある鼻水をきれいにする処置
- 2. ネブライザー治療(超音波で霧状になった薬剤を吸い込むことで、炎症を和らげる)
- 3. 内服薬の処方(抗生剤や副鼻腔の粘膜を正常化する薬など) 慢性副鼻腔炎の治療には、マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシンなど)を低用量で数ヶ月間内服する治療法が有効とされる場合もあります(抗炎症作用を期待)。
副鼻腔炎になりやすい人・予防の方法
副鼻腔炎にかかりやすいのは、あるリスク要因を持つ方々であり、予防には日常生活の工夫が重要です。 【副鼻腔炎になりやすい方】- 高齢の方:年齢が高い程免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなるため、副鼻腔炎のリスクも増加すると考えられます。
- 肥満傾向のある方:肥満は全身の炎症を引き起こしやすく、副鼻腔炎を誘発する可能性があります。
- 喫煙歴のある方:喫煙は呼吸器の健康に悪影響を与え、炎症を引き起こすため、副鼻腔炎を発症しやすくなります。
- 喘息や慢性気管支炎の患者さん:これらの呼吸器系の疾患を持つ方は、副鼻腔炎になりやすいとされています。
- 手洗いやうがい:こまめに行い、風邪や感染症を予防しましょう。また、風邪の季節にはマスクの着用も推奨されます。
- 鼻洗浄:鼻洗浄は、副鼻腔に溜まった異物や病原体を洗い流し、炎症を抑えるのに役立ちます。
- 禁煙:喫煙により粘液を出す機能が停止するため、禁煙が推奨されます。
- お酒を控える:飲酒により副鼻腔の出口の粘膜がむくみ、粘液が排出できなくなると、鼻詰まりの症状を悪化させることがあります。
- 適度な運動とバランスの取れた食事:免疫力を高めるのに役立ちます。
- 医療機関の受診:風邪の症状が長引く場合や、副鼻腔炎を疑う症状が現れた際は、早目の耳鼻咽喉科の受診が推奨されます。初期段階での治療が、慢性化を防ぐ鍵となります。
参考文献




