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咽頭結膜熱(プール熱)
本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

咽頭結膜熱(プール熱)の概要

咽頭結膜熱(プール熱)とは、アデノウイルスの感染によって起こる発熱・喉や目の腫れを伴う感染症です。アデノウイルスはインフルエンザウイルスなどとは異なり、7~8月の暑い時期に流行します。
アデノウイルスは50以上の型が確認されていますが、咽頭結膜熱(プール熱)を起こすのは主に1型・2型・3型・5型・6型・7型です。小児の間で流行が広がることが多く、咽頭結膜熱(プール熱)患者の約6割は5歳以下と報告されています。
1~2週間で自然治癒することがほとんどですが、まれに重症の肺炎に進行するため、適切な治療が必要です。

咽頭結膜熱(プール熱)の原因

咽頭結膜熱(プール熱)は、アデノウイルスの感染によって起こる感染症で、感染力が強いため爆発的に広がります。アデノウイルスの主な感染経路は、以下の2つです。

  • 飛沫感染
  • 接触感染

それぞれ以下の内容を確認しましょう。

飛沫感染

飛沫感染とは、感染者の唾液や体液などが飛沫となって飛び散り、飛沫が口や鼻から侵入して起こる感染です。アデノウイルスを含んだ飛沫が目・鼻・口の粘膜に付着すると、ウイルスが体内に侵入して感染します。くしゃみや咳の飛沫は1~2m飛ぶといわれており、感染者の飛沫を2m以内で浴びると感染の危険が高まります。飛沫感染と空気感染の違いは、2m以上飛んで空気中に浮遊する極めて小さな飛沫核によって感染するかどうかです。アデノウイルスによる咽頭結膜熱では、空気感染は起こらないと考えられています。

接触感染

接触感染とは、感染者の唾液や体液が付着したものを触ることで起こる感染です。咽頭結膜熱はプール熱とも呼ばれ、かつては汚染されたプールの水を介して感染が広がっていました。しかし、現在のプールは適切に塩素消毒されているため、プールの水によって感染が広がることはありません。小児はプールの際にタオルを友人と共有したり、裸で触れ合ったりすることが感染の原因で、基本的には接触感染です。

咽頭結膜熱(プール熱)の前兆や初期症状について

咽頭結膜熱(プール熱)は小児がかかりやすい感染症で、小児は自分で症状を訴えることができないことも少なくありません。

以下のような咽頭結膜熱(プール熱)の兆候が見られたら、子どもは小児科、大人は内科を受診しましょう。

  • 発熱
  • 喉の腫れ・痛み
  • 目の充血・目やに
  • 咳・肺炎

以下が詳細です。

発熱

咽頭結膜熱(プール熱)の症状は発熱から始まり、38~39度の熱が3~5日間続きます。一般的な風邪症状と区別が付きにくいですが、小児が複数人で交流した後に発熱した場合は、感染症の可能性が高いでしょう。

喉の腫れ・痛み

咽頭結膜熱(プール熱)に特徴的な症状は、喉の腫れや痛みです。扁桃腺が腫れるといびきが大きくなることもあり、就寝時に息苦しさを訴えることもあります。

目の充血・目やに

咽頭結膜熱(プール熱)では、目の充血や目やにがよく見られます。感染者とのタオルの共有によって目の粘膜から感染し、目の症状から喉に広がることも少なくありません。一般的に目の症状は片方の目から始まり、上のまぶたより下のまぶたの裏で強い症状が現れます。通常であれば、目に永続的な障害が残ることはありません。

咳・肺炎

アデノウイルス7型に感染した場合は、呼吸器症状を起こしやすくなります。乳幼児や高齢者では重症の肺炎に進行することがあり、ひどい咳や息苦しさを感じる場合は早めに医療機関を受診してください。 

咽頭結膜熱(プール熱)の検査・診断

咽頭結膜熱(プール熱)の症状は、一般的な風邪症状と区別がつきにくいことが少なくありません。

病院では、主に以下の方法を用いて咽頭結膜熱(プール熱)を診断します。

  • 視診
  • 迅速検査キット

それぞれの内容を解説します。

視診

咽頭結膜熱(プール熱)では、目や口腔内の粘膜に特徴的な症状がでるケースが多く、視診によって診断します。扁桃腺が腫れて白い膿がついていたり、目の結膜が充血していたりなどの症状があれば、咽頭結膜熱(プール熱)の可能性が高いでしょう。

迅速検査キット

咽頭結膜熱の確定診断には、アデノウイルスの迅速検査キットが用いられます。患者さんの鼻や喉から綿棒で体液を採取し、検査キットによって40~70分でアデノウイルスの有無を確認できます。迅速検査キットではアデノウイルスの型までは特定できないため、症状が重い場合にはより詳しい検査で病原ウイルスの特定が必要です。体液からウイルスを培養して単離する場合や、PCR検査が行われる場合もあります。

咽頭結膜熱(プール熱)の治療

咽頭結膜熱(プール熱)の病原となるアデノウイルスに対しては、特効薬やワクチンはありません

咽頭結膜熱(プール熱)の治療は基本的に対症療法となり、主な治療法は以下の3つです。

  • 安静・経過観察
  • うがい薬・目薬
  • 解熱剤

こちらの内容を確認しましょう。

安静・経過観察

咽頭結膜熱(プール熱)はほとんどの場合、3~5日間で自然治癒するため、安静にして経過観察となります。十分に水分を摂取し、身体を冷やさないようにして安静にしてください。喉の痛みが強い場合には食事を取れないことがありますが、スポーツドリンクなどで栄養を補給しましょう。

うがい薬・目薬

咽頭結膜熱(プール熱)で喉や目の症状が強い場合には、対症療法としてうがい薬や目薬を使用します。特に目の痛みや充血が強い場合は、眼科的な治療が必要です。粘膜の炎症を鎮める抗炎症点眼薬を用いて、症状を緩和しながら自然治癒を促します。

解熱剤

発熱が続く場合には、解熱剤を用いて症状を緩和します。発熱はウイルスに対する人体の免疫反応であり、自然治癒のために必要な現象です。しかし、発熱が数日間続くと体力を消耗してしまうため、解熱剤を使用して身体を休ませましょう。

咽頭結膜熱(プール熱)になりやすい人・予防の方法

咽頭結膜熱(プール熱)はアデノウイルスの感染症であるため、感染対策を徹底することで予防できます。小児の間で感染が広がりやすく、小児から大人へ感染する場合もあるため、大人と子どもで一緒に感染対策に取り組みましょう。

アデノウイルスの主な感染対策は、以下の3つです。

  • 手洗い・うがい
  • 感染者との接触を避ける
  • タオルなどは共有しない

以下が詳細です。

手洗い・うがい

アデノウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染であるため、こまめな手洗いとうがいによって感染リスクを大幅に減らせます。アデノウイルスはアルコールが効きにくいウイルスであるため、アルコール消毒ではなく、流水と石鹸による手洗いを徹底しましょう。喉からの感染予防には、こまめなガラガラうがいが有効です。

感染者との接触を避ける

咽頭結膜熱(プール熱)を発症している感染者とは、接触を避けることが第一の感染対策です。発熱や目の充血などの症状がある場合は、人との接触を避けて治療に努めましょう。咽頭結膜熱(プール熱)は学校保健安全法上の学校感染症の一つであり、症状がなくなってから2日間は登園登校が禁止となります。

タオルなどは共有しない

咽頭結膜熱はプール熱と呼ばれ、プールでタオルなどを共有した場合には接触感染のリスクが高くなります。アデノウイルスの潜伏期間は5~7日であるため、症状がなくてもタオルなどは他人と共有しないようにしましょう。また、ビート板や浮き輪などを共有する場合は、流水でしっかり洗い流してから使用してください。

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