監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
エマヌエル症候群の概要
エマヌエル症候群は、染色体の異常によって引き起こされる先天性疾患です。
エマヌエル症候群は、人間が本来持っている46本の染色体より多く、余分な染色体を持って生まれてきてしまう「トリソミー」に分類され、「11/22混合トリソミー」などと呼ばれることもあります。
発症原因として、染色体の一部が入れ替わる「転座」が関わると考えられています。転座染色体を持っているだけ(保因者)では発症しませんが、両親のどちらかが保因者である場合、その両親から生まれる子どもには発症リスクがあるとされています。
エマヌエル症候群の典型的な症状として、先天性の口蓋裂や心疾患、小顎症、特異顔貌、精神運動発達遅延がみられます。
腎臓や肛門の奇形が生じたり、けいれんや中耳炎などを繰り返したりすることも多いです。
新生児にエマヌエル症候群を疑う症状がみられる場合は、染色体検査によって確定診断がおこなわれます。
エマヌエル症候群は予後不良であると考えられていますが、症例数が少ないこともあり詳細は不明な点が多い疾患です。治療は対症療法が中心で、各症状に応じた検査と治療がおこなわれます。
発話が少なくなるケースが多く、コミュニケーションの代替方法の検討などが必要とされています。
合併症に対する長期的な医療的サポートも必要であり、早期診断と適切な治療介入により、生活の質を向上させることが大切です。
家族や医療チームの継続的なサポートも重要な役割を果たします。
エマヌエル症候群の原因
エマヌエル症候群は、人間が本来持っている46本の染色体より多く、余分な1本の染色体(47本目)を持って生まれてくることにより発症する「トリソミー」の一種に分類されています。
エマヌエル症候群では、染色体の一部が入れ替わる「転座」がおきたあと、そこから「転座派生染色体」という過剰な染色体が生じる、やや複雑な過程をたどるとされています。
具体的には、両親のどちらかが11番と22番の染色体が転座した「転座染色体」を保有している場合、生まれくる子どもにエマヌエル症候群の発症リスクがあることがわかっています。転座染色体を持っているだけでは特に症状は出ず、転座染色体がもとになって「22番転座派生染色」という過剰な染色体が1本生じてしまうと、エマヌエル症候群を発症するものと考えられています。
エマヌエル症候群の前兆や初期症状について
エマヌエル症候群では、出生時の体重はやや小さいことが一般的です。
子宮内発育不全により、胎児の頃からエマヌエル症候群が疑われることもあります。
新生児期から呼吸障害や筋緊張低下が多く見られ、哺乳障害により体重増加が難しくなることがあります。
特異的な顔貌に加え、小頭症や耳前の小孔(小さな穴)、小突起、眼裂斜上などがみられるケースも多いです。
ピエールロバン連鎖によって口蓋裂や小下顎が生じ、呼吸状態に影響を与えることもあります。
先天性心疾患の併発により、心室中隔欠損や心房中隔欠損、動脈管開存など、より重篤な症状を持って生まれてくるようなこともあります。
エマヌエル症候群では、成長に伴い精神運動発達遅延が顕著になります。
発語が少ないことも特徴で、コミュニケーション能力の発達に影響を与えます。
また、先天性股関節脱臼を呈することもあり、歩行などの運動発達にも影響を及ぼす可能性があります。
また、エマヌエル症候群は合併症のリスクが高く、あらゆる感染症や中耳炎などによって、聴力低下や視力低下が起こりやすくなります、
難治性のけいれんを繰り返すケースも多いため、生活の質に大きな影響を与えます。
エマヌエル症候群の検査・診断
胎児の子宮内の発育不全のほか、特異顔貌、口蓋裂、小下顎、先天性心疾患などがある場合はエマヌエル症候群を疑い、染色体検査による確定診断をおこないます。
染色体検査では「Gバンド」という方法が用いられ、47本目にあたる余分な染色体である「22番派生染色体」の存在を確認します。
また、症状に対してさまざまな検査が実施されます。
心臓の評価をするために超音波検査や胸部単純レントゲンが用いられ、けいれん発作に対しては脳波検査などがおこなわれます。
エマヌエル症候群の治療
エマヌエル症候群では、根本的な治療が確立されていません。したがって各症状に対する対症療法が基本になります。
特に幼少期には、心臓や呼吸器の症状をコントロールすることが予後を悪化させないために重要です。
発育障害に対しては、胃食道逆流の治療や経腸栄養をおこない、適切な栄養摂取を確保します。
異所性肛門や鼠径ヘルニア、心血管奇形、口蓋裂、股関節脱臼などの合併症には、外科的手術を含む標準的な治療が選択されます。
聴覚障害や眼疾患、てんかん発作に対しても、それぞれ標準的な治療がおこなわれます。
精神運動発達障害に対しては、運動療法や作業療法、言語療法などのリハビリテーションが実施されます。
言語能力が制限されている場合、コミュニケーションを容易にするための代替方法が検討されます。
歩行がおこなえそうな場合は、歩行器の使用や介助者の補助も視野に入れてサポートがおこなわれます。
エマヌエル症候群はこれらの包括的なアプローチにより、患者のQOL向上を目指します。
治療は個々の患者の状態に合わせて調整され、長期的なケアと支援が必要になります。
エマヌエル症候群になりやすい人・予防の方法
エマヌエル症候群は、両親のどちらかが保因者である場合に、発症リスクが高いと考えられています。
予防方法は現在のところ確立されていません。
エマヌエル症候群は遺伝性の疾患であるため、両親が転座染色体の保因者であるかどうかを知ることは、参考情報として重要となる可能性があります。
医療機関による遺伝カウンセリングなどを利用すると、リスクを評価する判断材料となるでしょう。
エマヌエル症候群では、早期発見および出生直後からの適切な治療の介入が望まれます。