監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
凍傷の概要
凍傷は、極度の寒さにさらされることで皮膚や組織に傷害が生じた状態です。
特に厳しい寒さや強風、高地での活動中に発生しやすく、登山中の遭難や寒冷地での漁業中の事故、冬季スポーツでの不適切な装備などが凍傷の原因です。
凍傷は、足の指先や耳、手、頬など、露出しやすい部分に多く見られます。
また、アルコールを過剰に摂取して泥酔した方や認知症のある方も受傷リスクが高まります。
症状は、皮膚が白くなり、感覚が鈍くなりますが、重度の場合では皮膚が黒くなり壊死することもあります。
寒さにさらされると、局所的または全身的に血管が収縮し、血流が減少することで血栓が形成されることがあります。
全身が長時間寒さにさらされた場合には、昏睡状態になり命に関わることがあるため、一刻も早い治療が求められます。
凍傷の原因
凍傷は、皮膚が極度の寒さにさらされ、組織が損傷されることが原因で発症します。
凍結による組織への直接的なダメージにくわえて、血液の流れが悪くなることで皮膚や皮下組織、血管などが損傷を受けます。
通常、冬山の登山や冬のスポーツ、極低温の物質を扱ったり極低温の場所で作業する仕事中の事故などが原因で発症します。
なお、凍瘡(しもやけ)は組織の損傷を伴わない炎症のため、凍傷とは違う病気です。
凍傷の前兆や初期症状について
凍傷の前兆や初期症状には主に以下のようなことが挙げられます。
- 皮膚が冷たく感じる
- 皮膚の感覚が鈍くなる
- 皮膚の表面に赤みや腫れが現れる
凍傷は寒さにさらされた組織に起こるため、露出されやすい指や足、耳、鼻、頬などが特に影響を受けやすい部位です。
凍傷の深さは皮膚の損傷によって次の3つに分けられます。
1度凍傷
最も軽い状態の凍傷です。
皮膚の表面に赤みや腫れが現れ、温めると痛みを感じることがあります。
2度凍傷
皮膚の深い層(真皮)にまで凍傷が達し、水ぶくれができることがあります。
3度凍傷
血の入った水ぶくれや潰瘍、黒く壊死した皮膚が3度の凍傷です。脂肪や筋肉、骨にまで凍傷が及びます。
凍傷の検査・診断
凍傷は、受傷時の状況や損傷の状態を観察することで、特別な検査などを行わなくても、比較的容易に診断されます。
ただし、発症初期では凍傷の深さや重症度を正確に把握することは難しく、症状の程度を調べるのに時間がかかることがあります。
凍傷の治療
凍傷の治療は、できるだけ早期に患部を温めることが重要です。
凍傷の応急処置の方法としては、凍ったり濡れたりした衣服を脱がせることが第一です。
低体温症の可能性もあるため、乾いた衣服や毛布で体を覆って体温の低下を防ぎます。
ドライヤーなどの乾いた熱を使って温めると、皮膚が乾燥してしまう上、適切な温度でない場合が多いため、使用は避けてください。
つぎに、患部を約40℃のぬるま湯で10〜30分かけて完全に温めます。
このとき、介助者する方の感覚で触れて気持ち良いと感じる温度より熱くしないよう注意しましょう。
また、組織のさらなる損傷を防ぐために、患部をさすったり、もんだり、締め付けたりしないようにします。
保温後に激しい痛みや水疱、患部の壊死(黒色に変化)などが見られた場合は、すぐに医療機関での治療が必要です。
医療機関での凍傷の治療は、症状に応じて以下の方法を組み合わせて行います。
急速融解法
約40℃の湯に患部を入れて凍結を急速に解除します。
組織中の氷の結晶が速やかに溶けるため、時間をかけて温めるより血管が拡張し凍結した組織のダメージを最小にできます。融解中は通常、激しい痛みを伴います。
低体温症で体温が35℃以下の場合、手足から温めると逆効果になることがあります。
その場合は体の中心部を温めることが優先されます。
局所治療
温めた後に進行する組織のダメージを抑えるために、血管を広げる薬や交感神経をブロックする治療、高気圧酸素療法などを行います。
Ⅱ度以上の凍傷が発生した場合、凍傷部分を温めた後は、やけどや皮膚の潰瘍と同様の治療を行います。
患部を高くして安静にすることで浮腫を軽減し、軟膏などで損傷部の感染を防ぐことも重要です。
外科的治療
通常、損傷から3週間ほど経つと、傷の状態がはっきりしてきて、皮膚が再生し始めます。壊死した組織の境界がはっきりと見えるようになった時点で、必要に応じて皮膚移植や切断の手術を行います。
凍傷になりやすい人・予防の方法
凍傷になりやすい人は、やせた方や高齢者、寒冷地に不慣れな方です。
また、職業として極低温の物や場所で作業する場合もリスクが高くなります。
具体的には、冬山登山者や寒冷地での漁業従事者、冬季スポーツを楽しむ方などが凍傷になりやすいと言えます。
認知症の方やアルコール摂取した場合も判断力や知覚が低下するため危険です。
凍傷を予防するためには、まず適切な防寒対策が重要です。
寒冷地での活動時には、保温性の高い衣服や靴を着用し、特に手足や耳、鼻などの末端部分をしっかりと保護しましょう。
寒冷地での活動前には、天候や気温を確認し、無理な行動を避けることも大切です。
関連する病気
- 凍瘡
- 低体温症
参考文献