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男性乳がん
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

男性乳がんの概要

乳がんと聞くと、多くの人が女性の病気というイメージを持つかもしれません。しかし、男性にも乳腺組織があり、そこに発生するがんを「男性乳がん」と呼びます。乳がん全体のうち、男性乳がんは約1%と非常にまれな病気ですが、決して無視できるものではありません。 男性の乳腺組織は女性に比べて小さいため、乳がんが発生すると短期間で進行する可能性があります。また、男性は乳がんを疑うことが少なく、しこりができても放置してしまうことが多いため、診断が遅れる傾向があります。そのため、発見されたときにはすでに進行していることも少なくありません。 女性の乳がんと同様に、男性乳がんも早期発見・早期治療が重要です。特に中高年の男性に発症しやすいため、乳房に違和感を覚えたら放置せず、早めに医療機関を受診することが大切です。

男性乳がんの原因

男性乳がんの主な原因として、ホルモンのバランス異常が挙げられます。特に、エストロゲン(女性ホルモン)の影響が強くなると、乳腺の細胞が異常増殖し、がん化する可能性が高まります。男性でもエストロゲンはわずかに分泌されていますが、通常はテストステロン(男性ホルモン)が優位に働くため、乳がんが発生することはほとんどありません。しかし、そのバランスが崩れることで、乳がんのリスクが上昇します。 また、遺伝的要因も関与しており、特に「BRCA1」「BRCA2」といった乳がん関連遺伝子に変異がある場合、男性でも乳がんのリスクが高まります。女性乳がんの家族歴がある男性は、自身のリスクについても注意が必要です。 さらに、肝硬変や肥満、慢性アルコール摂取なども乳がんのリスク要因とされています。これらの疾患や生活習慣は、エストロゲンの代謝に影響を与えることで、乳腺のがん化を促進する可能性があります。

男性乳がんの前兆や初期症状について

男性乳がんの初期症状として最も多いのは、乳房のしこりです。通常、痛みを伴わないことが多いため、しこりに気づいても放置されがちです。しかし、しこりが硬く、境界がはっきりしない場合は乳がんの可能性があります。 また、乳頭のへこみや変形、乳頭からの分泌物(特に血が混じる場合)、乳房の皮膚の赤みやひきつれも乳がんの兆候となります。これらの症状が現れた場合、早急に医療機関を受診することが推奨されます。 進行すると、腋の下のリンパ節が腫れることがあります。これは、がん細胞がリンパ節へ転移し始めているサインであり、注意が必要です。また、まれに乳房の痛みを感じることもありますが、痛みの有無にかかわらず、違和感を覚えたら専門医の診察を受けることが重要です。

男性乳がんの検査・診断

男性乳がんの診断には、いくつかの検査が行われます。まず、視診や触診によって乳房のしこりの状態を確認し、異常が疑われる場合は、さらに詳しい検査が実施されます。 画像検査としては、マンモグラフィー超音波検査(エコー)が一般的です。マンモグラフィーは、乳腺の異常を確認するためのX線検査であり、しこりの性質や乳腺の変化を詳細に調べることができます。超音波検査では、しこりの大きさや内部構造を確認し、がんの可能性を評価します。 確定診断のためには、生検が行われます。細い針を用いてしこりの組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べることで、がん細胞の有無を確認します。また、がん細胞のホルモン受容体の状態を調べることで、治療方針を決定するための情報を得ることができます。 さらに、乳がんが転移していないかを調べるために、CT検査骨シンチグラフィーなどが実施されることもあります。特に、腋の下のリンパ節が腫れている場合は、がんが広がっていないか慎重に評価する必要があります。

男性乳がんの治療

男性乳がんの治療法は、女性乳がんと基本的に同じです。主な治療法としては、手術、ホルモン療法、放射線療法、化学療法が挙げられます。 手術は最も一般的な治療法であり、乳房のがん組織を取り除く乳房切除術が行われます。男性の乳腺は女性に比べて小さいため、しこりのある部分だけを切除する部分切除ではなく、乳房全体を切除することが多くなります。また、リンパ節への転移が疑われる場合は、リンパ節も一緒に切除することがあります。 ホルモン療法は、エストロゲンの影響を抑えることでがんの進行を防ぐ治療法です。多くの男性乳がんはホルモン受容体陽性であるため、抗エストロゲン薬(タモキシフェンなど)が有効とされています。 放射線療法は、手術後に残ったがん細胞を除去するために行われることがあります。特に、リンパ節転移がある場合や、がんが大きかった場合には、再発予防のために放射線治療が推奨されます。 化学療法は、進行がんや再発リスクが高い場合に用いられます。抗がん剤を使用することで、がん細胞の増殖を抑えることができますが、副作用として吐き気や脱毛、倦怠感が生じることがあります。

男性乳がんになりやすい人・予防の方法

男性乳がんになりやすい人には、遺伝的要因ホルモンの異常が関与しています。特に、BRCA遺伝子変異がある人や、女性乳がんの家族歴がある人はリスクが高いため、定期的な検診が勧められます。また、肝硬変や肥満が女性ホルモンに影響を与えることもあり、これらの疾患を予防することが乳がん予防につながります。 予防のためには、十分な運動が大切です。また、アルコールの過剰摂取を避け、バランスの良い食事をとることが重要です。また、乳房に異常を感じた場合は、早期に医療機関を受診し、早期発見・早期治療を心がけることが重要です。

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