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クラインフェルター症候群
白井 沙良子

監修医師
白井 沙良子(医師)

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小児科専門医(日本小児科学会)。「International Parenting & Health Insutitute Sleep Consultant(妊婦と子どもの睡眠コンサルタント)」保有者。慶應義塾大学医学部卒業。『はたらく細胞BABY』医療監修。2児の母。

クラインフェルター症候群の概要

クラインフェルター症候群は、X染色体を過剰に持つことで発症する男性の性染色体異常の疾患です。通常、男性の性染色体は「XY」ですが、クラインフェルター症候群では「XXY」などX染色体が過剰に存在します。男性の性染色体異常の疾患(性染色体の欠損や過剰によって生じる疾患)のなかでは最も多く、出生男児の500〜1000人に1人の割合で発症すると考えられています。

外見は男性で、一般的に高身長、やせ型、長い手足という身体的特徴を生じることが多いといわれています。症状が目立たない場合も多く、不妊治療などがきっかけではじめて見つかることも多い疾患です。染色体検査により診断され、男性ホルモンを補充する治療などが行われます。

クラインフェルター症候群は性染色体異常によって生じる疾患であるため、予防方法や根本的な治療方法はありませんが、症状に応じて男性ホルモン投与などの治療が検討されます。

クラインフェルター症候群

クラインフェルター症候群の原因

クラインフェルター症候群の原因は、性染色体異常です。通常、性染色体について男性は「XY」、女性は「XX」ですが、クラインフェルター症候群ではX染色体を過剰にもっています。

父親と母親から子供に染色体が受け継がれる過程で偶然に生じると考えられていますが、発症のメカニズムについては明らかになっていません。

クラインフェルター症候群の前兆や初期症状について

クラインフェルター症候群の症状は、ほとんど現れない場合からさまざまな症状が現れる場合まで個人差があります。

小児期に言葉の発語や発音を苦手とするなど、言語発達の遅れがみられることもありますが、基本的に知的発達は正常です。思春期までは症状が目立たない場合も多く、クラインフェルター症候群であることに気づかないこともあります。

身体的特徴としては、以下に挙げられるような特徴があります。
  • 身長が高く手足が長い
  • 精巣萎縮(精巣が小さいこと)
  • 女性化乳房(胸にふくらみやしこりがみられる)

特に精巣萎縮による無精子症や不妊症がきっかけで、クラインフェルター症候群と診断されることが多いことも特徴といえます。

そのほかにも合併症として、体脂肪や内臓脂肪の増加、メタボリック・シンドローム、2型糖尿病、骨粗鬆症、乳癌を発症する可能性があることが指摘されています。

クラインフェルター症候群の検査・診断

クラインフェルター症候群の検査・診断には、以下に挙げるような検査を行います。
  • 性染色体検査
  • ホルモン検査

性染色体検査

クラインフェルター症候群はGバンドと呼ばれる血液細胞の染色体検査によって診断されます。なお、胎児期に行える「新型出生前診断」はクラインフェルター症候群を対象外にしています。そのため、成人男性にGバンドで検査をすることが一般的です。

ホルモン検査

精巣萎縮など性腺不全に対しては、ホルモン検査が有効です。クラインフェルター症候群では男性ホルモン(テストステロン)値の低下がみられますが、脳下垂体から分泌される男性ホルモン分泌を促進するホルモンは上昇するという特徴があります。

クラインフェルター症候群の治療

クラインフェルター症候群は染色体の異常による疾患のため、根本的に治すような治療法はありません。基本的に健康上の問題はなく、治療の必要がないことも多いです。何らかの症状がある場合、それぞれの症状に応じた治療が行われます。

例えば、男性ホルモン(テストステロン)が低下すると、以下に挙げるような症状が現れます。
  • 筋力低下
  • 女性化乳房
  • 骨粗鬆症
  • 糖尿病
  • メタボリックシンドローム

これらの症状に対しては、男性ホルモンを補充する治療が一般的です。具体的には、テストステロン剤を3〜4週間に1回の頻度で注射します。

乏精子症(精液中の精子が少ない)、無精子症(精液中の精子がいない)などの不妊症に関しては、精巣の中から直接精子を採取する精巣内精子回収法による顕微授精などの治療が検討されます。

言語発達の遅れがある場合は、言語療法などの療育・学習支援を行います。

クラインフェルター症候群になりやすい人・予防の方法

クラインフェルター症候群は偶然に生じる遺伝子異常と考えられているため、発症そのものを予防することはできません。ほとんどの場合、クラインフェルター症候群である人の母親と父親の染色体は正常であるといわれています。

また、基本的に健康上の問題はなく、治療の必要がないことも多いですが、起こりうる合併症を予防することが重要です。

クラインフェルター症候群の合併症はメタボリック・シンドローム、2型糖尿病、骨粗しょう症、乳がんなどが知られています。合併症の早期発見・予防のため、血液検査による血糖値やホルモン値などの確認、超音波による乳がん検査などの健康管理が重要です。

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