

監修医師:
松繁 治(医師)
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医
目次 -INDEX-
動脈瘤様骨のう腫の概要
動脈瘤様骨のう腫(どうみゃくりゅうようこつのうしゅ)は、骨の中に血液がたまった空洞ができる病気です。主に子どもなどの若年者に多く見られます。
どの骨にも発生する可能性がありますが、大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、背骨に多く見られます。また大腿骨や脛骨などの長い骨の場合、骨の端に近い部分に発生することが多いです。
動脈瘤様骨のう腫は徐々に大きくなって周囲の骨組織を圧迫していきます。これにより痛みや腫れを引き起こしたり、骨の強度が弱まったりして、骨折することもあります。また、関節や骨の成長に関わる部分ににできると、子どもの成長に悪影響をおよぼす可能性があります。

動脈瘤様骨のう腫の原因
動脈瘤様骨のう腫の明確な原因はわかっていませんが、骨の中の血管に異常があることが原因だと考えられています。また、血管に異常が生じる原因については、3つの可能性が挙げられています。
1つ目は、別の骨の腫瘍がきっかけとなって発生する可能性です。実際に他の骨腫瘍にともなって発生したケースも報告されています。
2つ目に、独立した腫瘍として形成されるケースも考えられています。多くの動脈瘤様骨のう腫で特定の遺伝子異常が見つかった報告もあります。
3つ目に、過去の外傷で生じる可能性も考えられています。ケガにより骨の血管が損傷し、動脈瘤様骨のう腫の発生につながる場合があります。
動脈瘤様骨のう腫の前兆や初期症状について
動脈瘤様骨のう腫の代表的な症状は痛みです。最初は軽い痛みから始まり、次第に強くなることがあります。安静にしているときも痛みを感じることがあり、夜間に悪化する場合もあります。
腫れも一般的な症状で、骨のう腫が大きくなり、周囲の組織を押すことで起こります。腫れた部分を押すと痛みを感じることもあります。病変部位が大きくなることで、その部分の動きが制限されます。
まれに、骨が過度に弱くなり、日常の動作でも骨折することがあります。この場合、突然の強い痛みとして症状があらわれます。
背骨に発生した場合、動脈瘤様骨のう腫が近くの神経を圧迫して、しびれや筋力低下などの神経症状を引き起こすことがあります。
動脈瘤様骨のう腫の検査・診断
動脈瘤様骨のう腫の診断は、主に画像検査によって行われます。
レントゲン検査では、骨の中の透明な部分や、骨が風船のように膨らんでいる特徴的な所見を確認します。さらに詳しく調べるために、CTやMRIを行うこともあります。CTやMRIでは、骨のう腫の大きさや正確な位置、内部の状態、周囲の組織との関係などが詳しくわかります。
最終的な確定診断のために、病変の一部を採取して顕微鏡で調べる「生検」を実施し、悪性腫瘍の可能性がないか確認することもあります。
動脈瘤様骨のう腫の治療
動脈瘤様骨のう腫の治療は、病変の大きさ、場所、患者の年齢などに基づいて決められます。
外科的治療
外科的治療が最も一般的で効果的な治療法です。主な手術方法としては「掻爬術(そうはじゅつ)」「病変内切除」「完全切除」があります。
掻爬術では、動脈瘤様骨のう腫の内容物を取り除き、空洞を骨やセメントで埋めます。骨の強度を回復させ、再発を防ぐ効果が期待できます。
病変内切除では、動脈瘤様骨のう腫の壁を大きく開口し、内容物を除去します。周囲の骨組織をより多く残せるため、患者の負担が少なくなります。
完全切除は、動脈瘤様骨のう腫全体を周囲の骨とともにすべて切除する方法です。最も再発率が低いものの、関節近くなどの重要な部位では手術後に機能が障害される可能性があるため、限られた状況でのみ行われます。
硬化療法
硬化療法は、動脈瘤様骨のう腫に特殊な薬剤を注入して、内側の血管を固めて閉じる方法です。複数回の注射が必要になることがあります。外科手術が難しい場所にある病変に有用です。
血管塞栓術
血管塞栓術は、動脈瘤様骨のう腫に血液を供給している血管を詰まらせる方法です。動脈瘤様骨のう腫への血流を減らして縮小させることができます。単独の治療としても、手術前の補助治療としても行われます。
放射線療法
放射線療法は、他の治療法が使えない場合や再発した場合に行われることがあります。ただし、放射線治療には将来的にがんを引き起こすリスクがあるため、若い患者では慎重に検討されます。
治療後の経過観察
治療後は、再発が見られないかを確認するために定期的な検査が必要です。再発は治療後1年以内に起こることが多いですが、5年程度は定期的な経過観察が推奨されます。子どもの場合は、骨の成長に影響がないかも確認されます。
出典:National Library of Medicine「Aneurysmal Bone Cysts」
動脈瘤様骨のう腫になりやすい人・予防の方法
動脈瘤様骨のう腫は若年者に多く見られる病気です。動脈瘤様骨のう腫が発症する原因はわかっていないため、現在のところ特定の予防法はありません。
子どもや若い成人で原因不明の骨の痛みや腫れが続く場合は、早めに医師の診察を受けることが大切です。
過去に骨腫瘍の治療を受けたことがある方は、定期的な経過観察を受けて、新たな病変の発生や再発がないかを確認しましょう。
動脈瘤様骨のう腫は良性で、適切な治療を受ければ予後は良好です。早期発見と適切な治療が重要になるため、気になる症状がある場合は早めに医師に相談しましょう。
参考文献




