

監修医師:
林 良典(医師)
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目次 -INDEX-
手指変形性関節症の概要
手指変形性関節症は、指の関節が徐々に変形し、痛みやこわばりを伴う慢性的な疾患です。主に中高年の方に多く見られ、特に女性に発症しやすいとされています。この病気は、加齢や関節への負担が積み重なることで発症し、関節の軟骨がすり減ることで炎症が生じます。初期の段階では軽度の痛みや違和感が主な症状ですが、進行すると関節が変形し、指を動かしにくくなることがあります。
手指変形性関節症は特にDIP関節(指の第一関節)に影響を及ぼし、ヘバーデン結節と呼ばれる骨の隆起が生じることが特徴的です。また、PIP関節(指の第二関節)に発生する場合はブシャール結節と呼ばれます。これらの結節が形成されることで指の見た目が変わり、日常生活に支障をきたすことがあります。
発症のリスクは年齢とともに高まり、遺伝的要因や手を酷使する仕事・趣味なども関与しています。完全に治すことは難しいですが、適切な治療や対策を行うことで進行を抑え、症状を和らげることが可能です。
手指変形性関節症の原因
手指変形性関節症の主な原因は、加齢に伴う関節の変化と考えられています。年齢を重ねるにつれて関節の軟骨がすり減り、その結果、関節に炎症が生じ、骨の変形が進行します。特に閉経後の女性はホルモンバランスの変化により発症リスクが高くなることが知られています。女性ホルモンには関節を保護する働きがあり、その分泌が減少すると関節の損傷が進みやすくなります。
また、関節への過度な負担も原因の一つです。指を頻繁に使う仕事や趣味(ピアノ演奏、編み物、大工仕事など)を続けることで、長年にわたり関節にストレスがかかり、軟骨の摩耗が進みます。特に、同じ動作を繰り返すことで関節にかかる負荷が増え、炎症や変形のリスクが高まります。
さらに、肥満も手指変形性関節症のリスクを高める要因とされています。体重が増加すると、手の関節にも余分な負担がかかり、軟骨の摩耗が進みやすくなります。特に、肥満による慢性的な炎症が関節の劣化を促進し、変形の進行を加速させる可能性があります。健康的な体重を維持することは、関節の負担を軽減し、症状の進行を抑えるために重要です。
遺伝的要因も関係しており、家族に同様の症状を持つ方がいる場合、発症リスクが高くなる可能性があります。これは、関節の構造や軟骨の質に関わる遺伝的要素が影響しているためと考えられています。親や祖父母に手指変形性関節症がある場合は、早めの予防策を講じることが推奨されます。
その他、過去に指の関節にケガをしたことがある場合も、関節の変形性変化が加速する要因となることがあります。打撲や骨折によって関節のバランスが崩れると、正常な動きが損なわれ、結果的に関節の摩耗が進みやすくなります。特に、関節の軟骨が損傷すると、その回復が難しく、長期的に変形のリスクが高まるため、過去の怪我の影響を考慮することも重要です。
手指変形性関節症の前兆や初期症状について
手指変形性関節症の初期症状として、指の関節に違和感や軽度の痛みを感じることが挙げられます。特に朝起きたときに指がこわばり、スムーズに動かしにくいと感じることが多くなります。このこわばりは時間が経つと徐々に解消されることが一般的ですが、症状が進行すると日常的に痛みを伴うようになります。
また、関節の腫れや熱感が生じることがあり、特に使いすぎた後に症状が強くなる傾向があります。進行すると、DIP関節やPIP関節に骨の隆起が現れ、指の見た目が変わることもあります。この変形は元に戻すことが難しく、徐々に指の可動域が制限される原因となります。
初期の段階では軽度の違和感のみで済むことが多いため、放置されがちですが、早期に対策を講じることで進行を遅らせることが可能です。もし、指の関節に痛みやこわばりが続く場合は、整形外科を受診することをおすすめします。
整形外科ではX線検査などを用いて関節の状態を確認し、適切な治療法を提案してもらえます。特に痛みが強い場合や日常生活に支障が出るようになった場合は、早めに医師に相談することが重要です。
手指変形性関節症の検査・診断
手指変形性関節症の診断には、まず問診と視診が行われます。医師は患者さんの症状の経過や痛みの強さ、日常生活への影響などを詳しく確認します。加えて、指の変形や腫れの有無、関節の動きに制限がないかを視診によりチェックします。
さらに、X線検査を用いて関節の内部構造を観察し、軟骨の摩耗や骨の隆起、関節の隙間の狭まりなどを確認します。X線では初期の変化を捉えるのが難しい場合もあるため、必要に応じてMRI検査や超音波検査が実施されることもあります。MRI検査では、関節の軟部組織や靭帯の損傷をより詳細に評価することが可能で、超音波検査では関節内の炎症の有無をリアルタイムで観察できます。
これらの検査結果をもとに、病状の進行度を判断し、適切な治療法を決定します。
手指変形性関節症の治療
治療方法は、症状の程度や進行度に応じて異なります。
初期段階では、炎症を抑えるために非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方されることが一般的です。これにより痛みや腫れを軽減し、関節の動きを維持することが期待できます。また、関節の柔軟性を保ち、悪化を防ぐために、専門家の指導のもとでリハビリテーションやストレッチを取り入れることが重要です。
症状が進行すると、より強い痛みが生じ、関節の変形が目立つようになることがあります。その場合、炎症を抑えるためにステロイド注射が行われることがあります。
手指変形性関節症になりやすい人・予防の方法
なりやすい人
手指変形性関節症は、特定の条件を持つ方に発症しやすい傾向があります。以下のような特徴を持つ方は注意が必要です。
加齢
年齢とともに軟骨の摩耗が進み、関節の変形リスクが高まります。
女性
特に閉経後の女性はホルモンバランスの変化によって関節が弱くなりやすく、発症リスクが高いとされています。
家族に同じ症状の方がいる
遺伝的な要因も関係しており、家族に手指変形性関節症の方がいる場合、発症する可能性が高まります。
手や指を酷使する職業や趣味を持つ方
長年にわたり指を頻繁に使う仕事(例えば、料理人、ピアニスト、大工、編み物をする方など)は、関節に負担がかかりやすく、発症リスクが高くなります。
過去に手指の怪我をしたことがある方
関節の損傷があると、そこから変形が進みやすくなります。
予防の方法
この疾患は加齢や遺伝的要因が大きく関与するため、完全に予防することは難しいですが、日常生活の中で関節への負担を減らすことが予防の鍵となります。特に、適度な運動を継続することで関節の可動域を維持し、筋力を強化することが重要です。指を使った軽いストレッチや手のひらを開閉するエクササイズを取り入れることで、関節の柔軟性を高めることができます。また、バランスの取れた食事を心掛け、カルシウムやビタミンD、オメガ3脂肪酸を多く含む食品を摂取することも、関節の健康維持に役立ちます。




