

監修医師:
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)
目次 -INDEX-
成人脊柱変形の概要
成人脊柱変性は、背骨が前後または左右に曲がる病気です。
前後の曲がりを後弯症(こうわんしょう)左右の曲がりを側弯症(そくわんしょう)と呼びます。背骨が曲がることにより、腰痛が出現し、長時間立っていることや、歩くことが困難になります。また、神経が圧迫されることにより下肢の痛みを呈する場合もあります。
その結果、ADL(日常作業動作)やQOL(日常生活の質)が低下します。そのほか、消化器官が曲がった背骨で圧迫されることによる逆流性食道炎や便秘、活動量の低下による筋力低下や免疫力の低下なども引き起こします。
成人脊柱変形の原因には主なものとして、二つあります。一つは、老化により背骨を構成する骨や、骨と骨の間にあるクッションの役割をする椎間板が痛み、背骨が徐々に変形することによるものです。また、筋力の低下や骨粗しょう症に起因する圧迫骨折後の異常な骨融合に起因する変形も、近年増加しています。もう一つは、小児期から左右の変形が認められ、加齢に伴い徐々に進行するものです。
それ以外に、パーキンソン病による変形や、脊椎手術で固定手術を行った後に発生する変形もあります。症状が軽度の場合には、筋力トレーニングなどの運動療法を行いますが、重度の場合には、手術によって正常な形に戻すこともできます。脊柱変形が改善される可能性もあるので、症状にお困りの際は、整形外科を受診しましょう。
成人脊柱変形の原因
成人脊柱変形の原因には主なものとして、二つあります。一つは、老化により背骨を構成する骨や、骨と骨の間にあるクッションの役割をする椎間板が痛み、背骨が徐々に変形することによるものです。この場合、一般住民健診の結果では、脊柱の変形は60歳代から70歳代より始まる可能性が高いとされています。
また、筋力の低下や骨粗しょう症に起因する圧迫骨折後の異常な骨融合に起因する変形も、近年増加しています。もう一つは、小児期から左右の変形が認められ、加齢に伴い徐々に進行するものです。それ以外に、パーキンソン病による変形や、脊椎手術で固定手術を行った後に発生する変形もあります。
成人脊柱変形の前兆や初期症状について
背骨が曲がることにより、腰痛が出現し、長時間立っていることや、歩くことが困難になります。また、神経が圧迫されることにより下肢の痛みを呈する場合もあります。その結果、ADL(日常作業動作)やQOL(日常生活の質)が低下します。
そのほか、消化器官が曲がった背骨で圧迫されることによる逆流性食道炎や便秘、活動量の低下による筋力低下や免疫力の低下なども引き起こします。これらの症状は、徐々に進行し、日常生活の制限が生じてきます。小児期の左右の曲がりが加齢により悪化する例では、若年期(30−50歳頃)から曲がりが悪化し、痛みなどの症状が出現します。
成人脊柱変形により、痛みなどの症状で困った場合は、整形外科を受診しましょう。
成人脊柱変形の検査・診断
成人脊柱変形を疑う場合は、背骨全体のレントゲン写真を正面からと側面からの2方向で撮影します。その後、撮影画像後で、仙骨上縁(せんこつじょうえん)から引いた水平線と第7頚椎から引いた垂線との距離を測定し、距離の長さによって変形の度合いを評価します。
また、CTにて変形を立体的に可視化して評価する場合もあります。腰痛だけでなく下肢の痛みなどの神経症状を伴っている場合は、神経が圧迫されていないかをMRI検査で調べます。また、圧迫骨折により脊椎変形を来した場合は、骨粗しょう症が起因している場合が多いため、骨粗しょう症の検査を行い、骨粗しょう症に対しても平行して治療します。
成人脊柱変形の治療
変形の状態を把握し、変形に起因する症状の程度と患者さんの希望をもとに治療方針を決定します。症状が軽度のうちには、理学療法、薬物療法、コルセット、ブロック注射などの治療を行います。しかし、加齢とともに背骨の曲がりが大きくなり、症状が強くなってくると、これらの治療では対応できなくなってきます。
背骨の曲がりが強く、腰痛や神経痛などのために日常生活制限が強いときは手術治療を考慮します。骨粗しょう症を認めた場合には、新たに骨折して脊柱変形が悪化するのを防ぐために、積極的に骨粗しょう症の治療を行います。骨粗しょう症の治療では、まず骨密度と骨代謝マーカーを測定し、患者さんの年齢と重症度を考慮して薬物療法を行います。
理学療法
変形の進行や症状の程度には、体幹筋や下肢の筋力低下が関与します。よって、理学療法、筋力トレーニング、歩行訓練、股関節を主とした関節可動域訓練などを行います。
薬物療法
痛みの症状が強い場合は、症状緩和のために、以下のような痛み止めを用います。
- 非ステロイド性抗炎症薬
- プレガバリン
- オピオイド鎮痛薬
胃食道逆流症の訴えがある場合には、プロトンポンプ阻害薬を用います。
ブロック注射
痛みのある部位の神経の近くに、麻酔薬を注入し、一時的に神経の興奮を抑え、痛みを軽減する治療法です。局所的な治療であり、薬物療法と比べて全身への影響が少なく、即効性が高いというメリットがあります。
手術治療
成人脊柱変形の手術は、脊柱を生理的な形状に近い形で矯正することを目的に行われます。手術により、腰曲がりや側弯などの脊柱変形が改善することで、日常生活に支障をきたしていた腰痛などの症状が改善します。
成人脊柱変形の手術にはさまざまな術式があり、変形の状態によって術式を選択します。変形が軽度で、骨折部の不安定性、痛みが主な場合には骨セメントを骨折部に充填する椎体形成術や、後方からまたは前後からの短い固定範囲での脊椎固定術を行います。骨が大きく変形して癒合してしまい、身体が大きく傾いてしまい姿勢が保てない場合には、背中からや、側腹部から変形した椎体を切除(骨切り)して脊椎を広範囲に固定する手術が行われます。
手術は1ヶ月程度入院することが多いです。筋力の衰えが著しい場合は、リハビリ病院へ転院のうえ、さらに1〜2ヶ月程度入院してリハビリを行うこともあります。術後半年〜1年程度、骨が完全に結合するまで、コルセットを装着して生活することが多いです。
なお、手術を行った場合でも「一生よい状態が保てる」というわけではありません。なぜなら、手術をしていない部分の変形は経年的に進行しますし、骨折などをきっかけに一気に変形が進行する場合があるからです。変形が高度なケースでは、再手術が必要になることもあります。
また、一般的に、脊柱変形の手術は身体的な負担が大きく、合併症の発生率は高いといわれています。具体的には、以下のような合併症が挙げられます。
- 術中合併症:インプラント設置不良 神経障害 など
- 術後合併症:深部静脈血栓症 術後血腫 せん妄 尿路感染 心不全 手術創
- 新たな椎体骨折 固定した近位隣接椎間での後弯変形 インプラント破損 など
合併症発生のリスクファクターとしては、術中の出血量と、術前からの併存症が挙げられます。上記の理由から、手術のメリットやリスクを理解したうえで、治療選択をすることが大切です。
成人脊柱変形になりやすい人・予防の方法
加齢に伴い脊柱は変形しやすくなりますが、体幹や下肢の筋力を鍛えることで進行を遅らせることができます。よって、日頃からの適度な運動が重要となります。




