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上腕骨内顆骨折
林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
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眼科(角膜外来)

上腕骨内顆骨折の概要

上腕骨の下端は肘関節を形成し、橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)という前腕の2本の骨と連結しています。
そのうち、上腕骨内顆は肘の内側に位置し、前腕屈筋群(ぜんわんくっきんぐん)という手首や指を曲げるための筋肉が付着する重要な部分で、肘の安定性と運動機能を支える重要な部分です。

上腕骨内顆(じょうわんこつないか)

肘の内側にある突起で、前腕屈筋群(手首や指を曲げる筋肉)がくっついています。内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)が付着し、肘の安定性を支えています。

上腕骨外顆(じょうわんこつがいか)

肘の外側の突起で、前腕伸筋群(手首や指を伸ばす筋肉)がくっついています。

上腕骨と肘関節の役割

上腕骨内顆は、特に手首や指の動きをコントロールする筋肉の付着点となっており、日常動作やスポーツ動作において極めて重要な役割を担っています。
また、尺骨神経が近くを走行しており、骨折すると神経が圧迫されたり損傷されたりする可能性があります。

上腕骨内顆骨折は、この内顆が折れる骨折のことを指します。特に成長期の子ども(約5歳から14歳)や、スポーツをする方に多く発生します。
骨折の程度によって、以下のように分類されます。

  • 非転位骨折(ひてんいこっせつ):骨がずれていない軽度の骨折
  • 転位骨折(てんいこっせつ):骨がずれてしまい、整復(位置を戻す処置)が必要な骨折
  • 粉砕骨折(ふんさいこっせつ):骨が細かく砕けるように折れている重症な骨折
  • 開放骨折(かいほうこっせつ):骨が皮膚を突き破り外部に露出している骨折

適切な治療を行わないと、肘関節の変形や運動障害を引き起こす可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。

上腕骨内顆骨折の原因

上腕骨内顆骨折は、主に以下のような原因によって発生します。

転倒による外傷

肘を伸ばした状態で手をついて転倒すると、肘に外側に開く力(外反力)が加わり、内顆に付着している筋肉や靭帯に強い負荷がかかり引っ張られてしまうことで骨折が起こります。
特に子どもや高齢者に多いけがです。成長期の骨は柔らかく、高齢になると骨が脆くなりやすいため、損傷しやすいと言われています。

スポーツによる繰り返しの負担

野球、テニス、バドミントンなどのスポーツでは、肘の内側に繰り返しストレスがかかり、疲労骨折が発生することがあります。特に野球の投球動作では、前腕屈筋群が強く引っ張られ、内顆に負担がかかるため、疲労骨折が起こりやすいと言われています。

交通事故や強い外傷

バイクや自転車の転倒、車の事故などでは、肘を強く打ちつけるなど、肘の内側に強い衝撃が加わった場合にも骨折が起こる可能性があります。

上腕骨内顆骨折の前兆や初期症状について

上腕骨内顆骨折の前兆や初期症状には以下のようなものがあります。

肘の内側の痛み

特に肘を曲げ伸ばしする際に痛みを感じます。これは骨折部位に負荷がかかるためです。また、尺骨神経が近いため、電気が走るようなビリビリとした神経の痛みを感じることもあると言われています。

腫れや皮膚色の変化

骨折部位周辺の組織が腫れます。これは骨折による出血や炎症反応によるものです。多くの場合皮下出血を起こしており紫色の痣(あざ)が見られます。

動きの制限

痛みや腫れのために、肘の動きが制限されることがあります。

握力の低下

内顆に付着する筋肉が影響を受けるため、握力が弱くなることがあります。

しびれや感覚の変化

尺骨神経が影響を受けると、小指や薬指にしびれや感覚の変化が現れることがあります。

これらの症状が現れる理由は、骨折による直接的な影響と、それに伴う周囲の組織の反応によるものです。特に子どもの場合、痛みの訴えが曖昧なことがあるため、受傷時の様子を確認し症状を注意深く観察することが必要です。

上腕骨内顆骨折が疑われる場合には、整形外科を受診することが多いです。

上腕骨内顆骨折の検査・診断

上腕骨内顆骨折の診断には以下の検査が必要です。

問診
受傷時の様子や症状の程度を確認します。
身体診察
肘の腫れや圧痛、動きの制限などを確認します。
レントゲン検査
骨折の有無や程度を確認するために一般的に行われる検査です。しかし、小さな子どもの場合、成長軟骨の影響で内顆がまだ骨化していないためレントゲンでは見えにくい・見えないことがあります。
CT検査
骨折の詳細な状態を3次元的に確認するために行われることがあります。
MRI検査
レントゲンやCT検査では見えにくい・見えない場合や、軟部組織の状態を詳しく見るために行われます。

これらの検査が必要な理由は、骨折の正確な状態を把握し、適切な治療方針を決定するためです。特に子どもの場合、成長に影響を与える可能性があるため、慎重な診断が求められます。

診断基準としては、Watson-Jones分類がよく用いられます。これは骨片の転位の程度によってI型からIV型に分類するものです。

上腕骨内顆骨折の治療

上腕骨内顆骨折の治療方法は、骨折の程度や患者さんの年齢によって異なります。

保存的治療

骨片の転位が少ないI型の場合、主に保存療法が選択されます。肘を90度に曲げ、前腕を軽く回外させた状態で3〜4週間、固定を行います

手術療法

骨片の転位が大きい場合や、保存療法で改善が見られない場合に選択されます。主に以下の方法があります。

骨接合術
骨片をピンやスクリューで固定します。
内固定術
プレートやネジを用いて骨を固定します。

リハビリテーション

保存的治療や手術療法と同時に、可動域を徐々に改善するため軽いストレッチングや、弱った筋肉を強化するための筋力強化運動など段階的なリハビリテーションを行うことが重要です。

治療の選択は、骨折の程度、患者さんの年齢、もともとの活動レベルなどを考慮して決定されます。特に成長期の子どもの場合、将来の成長に影響を与えないよう慎重に治療方針を決定する必要があります。

上腕骨内顆骨折になりやすい人・予防の方法

上腕骨内顆骨折になりやすい人

特に子どもスポーツに参加している若者に多いと言われています。それは、活発な活動が多く、受傷のリスクが高いためです。また、骨密度が低下している高齢者や、骨格に問題がある方も注意が必要です。

上腕骨内顆骨折の予防法

運動時の注意

運動前に十分なストレッチと軽い運動を行い、筋肉や関節を柔軟にします。また、正しいフォームを身につけることで肘への負担を軽減できます。スポーツ活動時は適切な装備(肘当て)を使用し、転倒を防ぐための手や足の使い方を認識することが重要です。

筋力トレーニング

肘周辺の筋肉だけでなく、全身の筋力を高めることで、肘への負担を分散させることができます。

骨の健康を保つ

カルシウムやビタミンDを含む食事を摂り、骨密度を保つことが骨折のリスクを減少させます。また、ビタミンDを体内で生成するために日光に当たることも効果的です。特に成長期の子どもには、乳製品や魚などを積極的に摂取することが推奨されます。

安全な環境作り

家庭内での転倒リスクを減少させるため、滑りにくいマットや手すりを設置するなどの工夫を行うことで、事故を未然に防ぐことができます。

これらの予防法は、物理的な衝撃から自らを保護する力を高め、骨の強さを維持することで、骨折リスクを大幅に減少させることに効果的だと言われています。特に、栄養管理運動習慣により、身体全体の健康状態を向上させることが重要です。

上腕骨内顆骨折は適切な治療を受けることで、多くの場合は良好な経過をたどります。しかし、放置すると長期的な問題を引き起こす可能性があるため、疑わしい症状がある場合は早めに医療機関を受診することが重要です。特に子どもの場合、成長に影響を与える可能性があるため、慎重な対応が求められます。

関連する病気

  • 変形性肘関節症
  • 骨癒合不全
  • 骨端線損傷
  • 靭帯損傷
  • 尺骨神経麻痺

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