

監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
骨軟部腫瘍の概要
骨軟部腫瘍(こつなんぶしゅよう)とは、頭部を除いた全身の筋肉や骨、軟骨、脂肪、繊維組織などから発生する腫瘍です。100種類以上に分類され、それぞれ発症しやすい年齢、性別が違います。
ほとんどの骨軟部腫瘍が良性ですが、全体の1%ほどが悪性骨軟部腫瘍で、肉腫(にくしゅ)ともいわれています。
大きさは米粒大のものから、直径20〜30cmと大きくなるものまでさまざまで、多くは痛みを伴わない無痛性の腫瘍です。悪性骨軟部腫瘍では急激に大きくなり、硬くなる特徴があります。
(出典:公益社団法人 日本整形外科学会「整形外科シリーズ20 軟部腫瘍」)
骨軟部腫瘍は比較的珍しい腫瘍であり、発症する原因はわかっていません。そのほかのがんと同様、組織の遺伝子異常によって発生すると考えられていますが、遺伝子疾患として遺伝する病気ではないといわれています。
治療は切除術が主流ですが、ほとんどの骨軟部腫瘍は良性であるため急いで治療する必要はありません。しかし、悪性の場合は腫瘍組織以外の正常組織も切除する広範囲腫瘍切除術や、抗がん剤を用いた化学療法が早期に検討されます。
肉腫とは
肉腫とは悪性骨軟部腫瘍の別名で、骨や軟部組織(筋肉、神経、血管など)にできる悪性腫瘍です。骨にできる肉腫で代表的なものは骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫であり、軟部組織で代表的な肉腫は脂肪肉腫、未分化多形細胞肉腫、粘液線維肉腫、滑膜肉腫、平滑筋肉腫があります。
骨肉腫の場合、骨肉腫ができた骨から発生する「原発性骨肉腫」と、ほかの臓器のがん細胞が血液やリンパ液に乗って骨に転移する「転移性骨肉腫」に分類されます。
骨軟部腫瘍の原因
骨軟部腫瘍が発生する原因は未だ解明されていません。何らかの原因で遺伝子に異常が起こり、発生していることが考えられています。
骨軟部腫瘍の前兆や初期症状について
骨盤部腫瘍の初期症状は背中や腕などに小さなしこりができることで、ほとんどが無症状で痛みを伴いません。良性腫瘍の場合は数年かけてしこりがゆっくりと大きくなります。
悪性腫瘍の場合、しこりは数ヶ月で大きくなり、良性腫瘍より早い発達と腫瘍の硬さが特徴的です。しこりの成長に伴い腫れや痛みも生じます。
骨軟部腫瘍の検査・診断
骨軟部腫瘍の診断では、主に問診によって発症の経緯や痛みの有無を聞き取ります。腫瘍を自覚した時期や成長速度、腫瘍の痛みを確認することで、良性と悪性の判断材料にします。
さらに、腫瘍組織の大きさも重要です。良性骨軟部腫瘍は5cm以下であることが多い反面、悪性骨軟部腫瘍は5cmを超えることがあります。これらも良性と悪性を見分ける重要な判断材料になるでしょう。
骨軟部腫瘍の種類を見極めるために腫瘍組織の生検もおこないます。腫瘍組織の一部を採取して顕微鏡で確認することで、組織の特徴から腫瘍の鑑別が可能です。
生検以外にもレントゲンやCT、MRIの画像検査も有効とされています。これらの画像検査によって腫瘍組織の大きさ、部位が詳細にわかるため、とくに手術を検討する際は重要になります。悪性腫瘍は転移する可能性があるため、全身の転移を調べるPET検査が用いられることもあります。
骨軟部腫瘍の治療
骨軟部腫瘍の治療は、腫瘍組織の切除術が主流です。その際、生検も兼ねた手術をおこないます。生検によって悪性腫瘍だと判断された場合、腫瘍組織とその周囲組織も切除する広範囲腫瘍切除術が選択されます。広範囲腫瘍切除術は、腫瘍組織の再発を防ぐためにも重要です。
良性腫瘍であった場合は命の危険性がないため、迅速な治療は必要ありません。見た目の問題や機能的な問題がなければ、放置しても問題ないでしょう。
悪性腫瘍を取り除いた後も転移の危険性がある場合は、化学療法をおこないます。化学療法の適応が難しい場合には放射線治療をおこなうことがあります。
骨軟部腫瘍になりやすい人・予防の方法
骨軟部腫瘍になりやすい人ははっきりとわかっていませんが、発症しやすい年齢は腫瘍の種類によって異なっていることが判明しています。
脂肪腫は40歳以降に多く、血管腫や骨肉腫は若年層に多いです。軟部肉腫はやや男性に多い傾向があります。
骨軟部腫瘍は原因がわかっていないため、予防が困難です。しかし、悪性腫瘍の場合は人間ドックなどの定期的ながん検診を受けることによって早期発見が可能です。さらに適切な治療を早期に受けることで、全身への転移が防げる可能性も高まるでしょう。