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ベッカー型筋ジストロフィー
田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

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鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

ベッカー型筋ジストロフィーの概要

ベッカー型筋ジストロフィーは、筋ジストロフィーのひとつで、筋力が徐々に低下していく病気です。主に筋肉の中にあるジストロフィンというたんぱく質が減少するために起こります。

筋ジストロフィーのうち「デュシェンヌ型筋ジストロフィー」と発症メカニズムは似ていますが、ベッカー型筋ジストロフィーは進行がゆっくりで、症状も軽い場合が多いのが特徴です。

ベッカー型筋ジストロフィーの発症年齢はさまざまです。20歳前後で発症するケースもあれば、60歳〜65歳くらいに診断されることもあります。

この病気は徐々に進行するため、早期に症状に気づき、病院を受診することで、生活の質を保ちながら生活できる可能性があります。また、この病気は発症年齢や進行スピードに個人差があるため、家族や周囲のサポートが非常に重要です。

ベッカー型筋ジストロフィー

ベッカー型筋ジストロフィーの原因

ベッカー型筋ジストロフィーの原因は、X染色体にある「ジストロフィン遺伝子」の異常です。

筋肉の修復に必要なジストロフィンというたんぱく質が十分に作られなくなることで、筋肉細胞が壊れやすくなり、筋肉が徐々に弱っていきます。

この遺伝子の異常は、家族内で受け継がれることが多く男性に発症しやすい特徴があります。片方のX染色体の遺伝子に異常があっても、もう一方の遺伝子が正常であれば発症しないため、女性で発症するケースは少ないと言われています。

しかし、男性の場合はX染色体が1本しかなく親から異常な遺伝子を引き継ぎやすいため、ベッカー型筋ジストロフィーを発症しやすいのです。

発症リスクを理解するために、特に家族内に筋ジストロフィーの患者がいる場合は、定期的な検査や必要に応じて遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。

ベッカー型筋ジストロフィーの前兆や初期症状について

ベッカー型筋ジストロフィーの主な症状は、筋力低下や関節拘縮、呼吸障害をはじめ不整脈、摂食・嚥下障害などです。なかには、知的障害や自閉スペクトラム症の症状があらわれることもあります。

具体的には、疲れやすくなったり、階段を上るのが難しくなったりします。症状は徐々に進行し、筋力が低下していきますが、個人差があります。症状の現れ方は人それぞれ異なり、進行のスピードも違います。

そのため、できるだけ早期に症状に気づくことが重要です。例えば、子どもの場合は、運動の際に他の子どもよりも疲れやすかったり、つまずくことが多い場合があります。

気になる症状があるときは、一度医師に相談しても良いでしょう。

ベッカー型筋ジストロフィーの検査・診断

ベッカー型筋ジストロフィーの主な検査は、血液検査と遺伝子検査、筋生検です。

まず血液検査で、筋肉の損傷を示す酵素であるクレアチンキナーゼ(CK値)が高いかどうかを調べます。筋ジストロフィーでは、クレアチンキナーゼが筋肉の細胞から漏れ出るため、血液中の濃度が高くなります。

ただし、他の筋肉の病気でもクレアチンキナーゼの数値が高くなるため、鑑別することが大切です。

また、遺伝子検査でジストロフィン遺伝子の異常の有無を確認します。血液検査と遺伝子検査で診断がつかなかった場合は、筋肉の生検も行われることがあります。

これらの検査を通じて、筋肉の状態や異常を確認し、これらの検査結果を総合的に判断することで、ベッカー型筋ジストロフィーの確定診断となります。

診断後には定期的な検査が必要となり、進行状況の把握が重要です。特に、心臓や呼吸器の機能をチェックしていくことが、生活の質を維持するために欠かせません。家族と連携して症状の変化に気を配り、適切な時期に医師のサポートを受けることが求められます。

リハビリテーションや生活習慣の改善を通じて、できるだけ筋力を維持することを目指します。

ベッカー型筋ジストロフィーの治療

ベッカー型筋ジストロフィーの治療は、症状を軽減し進行を遅らせることが目的です。根本的な治療法はまだ見つかっていませんが、理学療法や運動療法で筋力を維持することが重要です。

具体的には、関節可動域の訓練や起立台での立位のトレーニング、リハビリテーションスタッフによるストレッチなどを行います。症状が進行した場合は、補助具や生活支援器具を導入して生活で扱えるようにします。

また、呼吸機能のサポートや心臓の機能を守るために、ステロイド薬や心不全治療薬が処方されることもあります。冬になると筋肉量や運動量の少なさから末梢循環障害が問題となる場合もあるため、保温対策を行いながらビタミンEの服用が効果的なケースもあります。

さらに、心理的なサポートも重要です。患者さまが抱える不安やストレスを軽減するために、カウンセリングや精神的なケアを取り入れることが勧められます。家族も患者さまの気持ちに寄り添い、前向きな気持ちで治療に取り組めるよう支援することが大切です。

ベッカー型筋ジストロフィーになりやすい人・予防の方法

ベッカー型筋ジストロフィーは遺伝性のため、家族に同じ病気を持つ人がいる場合、発症のリスクが高くなります。

現時点(2024年11月)では予防する方法はありません。家族に筋ジストロフィーの患者がいる場合、遺伝カウンセリングを受けることで、発症リスクや将来的な治療計画について理解を深めることが期待できます。早期に診断し、適切なサポートを受けることが重要です。

これにより、病気に関する正しい知識を得ることができ、将来的な不安を軽減することができます。また、発症後も早期に適切なケアを受けることで、症状の進行を遅らせ、生活の質を維持できるでしょう。


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