

監修医師:
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)
骨軟骨腫の概要
骨軟骨腫は骨の表面に形成される良性の腫瘍で、特に四肢の長管骨の末端部と軟骨の境界に発生するのが特徴です。
主に若年層に見られることが多く、成長期の終わりに伴い腫瘍の成長も止まる傾向があります。骨の成長が止まると腫瘍の大きさも止まりますが、大きくなった腫瘍は生涯残存する可能性があります。多くの場合、痛みや不快感がないため、成長期が過ぎるまで発見されにくいことが一般的です。
しかし、腫瘍が神経や血管に接触すると、痛みやしびれが引き起こされることがあり、その場合には早めに医師の診察を受けるのが適切です。また、骨軟骨腫は成長期が終了すると進行が止まる場合が多く、悪性化のリスクも低いため、日常生活に大きな支障をきたすことは少ないとされています。ただし、腫瘍が骨や関節の機能に影響を及ぼす場合には、定期的な経過観察が求められます。
骨軟骨腫が確認された際には、医療機関での適切な検査や診断を受け、腫瘍の進行状況を見守ることが推奨されます。良性の腫瘍であるため、早期に発見して適切に対処することで、生活への影響を最小限に抑えられる可能性があります。
骨軟骨腫の原因
骨軟骨腫の原因は、完全には解明されていない部分が多いですが、遺伝的な要因が関係していると考えられています。骨軟骨腫のうち90%は単発性で、10%を占める多発性は家族性発症で常染色体優性疾患です。家族に骨軟骨腫の人がいる場合、発症リスクが高まる傾向があり、家族性に見られることが少なくありません。
また、成長期における骨の発育過程で異常が発生すると腫瘍が形成されることが指摘されており、特に若年層に多いことから、成長に関連する遺伝子異常が影響していると考えられています。成長期には骨の急速な発達が進むため、この過程で何らかの異常が発生することで、骨軟骨腫が生じる可能性があるのです。遺伝的なリスクがある場合や成長期の体の変化を見逃さないよう、健康診断などで早期発見に努めましょう。
骨軟骨腫の前兆や初期症状について
骨軟骨腫は、初期段階では多くの場合無症状であるため、気づかれにくいのが特徴です。特に若年層に発生しやすい疾患であり、成長期には腫瘍の増大が見られますが、症状がないため放置されることも少なくありません。
腫瘍が大きくなると、周囲の組織を圧迫し、違和感や軽い痛みが発生することがあります。痛みの発生は腫瘍の大きさだけでなく、発生場所にも影響されるため、神経や血管の近くにできた場合、痛みやしびれが顕著に現れる場合もあります。具体的には、骨軟骨腫が四肢の長管骨、特に脚や腕の部位に形成されると、動作時に腫瘍が周囲の神経や筋肉を圧迫するため、痛みやしびれが生じやすくなります。
また、筋肉に圧力がかかることで、動きに制限が生じ、違和感をおぼえることがあるのも特徴です。膝や肘など、日常的に頻繁に使用する部位に腫瘍ができた場合、日常生活において不便さを感じることもあります。例えば、歩行や物を持ち上げる際に腫瘍が原因で痛みが増すことがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。
多くの骨軟骨腫は、成長期を過ぎると進行が止まり、良性であるため症状が重くならないことが一般的です。しかし、少しでも違和感や痛みを感じた場合には、整形外科を受診し、適切な検査と診断を受けることが望まれます。
骨軟骨腫の検査・診断
骨軟骨腫の診断では、腫瘤の有無や大きさ、形状、そして痛みの有無などを確認します。その後、X線検査やMRI、CTスキャンなどの画像診断によって、腫瘍の詳細な位置や形状を把握します。
診断には、X線検査が一般的に使用されます。X線は骨軟骨腫を確認するのに優れており、骨の表面に突起状の腫瘍が形成されている場合、その形状がはっきりと写るため、腫瘍の大きさや位置を把握することが可能です。特に、骨表面の硬化が見られる場合には骨軟骨腫である可能性が高まります。
より詳細な位置や周囲の組織への影響を確認するためには、MRIやCT検査が使用されます。MRIは、腫瘍が神経や血管に接近している場合や、腫瘍の内部構造を調べるのに有効で、腫瘍が軟骨成分を含んでいるかどうかを評価できます。CT検査では、腫瘍と骨の関係性を立体的に把握できるため、腫瘍の位置や形状をより正確に診断可能です。
腫瘍が良性か悪性かを確認するために生検が行われることもあります。生検では、腫瘍の組織を採取して病理検査を行い、腫瘍が良性か悪性かを判断します。骨軟骨腫は通常、成長期の終了とともに進行が止まるため、無症状であれば経過観察が選ばれることが一般的です。一方、神経や血管への影響が確認された場合や、腫瘍が関節に近く機能に支障をきたす場合には、外科的な治療が推奨されることもあります。
骨軟骨腫の治療
骨軟骨腫の治療は、主に患者さんの症状の有無や腫瘍の位置、大きさに応じて異なります。基本的に骨軟骨腫は良性腫瘍であるため、無症状で日常生活に影響がなければ、経過観察が一般的な選択肢となります。経過観察では、定期的に画像検査を行い、腫瘍の成長や周囲の組織への影響がないかを確認しながら進められます。特に、成長期の終了とともに腫瘍の進行が止まる場合が多いため、症状がない限りは定期的な検診のみで経過を見ることが可能です。
一方で、腫瘍が神経や血管を圧迫して痛みやしびれといった症状を引き起こす場合や、腫瘍が関節周辺にあり関節の動きが制限されるなど機能に影響が出る場合には、外科的切除が推奨されることがあります。手術では、腫瘍を完全に切除し、周囲の組織や関節の機能を正常に戻すことを目指します。手術後の回復期には、必要に応じてリハビリテーションが行われ、痛みや可動域の回復を図ります。
治療方法の選択にあたっては、患者さんの年齢や腫瘍の位置、症状の程度などが考慮され、専門医が最適な方法を判断します。適切な治療と定期的な観察を行うことで、骨軟骨腫による生活への影響を最小限に抑えることが可能です。
骨軟骨腫になりやすい人・予防の方法
骨軟骨腫になりやすい人
骨軟骨腫は遺伝的要因が関係しているため、家族に同じ疾患を持つ人がいる場合、発症リスクが高まると考えられています。また、特に若年層、特に成長期に多く見られ、成長期の骨発育が腫瘍発生に関与しているとされています。
予防の方法
骨軟骨腫の発症を完全に予防する方法は確立されていませんが、早期発見が症状の軽減に重要です。そのため、成長期の子どもや若年層は定期的な健康診断を受け、骨や関節に異常が見られた際にはすぐに医師の診察を受けることが推奨されます。遺伝的要因が影響している場合、家族も含めて骨の異変に注目し、早期の対策を心がけましょう。良性の腫瘍であるため、早期発見と経過観察によって、日常生活への支障を最小限に抑えられる可能性が高まります。
骨軟骨腫は良性の腫瘍であるため、症状が現れなくても、日常生活に支障をきたすことを防ぐためには、早期の発見と定期的な経過観察が重要です。健康診断や家庭での自己観察を習慣にすることで、発症しても早い段階で対処でき、生活への影響を最小限に抑えられる可能性が高まります。