監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
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デュピュイトラン拘縮の概要
デュピュイトラン拘縮は、手のひらにある手掌腱膜(しゅしょうけんまく)という繊維性の膜組織が伸びなくなり、手指が動かなくなる進行性の疾患です。手掌腱膜に硬結(こぶのようなもの)ができ、徐々に皮膚がひきつって動かしにくくなり、手指や手のひらに特徴的な変形が生じます。薬指と小指に発症しやすく、男性の方が多い傾向にありますが原因はわかっていません。
デュピュイトラン拘縮は手指の筋肉は正常で握力も問題なく発揮できます。腫瘍や腱の断裂との鑑別が必要ですが、特徴的な手の硬結と指の変形が起こるため、視診にて判断できることが多いです。
デュピュイトラン拘縮の原因
デュピュイトラン拘縮の原因は判明していません。高齢男性や糖尿病、高血圧の人に多く見られる傾向があります。手掌腱膜に繰り返される小さな外傷や遺伝的要素が原因で起こる可能性も考えられています。硬結は、血流障害によって手掌腱膜を貫く手掌最小動脈に血栓ができ、組織が繊維化することによって生じます。
デュピュイトラン拘縮の前兆や初期症状について
デュピュイトラン拘縮の初期症状は薬指や小指の手のひら側に硬結ができることです。硬結の多くは圧痛を伴いますが、人によっては圧痛がないケースもあります。硬結の数が徐々増え、数珠状になることで、手掌腱膜がcordと呼ばれる病的な変形に移行していきます。
手掌腱膜に生じたcordは皮膚の動きを制限し、手指の屈曲拘縮(くっきょくこうしゅく)を引き起こします。症状は緩やかに進行していきます。
デュピュイトラン拘縮の検査・診断
デュピュイトラン拘縮は特徴的な変形を示すため、視診で診断できます。しかしケースによっては腫瘍や腱の断裂と区別する必要があり、鑑別するための検査をする場合もあります。腫瘍との鑑別は血液検査や生検検査、腱の断裂との鑑別はMRIなどの画像診断によっておこないます。
デュピュイトラン拘縮の治療
デュピュイトラン拘縮では大きく分けて以下の2つの方法で治療を進めていきます。
- 注射による保存療法
- 外科的に硬結を取り除く手術
注射による保存療法
デュピュイトラン拘縮にはコラゲナーゼ注射という、コラーゲンを分解する作用がある注射が有効です。手掌腱膜の硬結は組織の繊維化によって起こるため、繊維化した組織のコラーゲンが分解されることで拘縮の改善が期待できます。
硬結の数が少なく組織の繊維化が進んでいない状態であれば、繊維化を抑制する薬剤(トリアムシノロン・アロプリノームなど)の注射も効果的です。これらの注射薬は硬結に至る過程の繊維化を抑制する作用が主であるため、初期のデュピュイトラン拘縮に対して効果があります。
外科的に硬結を取り除く方法
注射で十分な効果が得られなかった場合、手術によって硬結を取り除きます。手術後はリハビリや装具によって手指の機能回復を図ります。リハビリは術後再発の可能性も考慮して慎重に進めていきます。
デュピュイトラン拘縮になりやすい人・予防の方法
デュピュイトラン拘縮になりやすい人は、以下に挙げる特徴があります。
- 家族にデュピュイトラン拘縮の発症歴がある
- 高血圧や糖尿病などがある人
- 手指の外傷を繰り返している
デュピュイトラン拘縮は遺伝的要素があると考えられており、家族にデュピュイトラン拘縮がある人は、発症リスクが高くなりやすいです。高血圧や糖尿病、手指の外傷も血流の悪化によって血栓を形成し、デュピュイトラン拘縮を合併しやすくなります。
デュピュイトラン拘縮の明確な予防方法はありません。しかし、手指の屈筋や手掌筋膜のストレッチによって、手のひらの血流が悪くなるのを防げます。手指の屈筋や手掌筋膜を効率的に伸ばすために、全ての手指を手の甲側に反らしてみましょう。また、規則正しい生活や有酸素運動を取り入れて、高血圧や糖尿病を予防することも大切です。
参考文献