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大腿骨頭壊死
松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

大腿骨頭壊死の概要

大腿骨骨頭壊死は、股関節を構成する大腿骨の骨頭(こっとう)の血液供給が途絶え、組織が壊死する疾患です。

原因が明らかな「症候性大腿骨骨頭壊死」と、原因が明確でない「特発性大腿骨骨頭壊死」に大別されます。

特発性大腿骨骨頭壊死は難病にも指定されており、日本における年間の発生数は2,000〜3,000人、好発年齢は30〜50歳代で男女比は1.5対1とされています。

出典:公益財団法人 難病医学研究財団 難病指定センター「特発性大腿骨頭壊死症」

症状は、歩行時や起き上がり時などの股関節の痛みとして現れることが多いですが、腰痛や坐骨神経痛として現れる場合もあります。

壊死している範囲が小さかったり、体重がかかりにくい部分が壊死したりしている場合は保存的治療が検討されますが、骨頭部分がつぶれるほど壊死が進行している場合は手術をおこないます。

大腿骨骨頭壊死

大腿骨頭壊死の原因

大腿骨頭壊死は原因が明確な「症候性大腿骨骨頭壊死」と、原因が解明されていない「特発性大腿骨骨頭壊死」に大別されます。

症候性大腿骨骨頭壊死の原因は外傷や放射線治療などによるものです。

外傷による股関節の脱臼や骨折などにより、骨頭への血流が阻害されることがあります。

また、がん治療などでおこなう放射線照射は骨組織に影響を及ぼす可能性があります。

特発性大腿骨頭壊死症と関連深いとされているのは、ステロイド剤の服用や長期間にわたる大量のアルコール摂取です。

ステロイド薬を1日平均で15mg以上服用したことがある人や、日本酒換算で毎日2合以上の飲酒をしている人がリスクが高いとされています。

出典:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 特発性大腿骨頭壊死症」

疾患の治療としてステロイド剤を多量に服用している人は、医師の指示に従って使用量を守る必要があります。

日頃から大量に飲酒する習慣がある人は、アルコール摂取量を制限することも大切です。

大腿骨頭壊死の前兆や初期症状について

大腿骨骨頭壊死は骨頭が壊死しただけの状態では症状を感じにくいこともあり、骨壊死の発生から遅れて症状を自覚する人もいます。

壊死した場所が潰れたとき(圧潰)に症状が出るため、急に痛みを感じる点が特徴です。

必ずしも股関節周辺の痛みとして出現するとは限らず、腰痛や臀部(でんぶ)の痛み、膝の痛みとして感じる場合もあります。

初発の痛みは数週間の安静により軽快し、再び痛みを感じたときにはすでに圧潰が進んでいるケースもあるため、これらの症状を見逃さないようにしましょう。

大腿骨頭壊死の検査・診断

大腿骨骨頭壊死の主な検査方法は以下のとおりです。

  • 画像検査(レントゲン検査・MRI検査・CT検査)
  • 骨シンチグラフィー

レントゲン検査やMRI検査、CT検査などの画像検査は大腿骨骨頭壊死を調べるための基本的な検査です。

レントゲン検査では骨の形状や位置の確認ができ、MRI検査やCT検査では壊死や陥没の程度、範囲などをより詳細に調べられます。

骨シンチグラフィーとは微量の放射性物質を含む薬剤を使用し、専用のカメラで骨の状態を撮影する検査です。

病変が起きている部位に放射性物質が集まるため、比較的広めの範囲を観察できます。

大腿骨頭壊死の診断は複数の検査結果を総合的に評価しておこないます。

初期の大腿骨頭壊死は症状が軽い場合があり、状態が悪化してから発見されることも少なくありません。

ステロイドの服用やアルコールの過剰摂取、その他にも大腿骨骨頭壊死と疑わしい場合は早めに医療機関を受診し適切な検査を受けることが重要です。

大腿骨頭壊死の治療

大腿骨骨頭壊死の治療法は、保存療法と手術療法の2つに分かれます。

保存療法と手術療法ともに経過観察が重要で、病状の変化に応じて治療方針が変更されることがあります。

保存療法

壊死の程度や範囲、位置などから手術の必要はなく予後がよいと判断された場合において、保存療法を選択します。

杖を使うことで患部にかかる負担を軽減したり、痛みが強いときに鎮痛剤を使用したりして対処します。

体重コントロールや長距離歩行の制限など、生活上の指導をおこなうこともあります。

保存療法で対応していても、病変の悪化がある場合は手術療法へ切り替える可能性もあります。

手術的治療

圧潰の進行や自覚症状を認める場合は、骨切り術や人工股関節置換術などの手術療法をおこないます。

骨切り術とは大腿骨の形状を変化させることにより、体重がかかる部位を病変のない面に移動させる手術です。

自分の健常な骨を使用するため、若年患者において第一選択される治療法です。

人工股関節置換術とは、壊死した部分を人工の関節に置き換える手術で、骨頭のみを人工物に置き換える術式と股関節全体を人工物に置き換える術式があります。

壊死が広範囲に及んでいたり圧潰が進行していたりする場合に選択される手術方法です。

人工物を挿入するため骨切り術と比べて早期から荷重でき、入院期間が短い利点がありますが、場合によっては一定の期間を経て人工関節の入れ替えをおこなわなければならないこともあります。

大腿骨頭壊死になりやすい人・予防の方法

大腿骨骨頭壊死になりやすい人は、主に以下のような人です。

  • ステロイドを服用してる人
  • アルコールを過剰摂取している人
  • 外傷歴がある人
  • 放射線治療を受けている人

高用量のステロイドを長期間にわたり使用していたり、日常的に大量のアルコールを摂取していたりする場合、骨組織へ悪影響を及ぼすため大腿骨骨頭壊死につながるといわれています。

また、けがや事故などにより外傷歴がある場合や、放射線治療により高線量の放射線を照射された経験がある場合もリスクが高いです。

大腿骨骨頭壊死は完全に予防することは難しいものの、以下の方法によりリスクを減らせます。

  • ステロイドの適切な管理
  • アルコール摂取量の制限

病気の治療でステロイドを服用している人は、医師の指示に従って用法や用量を守りましょう。

不安を感じる場合は医師に相談することも大切です。

アルコールを多量に摂取する習慣がある人は過度の飲酒を避け、適度な飲酒量を心がけてください。

大腿骨骨頭壊死は早期発見や早期治療が重要です。

リスクがある方や股関節に違和感がある場合は、早めに整形外科を受診してください。


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