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岡田 智彰

監修医師
岡田 智彰(医師)

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昭和大学医学部卒業。昭和大学医学整形外科学講座入局。救急外傷からプロアスリート診療まで研鑽を積む。2020年より現職。日本専門医機構認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定整形外科指導医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リハビリテーション医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。

腰椎椎間板ヘルニアの概要

背骨は椎骨(ついこつ)という骨が積み重なってできており、腰椎は腰に存在する5個の椎骨で構成された部分です。
そして、この椎骨と椎骨の間にはクッションの役割を果たして、背骨が動きやすくするために椎間板という軟骨があります。
この椎間板は、真ん中に髄核(ずいかく)というゼリー状の物質があり、その周りを線維輪というものが囲んでいる構造をしています。
椎間板自体が劣化したり、急に腰に負担がかかることにより、髄核が線維輪を破って外に飛び出し、腰の神経が刺激され、症状が生じる疾患のことを「腰椎椎間板ヘルニア」といいます。

腰椎椎間板ヘルニアは、腰への負担の積み重ねや、急な負担がかかることで発症するため、活動性の高い20~40歳代の男性が最も発症しやすくなっています。

腰椎の中でも、腰椎椎間板ヘルニアを発症しやすい場所が存在します。
腰椎は第1〜第5まで5つがありますが、構造上負担のかかりやすい第4腰椎と第5腰椎の間、また第5腰椎とその下の仙骨の間でよく発症します。

腰椎椎間板ヘルニアを発症すると、主にお尻や足の痛み・しびれ、脚の力が入りにくく動かしにくいなどの症状が出ます。

発症しても基本的には、手術を行わない保存療法が主ですが、症状が深刻の場合は手術を行う場合もあります。
また、腰椎椎間板ヘルニアはある一定の割合で再発してしまう危険性もあるため、正しい予防策と生活習慣の改善が重要です。

腰椎椎間板ヘルニアの原因

主な原因は、腰椎の椎間板に負担をかける行為です。
具体的には、重いものを持ち上げる、体をひねるといった動作、長時間座る姿勢を続けるなどがあります。

椎間板は体重を支えるためにいつも大きな圧力がかかっていますが、その中でも、座った姿勢は立った時より約1.5倍、立って前かがみで荷物を持った場合は立った場合の約2.5倍の負担がかかるといわれています。

このように腰椎の椎間板に負担がかかる動作を繰り返し行うことで、椎間板の中心部に存在する髄核が破れてしまい、周囲の神経を圧迫してしまいます。

その他にも、加齢や喫煙なども腰椎椎間板ヘルニアを発症する1つの原因として考えられています。

椎間板は多くの水分によって構成されていますが、年齢を重ねるごとに、椎間板内の水分が失われることで弾力が低下し、クッション機能を十分に発揮できなくなるため、ヘルニアを発症しやすくなると考えられています。

また、タバコに含まれているニコチンは、椎間板を変性させて椎間板ヘルニアになりやすくなるとも考えられているため、喫煙者の方は注意しましょう。

腰椎椎間板ヘルニアの前兆や初期症状について

腰椎椎間板ヘルニアは、重たい荷物を急に持ち上げたときに発症する急性型と、少しずつ症状が進行する慢性型にわかれます。

急性型の場合は、前兆もなく発症しますが、慢性型の場合は、腰の負担が常時かかり過ぎた結果として症状が進行するため、痛みが無くても腰のこりや違和感、動きの悪さなどが前兆としてみられる場合があります。

その後、腰椎椎間板ヘルニアを発症した場合の初期症状として最もみられるのは腰痛です。
腰痛は、ぎっくり腰のような激しい痛みがおこり、数日後からお尻から脚にかけて痛み・痺れを感じることが多い傾向です。

この痛み・痺れは、背筋を伸ばしているときには症状が軽いものの、前かがみの姿勢になると強くなる点が特徴です。
また、神経の圧迫が強くなると、脚を中心とした筋力の低下がみられ歩きにくくなったり、排尿・排便をコントロールしにくくなる場合もあります。

上記のように、腰の痛み、脚の痛みやしびれを感じる場合は整形外科を受診して検査・治療をしてもらいましょう。

腰椎椎間板ヘルニアの検査・診断

腰椎椎間板ヘルニアの検査・診断は下記の手順で行います。

問診

いつから腰が痛むか、どこが痛むか、痛み・しびれの症状の現れ方や経過、仕事内容、生活習慣などを詳しく問診します。

その問診の中で「突然痛くなった」「腰を前にかがむと痛みが出る」などのキーワードが出た場合は、腰椎椎間板ヘルニアを疑います。

神経学的診察

体をひねったり前かがみになったりして痛みがどう変化するか、脚を持ち上げたりしてももの裏やお尻が痛くなるかなどを評価します。

腰椎椎間板ヘルニアの場合は主に下記のような症状が出現します。

①体幹前屈制限
前かがみになると痛みが強くなるため、体を前に倒しにくくなります。
②疼痛性側彎(とうつうせいそくわん)
痛みを避けるために体を傾けた姿勢をとりやすくなります。
③下肢伸展挙上テスト(SLRテスト)
膝を伸ばしたままゆっくりと脚をあげていくテストで、一般的には70度前後まで足を上げることができますが、椎間板ヘルニアの場合は、それ以下で痛みを感じたり、しびれが生じます。
④大腿神経伸張試験(FNSテスト)
うつ伏せに寝てもらい、膝関節を曲げた状態で、股関節を後ろに伸ばします。
検査の結果、腰椎椎間板ヘルニアの場合は、太ももの前側やすねの内側に痛みを生じます。

画像診断

腰椎椎間板ヘルニアに対しての、画像診断は一般的にCT検査・MRI検査のどちらかを行います。

MRI検査を行うことで、腰椎椎間板ヘルニアの場所、大きさ、形、神経がどれだけ押されているかなど詳細な内容を評価できるため、椎間板ヘルニアかどうかを見極めたい場合は、MRI検査がおすすめです。

上記の内容を実施した結果、腰椎椎間板ヘルニアと診断されます。

腰椎椎間板ヘルニアの治療

腰椎椎間板ヘルニアの場合、手術療法が必要となるケースは少なく、保存療法が主に行われます。

保存療法

①薬物療法
痛みや炎症を和らげる目的で鎮痛薬を使用します。
②神経ブロック注射
神経の周囲に直接注射して痛みを抑える神経ブロック注射を行います。
③リハビリテーション
痛みがある程度落ち着いたら、下半身や体幹を中心とした筋肉トレーニングや姿勢や動作の改善などを行い腰への負担を軽減させます。

手術療法

保存療法を2〜3ヵ月程度行っても効果が認められずに痛みを繰り返している、もしくは痛みが増していることにより、日常生活に支障が出ている場合などに行います。

手術はヘルニアを取り出し、神経への圧迫を取り除くことが目的ですが、手術にはさまざまな方法があるため、主治医と相談して手術方法を決定しましょう。

腰椎椎間板ヘルニアになりやすい人・予防の方法

腰椎椎間板ヘルニアは、下記のような方は注意が必要です。

20〜40歳代の男性
働き盛りなので腰に負担がかかりやすいため、発症しやすい年齢です。
姿勢が悪い人
反り腰や猫背など、悪い姿勢が長期間続くと腰に負担がかかります。
喫煙者
喫煙で血流がわるくなり、椎間板の健康に悪影響を与える可能性があります。
肥満の方
体重が増えると腰への負担が大きくなるため注意が必要です。
重い物をよく持つ人
重い物を頻繁に持ち上げる仕事や活動をしている場合は、常に腰への負担がかかっている可能性があります。
長時間座っている方
デスクワークなどで長時間座り続けている場合、立っている時より腰への負担が大きくなります。

これらの条件にあてはまる場合は、腰椎椎間板ヘルニアになりやすい傾向なため注意が必要です。

また、腰椎椎間板ヘルニアを予防するには、腰に負担をかける動作を避けるとともに、負担に耐えられるだけの身体を作ることを意識しましょう。

具体的には、前かがみの姿勢など同じ姿勢を続けない、中腰での重い物の持ち上げないなどのように腰に負担がかかる姿勢や動作を避けることが重要です。

また、それとともに脚・体幹を中心とした筋肉トレーニングを行って、姿勢維持や椎間板への負担を軽減させることが有効な方法の1つです。

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