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シーバー病
佐藤 章子

監修医師
佐藤 章子(医師)

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[【経歴】
東京女子医科大学医学部卒業 / 川崎市立川崎病院整形外科初期研修医 / 東京女子医科大学東医療センター整形外科リウマチ科医療練士助教待遇 / 東京警察病院整形外科シニアレジデント / 医療法人社団福寿会整形外科 / 菊名記念病院整形外科 / 厚生中央病院整形外科 / 日本医科大学付属病院整形外科リウマチ科助教 / 国立国際医療研究センター国府台病院整形外科 / 現在は無所属だが大学院進学、リウマチ班のある大学への移籍を交渉中 / 専門は整形外科、リウマチ科 / 他に得意分野は骨粗鬆症治療と高齢者治療
【主な研究内容・論文】
リウマチ患者に対する生物学的製剤の治療成績の検討、人工肘関節弛緩術の治療成績の検討、精神科疾患を合併する整形外科手術症例の検討など
【保有免許・資格】
日本整形外科学会専門医、リウマチ認定医
臨床研修指導医

シーバー病の概要

シーバー病(英語名:Sever シーヴァー)とは踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)とも呼ばれ、アキレス腱付着部を中心とした踵の骨の痛みや圧痛、腫れが主症状の疾患です。踵の骨への血流が障害されることで生じる無腐性骨壊死や踵骨軟骨の炎症によって痛みが生じます。時間の経過とともに骨組織は再生し修復されますが、修復されるまでは痛みを伴うことが多い疾患です。

走行時にかかる着地の衝撃が骨端線(小児特有の骨の隙間)へ加わり続けることや下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)がアキレス腱を介して踵の付着部が引っ張られることで発症すると考えられており、好発年齢は10歳前後といわれています。なお、一般的に14〜20歳頃には骨端線が閉じるため、骨端線が閉じたあとには生じないことも特徴です。

シーバー病

シーバー病の原因

運動によって地面からの衝撃が踵に入り続けることや下腿三頭筋に大きな力が加わることが原因です。

着地の衝撃が踵の骨に入り続けると、骨端核の炎症につながる可能性があります。また、下腿三頭筋の力でアキレス腱が引っ張られると踵の骨を引っ張ります。小児の発育期ではまだ踵の骨が脆く、骨端線が閉じていないため、繰り返される牽引力によって血流が障害され、シーバー病が発症すると考えられています。

特に陸上やサッカーなどの走る競技、バスケットボールやバレーボールなどジャンプを繰り返す競技、柔道や剣道など素足で行う競技で発症することが多い疾患です。

シーバー病の前兆や初期症状について

シーバー病の前兆・初期症状としては、走行時・ジャンプ時の踵の痛みが挙げられます。初期段階であれば運動時の軽い痛みのみですが、悪化してくると歩行も困難になるほどの痛みを伴うこともあります。

また、アキレス腱のストレッチで踵に痛みが出る人は要注意です。強い牽引力がかかって痛みが出ていることが考えられるので、シーバー病に移行する可能性があります。

シーバー病の検査・診断

シーバー病の検査にはレントゲン撮影が用いられます。
小児の骨では大人の骨と違い骨の先端に骨端線という線が入っていて、骨が分かれています。その線が通常よりも広く隙間が大きかったり、隙間の外側にある骨(骨端核)が割れていれば(骨端核の分節化)シーバー病の疑いが強いです。

ただし、シーバー病でもこのような骨端線の離開や骨端核の分節化がみられず、少し白く写っているだけの場合があります。レントゲンで白く写ることは大人でも多々あることなので、これだけではシーバー病だと確定診断できません。

10歳前後で踵の骨、とくにアキレス腱付着部周囲の痛みが強くレントゲンで確定診断できない場合には、CT・MRI検査を行うことが一般的です。CT・MRI検査ではレントゲン検査では判明しない炎症も確認することができるので、シーバー病の確定診断にも有効です。

また、最近では超音波を検査に使用する施設も増えてきています。超音波はCT・MRIよりも簡単・安価に検査できるメリットがあるため、早期発見の手段として有効です。

シーバー病の治療

シーバー病は1〜2年程度から数年かかることもあります。骨の成長が終われば、自然治癒します。
治療は保存療法が一般的です。治療では踵への衝撃が入らないようにすることが重要で、有効な手段として以下の方法が取られます。

  • 靴の中敷を柔らかいものやアーチサポートが強いものにする
  • 踵のみを底上げしてヒールを作る
  • 局所の安静のため、スポーツ活動などの中止

中敷を柔らかいものに変えることで、歩行時や走行時に踵に入る衝撃を緩和する効果が期待できます。また、踵を高くしてヒールを作ることで、アキレス腱が踵を引っ張る力が弱くなるため、痛みの軽減につながりやすくなります。

靴へのアプローチ以外では、下腿三頭筋のマッサージ・ストレッチも有効です。下腿三頭筋をマッサージ・ストレッチすることでアキレス腱が踵を引っ張る力が弱くなるため、痛みの軽減が期待できます。
そのほかBMIが高い患者の場合には食事を含めた生活習慣の改善が必要です。体重の管理や姿勢のコントロールも考える必要があるかもしれません。

このような靴や筋肉へのアプローチをしても痛みが落ち着かない場合には、そもそもの運動量を落とし運動強度を下げることが必要です。シーバー病は予後が良好な疾患ではありますが無理をすると炎症が悪化するため、痛みが強い場合には安静も検討します。

シーバー病になりやすい人・予防の方法

シーバー病になりやすい人の特徴は、以下のようなものが挙げられます。

  • 足関節や下腿三頭筋(ふくらはぎの筋肉)が硬い人
  • BMIが高い人
  • 足部の形が崩れている人
  • 運動量が多い人
  • 急激に身長が伸びた人

足関節が硬い人

足関節の動き、特に背屈動作(つま先を脛に近づける動き)が硬い人はシーバー病になりやすいと言われています。この動きは下腿三頭筋が硬いと動きにくくなる特徴があります。なぜなら、ふくらはぎの筋肉が伸びないとつま先が脛に近づかないためです。

しかし、走る時には足首を動かさないといけません。背屈動作が硬いにも関わらず足首の動きが強制されるため、アキレス腱が強く引っ張られてしまい、踵への負担が大きくなります。そのため、下腿三頭筋が硬く足関節の背屈が硬くなっている人はシーバー病になりやすいと考えられています。

BMIが高い人

太っていてBMIが高い人もシーバー病のリスクが高いと考えられています。体重が軽い人と比較すると重たい人は走る時により大きな力が必要なため、踵へかかる負担が大きくなるためです。そのため、BMIが高い人はシーバー病へのリスクが高まります。

足部の形が崩れている人

足部の形が崩れている人、例えば扁平足・外反母趾などの人も要注意です。足には片足で種子骨も含め28個も骨があり、これらの骨が釣り合っていることで足の骨が安定します。足の役割は歩行時や走行時の推進力を出すことに加え、地面からの衝撃を緩和する役割がありますが、形が崩れてしまうと本来の力が発揮できません。

本来の力が発揮できないことで下腿三頭筋により大きな力が必要となり、アキレス腱が踵を引っ張る力が強くなるため、地面からの踵に入る衝撃がより大きなものになってしまいます。このような理由から、足部の形が崩れている人はシーバー病になりやすいと考えられています。

運動量が多い人

運動量が多いとアキレス腱が踵を引っ張る回数も増えるため、踵への負担が多くなります。そのため、運動量が多い人はシーバー病のリスクが高くなると考えられています。特に陸上競技やサッカーなど走行が多い競技は要注意です。

急激に身長が伸びた人

急激に身長が伸びた人もシーバー病のリスクが高まります。骨の成長に対して、筋肉は同様に伸びてくれません。そのため、骨にくっついている筋肉は骨の成長によって過剰に引っ張られます。過剰に引っ張られることで踵への負担が大きくなり、シーバー病のリスクが高まります。

予防方法は足の可動域・柔軟性や筋力をしっかりと保つことです。例えばアキレス腱のストレッチやタオルギャザーという足指の運動はシーバー病の予防に効果的と考えられています。
また、運動量のコントロールも重要です。特に小児期は競技をやりたい気持ちが先行し、痛みがあっても無理をしがちになるでしょう。痛みが出たら無理をせず整形外科もしくは小児科を受診し、休ませることが重要です。


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