FOLLOW US

目次 -INDEX-

打撲
佐藤 章子

監修医師
佐藤 章子(医師)

プロフィールをもっと見る
[【経歴】
東京女子医科大学医学部卒業 / 川崎市立川崎病院整形外科初期研修医 / 東京女子医科大学東医療センター整形外科リウマチ科医療練士助教待遇 / 東京警察病院整形外科シニアレジデント / 医療法人社団福寿会整形外科 / 菊名記念病院整形外科 / 厚生中央病院整形外科 / 日本医科大学付属病院整形外科リウマチ科助教 / 国立国際医療研究センター国府台病院整形外科 / 現在は無所属だが大学院進学、リウマチ班のある大学への移籍を交渉中 / 専門は整形外科、リウマチ科 / 他に得意分野は骨粗鬆症治療と高齢者治療
【主な研究内容・論文】
リウマチ患者に対する生物学的製剤の治療成績の検討、人工肘関節弛緩術の治療成績の検討、精神科疾患を合併する整形外科手術症例の検討など
【保有免許・資格】
日本整形外科学会専門医、リウマチ認定医
臨床研修指導医

打撲の概要

打撲は日常生活やスポーツ活動中によく遭遇する外傷の一つです。医学的には挫傷とも呼ばれ、外力によって体の一部が強く圧迫されることで生じる軟部組織の損傷を指します。打撲は皮膚表面に明らかな傷がないことが特徴で、一般的に「打ち身」という言葉でも知られています。

打撲の特徴として、受傷直後よりも時間が経過してから痛みが強くなることです。これは、組織の損傷に伴う炎症反応や内出血が徐々に進行するためです。打撲部位には腫れや熱感、痛みが生じ、皮下出血によって青紫色や赤紫色の変色(いわゆる「あざ」)が現れることもあります。

打撲の重症度は、受けた衝撃の強さや部位によって様々です。軽度の打撲であれば、1〜2週間程度で自然に回復することが多いですが、重度の場合は骨折や内臓損傷を伴うこともあり、注意が必要です。特に頭部や腹部の打撲は、外見からは判断しづらい重篤な損傷を引き起こす可能性があるため、慎重な対応が求められます。

打撲は一見軽微な怪我に思えますが、適切な処置を行わないと長期化したり、後遺症を残したりする可能性があります。例えば、関節周囲の打撲では、適切な処置を怠ると関節拘縮を引き起こし、動きが制限されかねません。

打撲は日常的に起こりうる怪我ですが、その程度や部位によっては重大な結果を招く可能性があるため、軽視せずに適切な対応を心がけることが大切です。

打撲の原因

打撲の原因は多岐にわたりますが、主に外部からの衝撃や圧力が身体に加わることで発生します。以下に代表的な原因について詳しく説明します。

転倒

日常生活や運動中に足を滑らせたり、バランスを崩したりして転倒することで打撲に至ります。特に高齢者や子供はリスクが高く、注意が必要です。転倒による打撲は、膝や肘、臀部などが打撲の対象となることが多いです。

スポーツ中の接触

スポーツ活動中の接触や衝突も打撲の主要な原因です。例えば、サッカーやバスケットボールなどの接触プレーが多いスポーツでは、他の選手との衝突や転倒によって打撲が発生することがあります。また、格闘技やラグビーのような激しい接触が伴うスポーツでは、打撲のリスクがさらに高まります。

交通事故

交通事故は打撲の原因の一つです。自動車事故では、スピードが出ているため、衝突した際の衝撃が大きく、打撲だけでなく骨折や内部臓器の損傷も併発することがあります。

日常生活の不注意

家具やドアに体をぶつけるなど、日常生活におけるちょっとした不注意も打撲の原因となり得ます。特に狭い空間での移動や、急いでいる時に物にぶつかることが多いです。これらの日常的な事故は、打撲を避けるための注意が必要です。

工事現場での事故

工事現場では、重機や工具の取り扱いミスによる打撲が生じることがあります。特に重機の操作ミスや、高所からの落下物による打撲は重大なケガに繋がる可能性が高いため、工事現場での安全対策が重要です。

打撲の原因を理解し、日常生活や運動中の注意深い行動と適切な防具の着用を心がけることで、打撲の発生を防ぐことができます。また、万が一打撲が発生した場合には、早急に適切な対処を行うことが症状の悪化を防ぐために重要です。

打撲の前兆や初期症状について

打撲の前兆や初期症状は、外部からの衝撃を受けた直後に現れることが多いです。これらの症状を早期に察知し、適切な対処を行うことで、打撲の悪化を防ぐことができます。

痛み

打撲直後に最も顕著に現れる症状が痛みです。痛みの強さは打撲の程度や部位によりますが、通常は衝撃を受けた瞬間に鋭い痛みを感じ、その後も持続的な痛みが続くことが多いです。痛みは時間の経過とともに軽減しますが、重度の打撲の場合は長期間にわたり痛みが続くこともあります。

腫れ

打撲部位は、衝撃を受けた後に腫れが生じます。これは血管が破れて内出血が起こり、組織液が溜まることによるものです。腫れは通常、打撲を受けた2~3日以内に最大となり、 に最大となり、その後徐々に引いていきます。冷やすことで腫れを抑えることができます。

青あざ

内出血が原因で、打撲部位が青紫色に変色することがあります。これを青あざと呼びます。青あざは打撲から数日後に現れることが多く、徐々に色が変わりながら消えていきます。通常、1〜2週間で自然に治癒します。

動きの制限

打撲によって痛みや腫れが生じると、打撲部位の動きが制限されることがあります。例えば、膝や肘の打撲では、関節を動かす際に痛みが生じ、日常の動作が制限されることがあります。無理に動かすと症状が悪化するため、安静にすることが重要です。

熱感と発赤

打撲部位が温かく感じられることがあります。これは炎症反応の一部であり、打撲によって引き起こされる正常な反応です。また、打撲部位が赤くなることもあります。これらの症状は通常、時間とともに自然に治まります。

これらの前兆や初期症状を見逃さず、適切な対処を行うことで、打撲の悪化を防ぎ、早期の回復が期待できます。初期対応としては、患部を冷やし、安静を保つことが基本となります。打撲によって受診する際は、一般的には整形外科を受診しますが、頭部を打撲している際は脳神経外科を受診しましょう。

打撲の検査・診断

打撲の検査や診断は、打撲の程度や部位によって異なります。一般的には、以下のような方法で打撲の状況を評価し、適切な治療方針を決定します。

視診と問診

まず、医師は打撲部位を視診し、腫れや青あざの状態を確認します。また、患者さんから受傷の状況や現在の症状について詳しく問診を行います。これにより、打撲の原因や痛みの程度、日常生活への影響などを把握します。

触診

視診や問診の後、医師は打撲部位を触診して、腫れや硬さ、痛みの場所などを確認します。触診によって、内部の損傷具合や筋肉の緊張状態などを評価します。痛みの場所や程度を詳細に把握することで、治療方針を立てる際の参考になります。

画像検査

打撲の程度が重い場合や、内部臓器への損傷が疑われる場合には、画像検査が行われることがあります。具体的には、X線検査やMRI、CTスキャンなどが用いられます。これらの検査により、骨折の有無や内部臓器の損傷状況を詳細に確認することができます。

血液検査

打撲が重度で、内部出血が疑われる場合には、血液検査が行われることがあります。血液検査では、出血の程度や炎症の有無を確認し、必要な治療方針を決定します。特に腹部や頭部の打撲では、血液検査が重要な診断手段となります。

超音波検査

腹部や胸部の打撲では、超音波検査も有効です。超音波検査では、内部臓器の損傷や血液の流れを詳細に確認することができます。非侵襲的でありながら、詳細な情報が得られるため、打撲の診断には非常に有用です。

これらの検査や診断を通じて、打撲の程度や具体的な損傷状況を正確に把握することが可能となります。適切な診断が行われることで、治療方針を立てる際の参考になります。

打撲の治療

打撲の治療は、打撲の程度や部位によって異なります。軽度の打撲は家庭での応急処置で治癒しますが、重度の打撲は医療機関での治療が必要となります。以下に、一般的な打撲の治療方法について説明します。

安静と冷却

打撲の初期治療として最も重要なのは、安静と冷却です。打撲を受けた直後は、患部を冷やすことで腫れや痛みを抑えることができます。冷却には、氷嚢や冷却ジェルパックを使用し、1回20分をめどに 冷やすことが効果的です。また、打撲部位を高く上げて安静に保つことも腫れの軽減に役立ちます。

圧迫と固定

打撲部位を圧迫することで、内出血を抑え、腫れを軽減することができます。弾性包帯や圧迫バンデージを使用して患部を適度に圧迫し、固定することが推奨されます。ただし、圧迫が強すぎると血流が悪くなるため、適度な圧迫を心掛けることが重要です。

痛み止めの使用

痛みが強い場合は、痛み止めの使用が効果的です。市販の鎮痛剤(例えば、アセトアミノフェンやイブプロフェン)を服用することで、痛みを和らげることができます。痛みが続く場合や、市販薬で効果が見られない場合は、医師に相談することが必要です。

打撲の治療は、早期の適切な対処が回復を促進し、症状の悪化を防ぐために重要です。家庭での応急処置と医療機関での治療を組み合わせることで、打撲の回復をスムーズに進めることができます。

打撲になりやすい人・予防の方法

打撲になりやすい人には、いくつかの特徴があります。これらの特徴を理解し、適切な予防策を講じることで、打撲のリスクを減少させることが可能です。

打撲になりやすい人

打撲になりやすい人には、高齢者や子供、スポーツ選手などが挙げられます。
高齢者は、筋力やバランス感覚の低下により、転倒しやすくなります。転倒による打撲は高齢者にとって重大なケガになることが多いため、注意が必要です。日常生活での転倒防止策として、手すりの設置や滑りにくい床材の使用を検討します。
子供は活動的で、走り回ったり、遊びの中で転倒することが多いため、打撲のリスクが高いです。特に遊び場や学校での事故が多いため、親や教師の目が行き届く環境作りが重要です。また、適切な防具の着用も打撲の予防に役立ちます。
スポーツ選手の場合は、競技中の接触や衝突により打撲を受けやすいです。特に接触プレーが多いスポーツでは、リスクが高いため、防具の着用や技術の向上により打撲のリスク軽減を図ります。また、適切なウォーミングアップやクールダウンを行うことも予防に効果的です。

予防の方法

打撲を予防するためには、日常生活や運動中の注意深い行動が重要です。以下に、打撲予防のための具体的な方法を紹介します。

・適切な防具の着用
・バランストレーニング
・周囲の環境整備
・適切な姿勢と動作

スポーツや工事現場など、打撲のリスクが高い状況では、適切な防具を着用することが重要です。ヘルメットや膝当て、肘当てなどの防具を使用することで、外部からの衝撃を軽減し、打撲を予防することができます。
また、バランス感覚を向上させることで、転倒のリスクを減少させることができます。バランストレーニングや筋力トレーニングを日常的に行うことで、筋力やバランス感覚を維持し、打撲の予防に効果的です。

家庭や職場、運動場などの環境を整えることも打撲のリスクを減少させることができます。例えば、家具の配置を工夫して動きやすい空間を作ることや、滑りにくい床材を使用することが効果的です。

日常生活や運動中の姿勢や動作にも注意が必要です。適切な姿勢や動作を心掛けることで、無理な力が加わることを防ぎ、打撲のリスクを減少させることができます。特に重い物を持ち上げる際には、腰や膝を使って正しい姿勢を維持することが重要です。

打撲を予防するためには、これらの方法を日常生活に取り入れることが大切です。予防策を講じることで、打撲のリスクを大幅に減少させ、健康な生活を維持することができます。


関連する病気

この記事の監修医師