

監修医師:
五藤 良将(医師)
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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
目次 -INDEX-
リンパ節炎の概要
リンパ節炎は、リンパ節が何らかの要因により感染して生じる病気です。 そもそもリンパ節は身体の表面と深部の随所にはり巡らされていて、主に首の周り(耳周辺・首側面・鎖骨・耳から顎ラインにかけての骨上下)や脇の下、足の付け根などにあります。 リンパ節はリンパ管から流れる異物を処理して入り込まないようにする、Bリンパ球の分化や成熟にも重要です。絶えずリンパが流れると、原因となる細菌やウィルスに抵抗・排除して体内を正常に保つ役割を担っています。 リンパ節炎が発症するときは、体内で病気のもとになる要因への抵抗力が低下している状態です。 発症すると当該箇所が赤く変色したり膨らんだりして腫れあがり、ときには痛みも伴います。その性質上、目視で腫れに気づくことが多いですが、他の疾患との鑑別が必要なケースもあります。なお炎症が進行すると、リンパ節のなかに膿が溜まる場合もあるため注意が必要です。 リンパ節炎の種類は多種多様で、なかにはいまだに原因が判明していない症状も含まれています。ただし、良性であれば自然治癒や投薬などで早い段階で完治するものです。がんや悪性腫瘍に伴う炎症であった場合は早急に抗がん剤や放射線治療などの適切な治療が求められます。リンパ節炎の原因
リンパ節が腫れる主な要因は感染症や免疫・アレルギー疾患のほか、血液のがん・がんの転移などが考えられます。 リンパ節炎の代表的な例は、急性リンパ節炎・慢性リンパ節炎などです。急性リンパ節炎はウィルスもしくは細菌に感染すると発症します。 細菌はブドウ球菌・溶連菌・嫌気性菌などに由来する感染などが代表的です。これらは夏に起こりやすい感染症で、不衛生な環境で調理した料理を食すると発症するケースも報告されています。なお、むし歯を放置したことが要因で引き起こされるケースもある点に注意が必要です。 慢性リンパ節炎のうち結核性リンパ節炎は結核により発症します。結核を発症している人のくしゃみや咳の飛沫を吸い込むと感染します。 ほかにも女性(主に10〜30代)がかかりやすい亜急性壊死性リンパ節炎(別名・菊池病)には、主な原因が判明していないため現在も研究が進められている段階です。リンパ節炎の前兆や初期症状について
発症している箇所によっても異なりますが、患部にしこりや腫れがある場合・患部に圧迫するような痛みが出る・発熱(38度前後)する場合などがあります。腫れている場合は、1cm前後もしくは1.5cm以上に膨らんでいるのでわかりやすいです。 発症する部位も、首の周りだけが腫れる場合・身体中のあちこちに炎症が起こる場合なども珍しくありません。 腫れている箇所が狭い範囲(特に首の周りなど)に集中している・腫瘍が1cm前後もしくはそれ以下の大きさであれば、良性の可能性が高いです。ただし、鼠径部のリンパ節は健康な身体でも2cm前後の大きさに膨らんでいることがあるため、その限りではありません。 しかし、圧痛がないが硬く可動性が乏しい腫瘤は悪性の可能性があります。急性リンパ節炎の場合は短期間で急速に症状が進行しますが、即座に命に関わるものではないです。 逆に、広範囲にわたりリンパ節が腫れている・腫瘍が1.5cmもしくはそれ以上の大きさであれば悪性の腫瘍やがんが転移している可能性があります。この場合は痛みが伴わないことがほとんどなので、知らず知らずのうちに病状が進行してしまう、あるいは放置してしまいやすいものです。 不自然な症状を確認したらそのままにせず、注意深く経過を観察してください。 いずれにしても、気になる症状が現れた段階で内科・外科・耳鼻咽喉科などで診察を受けるのがよいでしょう。リンパ節炎の検査・診断
診察する際は視診や触診が中心です。症状次第ではファイバースコープを用いた観察・採血で炎症の有無を確認します。 罹患しているかどうかは、見ただけである程度判別可能です。腫脹している具体的な部位や数など、詳細の確認には画像検査(CT・MRI・エコー診断など)や穿刺吸引細胞診を施行して、病状の進行度や悪性の有無も併せて確認します。 原因に合わせた治療方法は後述しますが、発症した要因に合わない治療を試みても症状の改善は見込めません。検査や診断の段階で根本の原因を慎重に特定する必要があります。リンパ節炎の治療
リンパ節炎の治療は原因や症状が多種多様にわたる特性上、治療を行い完治を目指すためにさまざまなアプローチがあります。細菌由来の場合
抗菌薬や消炎鎮痛薬を投与しての治療です。ブドウ球菌・溶連菌・嫌気性菌などの細菌由来であれば、1〜2週間程度で快方に向かいます。 発症原因が判明していない亜急性壊死性リンパ節炎は、発病より3週間〜1ヵ月程度で自然治癒するケースがほとんどです。療養中に発熱やリンパ節の痛みが起こる場合は、感染が否定されたうえで、自己免疫疾患や非感染性炎症が疑われる場合に限り、慎重にステロイドが使用されることがあります。結核由来の場合
結核性リンパ節炎の場合は、結核の治療を主軸とした治療です。症状を確認しながら抗結核薬を投与して、病状の改善を試みます。 結核の治療期間は数ヵ月から1年(もしくは数年)が目安です。細菌由来の感染よりも長期間におよびますが、現在の医療では結核も正しい治療を受ければ完治が見込めます。必要以上に恐れず、専門の医師の指示を仰ぎながら欠かさずに投薬・療養を行いましょう。ウィルス感染由来の場合
麻疹・風疹などのウィルス感染に伴うリンパ節の炎症が該当します。 原則リンパ節に対する直接的な治療は行えず、経過観察を実施しながら安静にして病状の改善を待つしかありません。患部の痛みで日常生活に支障が出る場合は、鎮痛剤を投与して適宜対症療法を行います。悪性の腫瘍やがん由来の場合
がん治療の観点からI期・II期・III期・IV期に分類したうえで治療を行います。代表的な治療方法は、抗がん剤治療・放射線治療・分子標的治療・造血幹細胞移植(あるいは複数の治療方法を組み合わせる)などです。 がんの進行が緩やかな場合は身体への負担を避けるため、いったん何もせずに経過観察します。ステージが進んだりほかの症状が出たりした場合はあらためて治療を行う流れです。リンパ節炎になりやすい人・予防の方法
リンパ節炎になりやすい主な例として、不規則な生活を送っている・不摂生な食生活を送っている・運動不足などが挙げられます。 リンパ節炎の発症は、身体の抵抗力が下がっている点も要因のひとつです。抵抗力が高ければ、細菌やウィルスが体内に入っても炎症反応は起きません。免疫力を高めるためにも、健康的な生活を送ることは有効な手段です。 免疫力を高めるためにはまず、極力起床や就寝時間を一定に保つようにしましょう。生活や職業柄などの理由で起床・就寝時間を定めるのが難しい場合は、以下の点を意識してみてください。栄養バランスの取れた食事を摂る
毎日の食事は、心身の健康を保つための基礎ともいえます。偏りのない献立である前提で、特にビタミン(A・C・E)や、良質なたんぱく質を意識して摂取しましょう。 ただし、どのような食事であっても食べ過ぎは厳禁です。しっかり咀嚼した食事は1食ごとの満足度を高めます。適度な運動を心がける
激しくなくて構わないので、日常的に身体を動かすようにしましょう。できる限り外に出る・歩く頻度を増やすなどで、身体を冷やさないように心がけてください。 身体を動かす習慣の継続で、唾液中のIgAの分泌速度が高くなります。IgAは細菌やウィルスへの抵抗力も高めるため有効な手段のひとつです。質の高い睡眠時間を確保する
睡眠不足は免疫力が低下し、風邪をひきやすくなる・ストレスがかかりやすくなるなどの弊害があります。唾液中のIgAが低下する要因にもつながるため、就寝前はぬるめの温度で入浴をする(熱めの湯なら就寝の1~2時間前までに)・カフェインや夜食を控えるなどして質のよい睡眠を目指しましょう。胸部エックス線検査を受ける
ここまで紹介した3つの予防策は、感染由来のリンパ節炎である場合のみ有効な手段とされています。結核の感染に由来する結核性リンパ節炎であれば、定期健診で胸部エックス線検査を受けると早期発見にもつながります。 なお生後1歳未満の場合は感染後の重症化を予防するために予防接種を行いましょう。リンパ節炎が悪性の腫瘍やがんに由来する場合は、規則的な生活を送っても当該症状が確認できる場合もあります。 この場合でも、体調のわずかな変化を見逃さずに適切な治療を受ければ、万一病気が発覚しても病状の進行を抑えやすくなる可能性が見込めます。日頃から定期健診を行い、必要に応じて専門の医師の診察を受けましょう。関連する病気
- 感染症
- 悪性リンパ腫
- 自己免疫疾患
参考文献




