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関節リウマチ
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

関節リウマチの概要

関節リウマチは、自分の免疫システムが自分の身体を攻撃することによって生じる疾患です (参考文献 1, 2) 。「関節」リウマチというように、関節に痛みが出たり腫れたりという症状が代表的ですが、関節症状以外にも貧血やリウマトイド結節というできものが皮膚の下にできたり、胸膜炎、心膜炎、呼吸器疾患 (閉塞性肺疾患など)、目の疾患 (胸膜炎)、脾腫、シェーグレン症候群、血管炎、腎臓疾患を引き起こす場合があります (参考文献 1,3)。
関節リウマチの治療は DMARDs とよばれる免疫の機能を抑制する薬剤が中心になってきます。

関節リウマチの原因

関節リウマチの発症には遺伝、環境、免疫学的な要素が複雑に絡み合っています。血縁者に関節リウマチの患者がいる人や、喫煙者は発症リスクが高いこと、免疫機能に関わる特定の遺伝子多型をもつ人では発症リスクが高まることが知られています (参考文献 2, 4)。
これらの要因が重なり、自身の自然免疫や獲得免疫のシステムが、本来攻撃しないはずである自分の組織を攻撃するようになってしまうことで、関節リウマチを発症すると考えられています。

関節リウマチの前兆や初期症状について

症状の経過は個人差が多く一概には言えませんが、多くの方が訴える初期症状として関節の痛み・腫れ・朝のこわばりがあります (参考文献 1, 3)。症状が出る関節は左右対称で、特に手の指の第二関節 (PIP 関節) や手首が多いです (参考文献 1, 3)。どこの関節に症状があるかは診断上非常に重要ですので、受診する際はしっかりと担当のスタッフへ伝えましょう。
他の記事でも紹介しておりますが、関節の痛みを伝える際は次のポイントに注意して整理してみてください (参考文献 5) 。

「どこ」の関節が痛むのか

関節痛の原因によっては、症状が出やすい関節が知られている場合があります

「どのような」痛みか

長く続く鈍い痛みなのか、一瞬のズキっとした痛みなのか、言葉で表現してみてください

「どのくらい」痛むのか

よく医師が痛みの程度を聞く方法として「10を想像できる限りの痛みとして、1~10でどのくらいの痛みか」というものがあります

関節痛の「きっかけ」はありましたか?

足をひねってから、転んでからなど、関節痛を抱えるきっかけとなるようなことで思い当たることはありますか?

「何をするとき」に痛くなるのか、または楽になるのか

髪をとかすときに痛い、立ち上がるときに痛い、タオルを絞るときに痛いなど、痛くなるきっかけのようなものがあれば教えてください
お風呂に入ったら楽、座って休んだら楽になるなど、痛みを楽にするようなことがあれば、それも教えてください

痛みは「いつから」「良くなったり悪くなったり」していますか?

いつから関節痛があるのか、だんだんと痛くなってるのか、良くなったり悪くなったりなど症状に波があったのかを教えてください
「朝が一番きつい」など、一日の間でも波がある場合も教えてください

関節痛以外に「他の症状」はありますか?

発熱や皮疹、息苦しさなど、一見関節痛とは関係ないと思えるような症状でも、診断に結びつくことがあります

初めから「関節リウマチだ!」と自分で判断することは難しいと思います。まずは関節が痛ければ整形外科、発熱やその他の症状であれば内科に受診して問題ないと思います。そこで関節リウマチの診断がつけばそのまま治療が開始されることもありますし、さらに専門的な医療機関へ紹介されることもあります。

関節リウマチの検査・診断

関節リウマチが疑われる患者さんに対しては、問診や身体診察のほかに、血液検査や関節症状の程度を調べるための画像検査をしていき、それらの情報を総合的に勘案して関節リウマチか否かを診断します。
関節リウマチの血液検査ではリウマトイド因子や抗 CCP 抗体というマーカーを測定することが多いです (参考文献 1, 3) 。
画像検査ではエコーや 関節のX線検査 (レントゲン) 、MRI を用いた検査をします。関節リウマチで変化することの多い「滑膜」という組織の状態や、関節の破壊が進んでいないか、どの程度進んでいるのかをチェックします (参考文献 1, 3) 。

関節リウマチの治療

患者さんへの情報提供や精神的サポート、リハビリなどの非薬物療法と薬物療法に分かれます。
薬物療法では DMARDs (疾患修飾性抗リウマチ薬) に分類される薬剤を中心に治療していきます。まずはメトトレキサート (MTX) で治療を開始することが多く、それでも十分な効果が得られない場合には 生物学的製剤 (bDMARD) や JAK 阻害薬を用いることが多いです (参考文献 1, 6)。

関節リウマチになりやすい人・予防の方法

年齢や性別のほかに、家族集積性、遺伝的な要因、生活・環境要因がリスク要因として知られています (参考文献 1, 4) 。

     

  • 関節リウマチは40〜60歳代の方で多く発症するとされています。また、女性は男性に比べて発症リスクが高いです。
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  • 血縁者に関節リウマチの患者がいる場合や、特定の HLA-DRB1 などの遺伝子を持っている人では発症リスクが高いことが報告されています。
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  • 生活・環境要因としては喫煙や飲酒、乱れた食生活、肥満、運動習慣が乏しいことなどが関節リウマチのリスクになると可能性が報告されています。幼少期の副流煙への曝露もリスク要因と言われています。
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  • 喫煙と遺伝要因が組み合わさると発症リスクが跳ね上がるといわれています。

遺伝要因は予防できるものではないですが、禁煙や飲酒量の見直し、栄養バランスのとれた食習慣にしてみたり、定期的に運動することが予防につながると言えるでしょう。


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