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眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

側弯症の概要

側弯症とは、背骨が側方に曲がってしまう病気です。

通常、背骨はまっすぐですが、側弯症の人は背骨がS字C字の形に曲がっています。

特に成長期の子どもに多く見られ、思春期の女の子に多い傾向です。

側弯症が進行すると、見た目の問題だけでなく、身体に痛み機能障害を引き起こすことがあります。
早期に発見して治療することが重要です。

側弯症の原因

側弯症の原因は多岐にわたります。特発性側弯症(原因が特定できないもの)が最も一般的ですが、ほかにも先天性側弯症(生まれつきのもの)や神経筋原性側弯症(筋肉や神経の問題によるもの)があります。

特発性側弯症

特発性側弯症の正確な原因はまだわかっていません。

しかし、遺伝的な要因成長ホルモンの影響神経の異常バランスをとる機能の問題などが関与していると考えられています。
特に思春期の急激な成長が関係しているとされています。
最近の研究では、特定の遺伝子が側弯症のリスクを高める可能性があるとわかってきました。

その他の原因

先天性側弯症は、生まれつき背骨が異常な形をしているために起こります。

また、ほかの病気や症候群と関連して発生することもあります。

神経筋原性側弯症は、脳や筋肉の病気(例えば脳性麻痺や筋ジストロフィー)によって引き起こされることが多い傾向です。
これらのケースでは、早期に専門医の診察を受け、適切な治療を行うことが重要です。

側弯症の前兆や初期症状について

側弯症の初期症状には、背中や腰の異常な曲がり、肩の高さの違い、ウエストラインの左右非対称などがあります。

特に思春期の女の子では、学校の健康診断で指摘されることが多いようです。
家族が日常的に子どもの背中の変形に気付くこともあります。
また、背中の痛みや疲れやすさも初期症状として現れることがあります。
これらの症状は成長期に急速に進行することがあります。
重度の場合、側弯症は内臓の圧迫を引き起こし、呼吸困難消化不良などの深刻な症状を伴うことがあります。このため、初期段階での適切な治療が極めて重要です。

側弯症の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、整形外科です。側弯症は脊柱の異常であり、整形外科で診断と治療が行われています。

側弯症の検査・診断

側弯症の診断には、まず家族歴過去の病歴も確認します。
遺伝性の可能性もあるからです。
次に視診触診を行い、外観の異常や骨の変形を確認します。
その後、正確な診断のために画像検査が行われます。最も一般的な画像検査であるX線撮影では、背骨の曲がり具合だけでなく、椎骨のねじれや変形も評価します。

立った状態で背骨全体をX線で撮影することが重要です。
背骨の曲がり具合(Cobb角)を測定し、20度以上の曲がりがある場合は、専門医の診察を受けることが推奨されます。

また、さらに、MRIやCTスキャンを使って背骨の詳しい構造を評価することもあります。
MRIやCTスキャンを用いることで、脊髄や神経の状態も確認し、必要に応じて神経系の問題を除外します。
これらの診察と検査によって側弯症の正確な原因や進行状況がわかります。

側弯症の治療

治療は症状の程度や進行具合に応じて異なります。

保存的治療

軽度の側弯症の場合は定期的な観察

運動療法

が推奨されます。
進行が認められる場合には、ブレースと呼ばれる装具を使って背骨の曲がりを抑えます。

代表的なブレースには、ミルウォーキーブレースボストンブレースがあります。
これらの装具は、日中および夜間の着用が求められ、定期的なチェックと調整が必要です。
装具治療の効果を最大限に引き出すためには、患者さんとその家族の協力が不可欠です。

ブレース治療の目的は、背骨の曲がりを進行させないことです。
特に成長期の子どもにとって、装具の着用は大きな負担となることがありますが、これを継続することで手術を避けることが可能となる場合があります。

運動療法も重要な治療の一環です。
専門の理学療法士による運動プログラムは、筋力を強化し、柔軟性を向上させることで側弯の進行を防ぐことができます。
患者さんのライフスタイルや症状に合わせた個別の運動プランが理想です。

手術治療

進行した場合には、手術を検討することになります。
手術では、金属棒やスクリューを使用して背骨をまっすぐに固定します。
成長期の子どもには、成長をサポートしながら背骨の曲がりを矯正する

成長ロッド

を使うことがあります。

手術後は、数日間の入院と数ヶ月にわたるリハビリテーションが必要です。
リハビリテーションには、姿勢の改善や筋力の強化を目的とした運動療法が含まれます。
治療計画は年齢、健康状態、生活環境を考慮して決定されます。

手術の成功には、術前の詳細な計画と全体的な健康状態の評価が不可欠です。
手術後の回復期間には、専門の医療チームによるサポートが重要です。
リハビリテーションは、手術の効果を最大限に引き出し、再発を防ぐために行われます。

また、手術後のフォローアップも重要です。
定期的な診察画像検査を通じて、背骨の状態や治療効果を評価し、必要に応じて追加の治療や調整を行います。

側弯症になりやすい人・予防の方法

遺伝的要因の影響

家族に側弯症の既往がある場合、発症リスクが高くなります。
特に女の子に多く見られるため、早期のスクリーニングが推奨されます。

適切な姿勢の維持

成長期の子どもには、正しい姿勢を保つことが予防につながります。
日常的に意識的な努力が必要で、座るときには背筋を伸ばし、足を床にしっかりとつけること、立つときには重心を均等に保つことなどが推奨されます。

また、定期的な運動バランスの良い食事も重要です。
学校の健康診断で早期に発見することが鍵となります。
良い姿勢を保つためのエクササイズストレッチも効果があります。
長時間座っていることを避け、適度に身体を動かすことも大切です。

運動は、筋力を強化し、柔軟性を保つために役立ちます。
特に、背中や腰の筋肉を鍛えるエクササイズは、側弯症の予防に効果的です。
バランスの良い食事も、骨の健康を維持するために不可欠です。
カルシウムやビタミンDを豊富に含む食品を摂取し、骨密度を高めることが推奨されます。


参考文献

  • 脊柱側弯症研究会, “脊柱側弯症の診断と治療ガイドライン”, 日本整形外科学会, 2020.
  • 日本側彎症学会, “思春期特発性側弯症の治療指針”, 日本整形外科学会, 2019.
  • 日本整形外科学会, “側弯症の最新研究”, 日本整形外科学会, 2022.

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